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2014/5/28更新

今ギリシャでは 

財務相の危険な幻想

先の見えないギリシャ経済
政治的動乱へ

4月6日「ZNetコメンタリー」

ジェローム・ルース(欧州大学院博士課程、ROAR誌創刊者)

4月1日、ギリシャのストゥルナラス財務相が、妄想的な意見記事をガーディアン紙に書いた。「ギリシャは4年間不況に苦しんだが、ついに過重負債経済から抜け出しつつある」という内容の記事だ。「2009年からの道程は長かったが、4年間の財政整備と構造改革を経て、やっとわが国経済は平衡を取り戻し、回復の兆しを見せ始めた。新成長モデルを開発、未来は希望に溢れている」。

毎日通行人に小銭をせびって暮らすしかない老婆が、財務相のこの意見に賛成するだろうか?街角のゴミ箱を漁って食い物を得ている貧乏人、白昼から街中にたむろして、血管に注射針を刺す麻薬中毒者の群、もはや病院へ行けなくなった100万人を越える無保険者、貧困家庭で喘ぐ50万人以上の子どもたち、国中に散在する収容所で人間以下の生活を強いられている多くの移民労働者たち、60%が失業し、未来に希望を見出せない若者たち、博士号を修得しながら僅か500ユーロ(=約7万円)という最低賃金で給仕の仕事を続ける高学歴者、大学卒業後外国で就職を見つけた15万人の学卒者、あるいは国内に留まって、2つまたは3つの仕事を掛け持ちで何とか暮らしをまかなっている学卒者、仕事には就いたが賃金未払いや遅払いが多く、数カ月待ってやっと給料にありつく人々…こういう人々が、財務相のこの意見に賛成するだろうか?

ストゥルナラスの記事を読んで、私の研究テーマである「国際債務危機に関する比較歴史学的研究」のテキストを思い出した。テキストは財務相のネオリベラル的幻想、およびヨーロッパの金融体制一般に直接語りかけているように思えるので、以下に引用する。

* * *

近年、新聞紙上を賑わした国際金融危機が、ここ数カ月で引き潮のように後退し、元の金融部門という鞘へ収まった。金融業界紙編集者や、彼らの情報源である民間銀行や政府官僚の言うことを信じるならば、国際金融ネットワークへの最大の脅威は今や去った。もちろん、銀行収益、負債国の国民生活、直接貸し付けを増やしたり、間接的にIMFへ資金出資したりした債権国の国庫などには、かなりの被害や損害があった…しかし、大きなデフォルトも崩壊もなかった。

危機当初、世情を騒がせた大災難到来という警告を考えると、世界金融センターが安堵の息で自賛的になるのは分からないでもない…しかし、喜ぶのは早過ぎるのではなかろうか。現実には、債務国はさらに債務を増やし、決して減らしてはいない。デフォルトは避けられたが、国民生活を酷く悪化させる策略で辛うじて避けられたのだ。債務国は、借金返済のために、輸出増ともっと借金を増やすことを余儀なくされている。国民は倹約の上に倹約を強制され、国内産業への投資は不振、輸入は徹底的に切り詰められた。

だから、本当の成長への長期的展望はむしろ悪化している。この状況が早く改善されないと、経済的疲弊が政治的動乱へと移行するだろう。

債務問題の長期化は経済・政治的矛盾を表面化させる

このテキストは、ストゥルナラスに対してギリシャの左翼が書いたものではない―約30年前に、ニューヨークのブルジョア・シンクタンクである20世紀基金の理事長で、ジャーナリストのM・J・ローサントが、『フィナンシアル・タイムズ』特派員アナトール・カレツキーの1980年代のラテンアメリカ債務危機に関する本の序文に書いた一節である。必ずしもラジカルな性格のものではない。

この序文は、1985年1月、危機発生3年後に書かれた。その後ラテンアメリカは少なくと5年間、何とか債務の部分的再編成がなされるまで、借金地獄で苦しんだ。ラテンアメリカでは1980年代を「ラ・デカーダ・ペルディーダ」(失われた10年間)と呼んでいる。

30年も前のこのテキストが、現在のヨーロッパに何とよく当てはまることか!第3代欧州中央銀行総裁マリオ・ドラギが、ユーロを救うために「何でもする」と約束した後、世界の金融市場に偽りの落ち着き感が戻ったかもしれない。即座のデフォルトは辛うじて免れたかもしれない。銀行はまたもや「持ち逃げ」よろしく生き延びたかもしれない。

しかし、欧州周辺部諸国にとっては、債務問題が長期化しただけにすぎない。やがて再び債務の経済的・政治的矛盾が浮上して、債務国・債権国両方に天罰が下るであろう。

過去4年間の危機で、ギリシャはGDPの30%を失った。これは、第2次世界大戦後、先進資本主義国が経験した最大の損失である。この圧倒的な下降はいつかは終わる―いつまでも落ち続けることは不可能だからである。

つまり、何もかもが地面に激突する時がやってくる。ギリシャは今やどん底に落ち込み、今の状態は、ウォール街の病的な言葉で表現すると、「死んだ猫の跳ね返り」なのだ。我々に見えるのは、「回復の兆し」などではなく、苦しみと停滞の長期化である。ラテンアメリカと同様、我々も「失われた10年間」の只中にある。この状況が早く改善されなければ、経済的疲弊が政治的動乱へと移行するかもしれない。

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