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2014/2/27更新

【寄稿】東京都知事選を振り返って@

一本化が実現せず勝てないと諦めた?

東京都 仲村 健一(40)

東京都知事選挙を一言でいえば「動かざること山の如し─by・無党派浮動票」ということになる。なにしろ記録的大雪の影響で投票率は46・14%(過去3番目の低さ)。

結果、組織票を固めた舛添要一氏が圧勝したわけだが、同時に興味深いデータが浮き彫りになった。すなわち各候補が持つ組織票と(大雪でも投票に行く熱心な)「親衛隊」票の合計、すなわち「裸の実力」だ。

舛添氏の場合は、70万から100万といわれる創価学会票。次いで連合票だが、こちらは近年あまりあてにならないといわれながらも、今回は反原発候補をつぶしたい電力系企業の熱心な働きかけがあった分、ある程度強固な動員が行われたと報じられている。これに自民党系の票が加わり、ほぼ予定通りの得票(約211万票)となった。

宇都宮健児氏(約98万票)は共産・社民の組織票を持つが、共産党候補は07年、11年の都知事選ともほぼ63万票だから今回も同程度は得たはずだ。そもそも宇都宮氏の「実力」は、16ポイントも投票率が高かった前回都知事選も約97万票とほぼ同じであり、非常にわかりやすい。

保守カラーを前面に出した田母神俊雄氏は約61万票。内訳は後援した石原元都知事の持つ人気票と、「頑張れ日本!全国行動委員会」(チャンネル桜)の動員票。20代と30代に限れば舛添氏に次ぐ高支持であり、中長期的には無視できない。選対スタッフによると、「ほぼ予想通りの得票」という。

「原発争点化ならず」は結果と原因が逆

結果的に見れば、この3人は低投票率の恩恵を受けた側だ。特に宇都宮、田母神両候補は、投票率がいくら上がっても得票数は変わらないと見られるため、大雪さまさまといったところか。

問題は、95万票で惨敗した細川護熙氏だ。首相時代を知らぬ30代以下への知名度不足もあるが、それ以上に反原発候補の一本化交渉に失敗した事が最大の敗因。本記事のようにデータを分析すれば、宇都宮氏に当選する実力がないことは明らかであり、頑として一本化を拒否した日本共産党を批判する声は非常に強い。私の知る複数の市民団体関係者(都内)も、怒りをあらわにしていた。

細川氏に強力な組織票はなく、盟友の小泉純一郎と合わせた知名度・人気による浮動票頼りだった。実際、街頭演説での小泉人気は凄まじく、聴衆の数もダントツ。私が見た池袋駅前は満員電車並みの人密度で、すべての歩道が機能停止していた。

脱原発候補2人の合計得票数は約194万票。もし一本化が実現していれば、いかな大雪といえ「舛添=安倍を打ち倒せるかも」との期待が盛り上がり「山の如き」浮動票も動いただろう。「原発問題は都民の関心が薄く、争点ではなかった」などと報じる新聞もあるが、それは結果と原因が逆の話で、一本化が実現せず勝てる見込みがなくなったから諦めた、と見るほうが都民の実感に近い。

 

【寄稿】東京都知事選を振り返ってA

低投票率の理由を考える

東京都 遙矢当

2月9日夜。東京都民である私は、舛添要一氏の故郷だという福岡で彼の当選の一報を聞きました。今回の都知事選を2つのポイントを掲げて振り返ります。そこに、今回投票に行った人と行かなかった人、それぞれの真意が垣間見られます。

まず、他候補の敗因です。1つには、46・14%(東京都選管発表)という投票率に集約されていると思います。これが東京の現状です。選挙で争点となっていたはずの「脱原発」が、舛添陣営に巧みにかわされ、大多数の都民の評価を得るまでには至らなかったのです。宇都宮健児、細川護熙両氏の登場は、都知事選のテーマが「脱原発」であること決定づけたかに見えましたが、結局ピエロになってしまいました。とはいえ、この結果は、「都民が原発推進を容認した」という意味ではありません。

例えば、両候補の支持者たちは、直近の名護市長選挙(1月19日)で稲嶺恵一氏当選の再現を目指しましたが、稲嶺氏のように時間を掛けた周到な準備を思えば、選挙戦が一朝一夕にはいかないことを思い知るしかないのです。名護市長選と同じような選挙は、今の都民にはできないのです。

低投票率は、前日(2月8日)の雪のせいでしょうか?都民の、都知事選に対する無関心の所産なのでしょうか? 65歳以上の高齢者は投票所から遠のいたわけではありませんでした。むしろ前回同様の投票率で、しかも高齢者世代の中で最も得票を集めたのは舛添氏でした。高齢者が原発推進に舵を切る判断をしたのでしょうか。そうではないはずです。ここに脱原発候補陣営の敗因があります。

「都民は都政に関心がない」というのも、間違いです。都政は、石原時代から問題が山積しています。一部候補者の支援組織の中には、都民の都政に対する関心の低さを挙げる人もいるようですが、それは都政へのニーズをつかみ切れなかった負け惜しみにすら聞こえます。

では、都知事選の争点となった「脱原発」は、3年を経て風化しつつあるのでしょうか。脱原発は確かに重要なテーマです。東京電力の大株主としても東京都は責任があり、正面から取り組むべきです。

震災を振り返らないメディアと政治家。迫りくる震災への恐怖がありながらも、都民が本当の意味で震災後のこの国の生活を考えてきたとは思えません。原発事故を冷静に捉えるなら、東京へのオリンピック招致という荒唐無稽な発想など出なかったはずです。

都民にとって、《現状と未来への危機感の低下》こそ、低投票率の本質ではないでしょうか。

石原都政のツケ=「都民の不在」

もう1つは「都民の不在」に尽きます。猪瀬直樹前知事は、石原慎太郎氏から引き継いだ課題に何一つ触れることなく去りました。今回の都知事選は、猪瀬氏の責任追及と同時に、石原都政以降12年間の総括を貫徹する候補こそが求められたはずです。

その証拠に、石原=猪瀬の正統継承者ともいえる田母神俊雄氏が評価されなかったのは、都民が転換を求めたからでしょう。保守層ですら田母神氏に投票しませんでした。田母神氏は「急進的保守」ですが、石原=猪瀬路線が評価されていたならば、もっと得票したはずです。

都民が求めたのは、報道には挙がらない東京各地の問題―例えば三多摩地域のごみ処理場の問題や独居高齢者の問題など、日常生活につながるテーマでした。都知事選で投票所に向かった都民は、脱原発よりも日常生活に関心があり、脱原発以外の政策で都知事候補を選択したのです。脱原発を掲げた、宇都宮健児、細川護熙の両候補も途中からその状況に気づきましたが、準備不足は否めません。

都民が都政に関心がないのは、石原都政が推進した東京一極集中政策に起因すると思います。90年代後半から始まった臨海副都心開発や羽田空港の再拡張、六本木ヒルズなどを契機に、東京の経済圏域拡大政策が進められました。東京は、疲弊した地方から人と現金をかき集めました。

こうしたマネーゲームに勤しんだ人々は、都政に最初から関心がありません。「東京は住む場所ではなく、お金を稼ぐ場所」との認識で、堀江貴文や村上世彰のような地方出身者が典型です。地方出身の移住者から都政を考える力を奪った石原都政。ふるさととして愛着の持てない乾燥した街=東京を現出させたことが、石原都政の本質だと思います。

結局、舛添氏が当選したのは、組織力(自公の組織力は、人口比で大勢に影響のない数です)でもありません。「脱原発」からの争点ずらしで、それ以外の施策を他の候補よりたくさん掲げたからでしょう。

今回の都知事選は、戦術戦略以前に、本当に勝てる候補者選びを周到にすべきだったと悔やまれます。しばらくは国政も含め、選挙戦が見られない東京。私は悔やみきれない想いを胸に次のチャンスへ備えます。

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