2014/1/26更新
12月15日、川内原発再稼働反対集会が行われ、1800人が市内をデモ行進した。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、6月県議会で再稼働への同意を表明する意向とされている。原子力規制委員会での再稼働審査に向けた提出資料は、九州電力・川内原発が最高の55%で、再稼働のトップランナーとなっている。
こうしたなか「反原発・かごしまネット」や「川内原発増設反対県共闘会議」など90団体で組織する「集まろうストップ再稼働!12・15 in川内」実行委員会は、現地での反対世論強化をめざして、集会・デモを準備した。
安倍政権は、「低廉で安定的な電力を供給する責任がある。安全な原発は再稼働する」と繰り返し述べており、原子力規制委員会の規制基準を満たした原発は、すべて再稼働させる方針だ。規制委は9原発・16基の再稼働について審査しているが、先行して申請された6原発10基が審査に合格する見通しで、早ければ今夏にも再稼働がもくろまれている。(編集部)
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この日、薩摩川内は快晴に恵まれた。午前11時、薩摩川内市にある向田公園で、九州を中心に活動するミュージシャンのリレーライブで集会は幕を開けた。会場の周りには、無農薬野菜、手作り菓子・飲料・小物、書籍販売などのテントショップが並び、子どもを対象にした企画も用意されていた。家族が楽しみながら参加できる仕掛けも満載だ。
午後からの本集会は、地元=川内原発反対連協の鳥原良子さんの報告から始まった。「原発とともに生きてきた地元では、おおっぴらに『反対』は言い辛い状況もある。しかし福島事故を見て、雇用さえ確保されれば原発はいらないと思っている住民も多い」と報告した。
続いて「原発いらない福島の女たち」の黒田節子さんは、福島の現状を報告し、「こんな悲劇をもう繰り返してはいけない」と締めくくった。曰く「福島も、川内と同じでとても自然の美しいところだったが、その緑が危険なものになってしまった。山や森に放射能が降り、溜まってしまったからだ。子どもたちが太陽の下で遊ぶことができなくなった。再稼働は絶対許せない」。この他にも、玄海、南大隅(町長が核ゴミ最終処分場誘致)、阻止ネットなど、各地の現状と反対運動の様子が報告された。
なかでも元宮崎大学長・藤原宏志氏の「火砕流の危険について」のアピールは、あらためて再稼働審査のずさんさを印象づけるに十分なものだった。要旨を紹介する。
―川内原発の南3qの寄田小学校そばには、姶良(あいら)カルデラから噴出した入戸火砕流堆積物の露頭がある。大規模噴火が発生して、高温の火砕流が原発まで達すれば、原子炉の爆発で、手がつけられなくなる。こうした明らかな火砕流の痕跡がありながら、九州電力はこれを認めず「ない」と言い張っている。この九電の体質こそ、最も危険な要素だ。
原子力規制委員会は、半径160q内の活火山において「火砕流や溶岩流が発生する可能性が十分小さいと評価できない」場合は、「立地不適」と判断する案を提示している。寄田地区にある火砕流跡は、「立地不適」とすべき十分な証拠である。―
これについて藤原氏は、放射能の寿命が火山活動周期より永いことを指摘している。原発を稼働すれば、必ず使用済み核燃料が生じる。高レベル放射性廃棄物を受け入れる地域はないので、結局原発周辺に貯めておくことになる。姶良カルデラの噴火は2万9千年前だが、使用済み核燃料は、100万年間の保管が必要。100万年間に火砕流が川内を襲わない保証は、どこにもない。火砕流の可能性を考えると、再稼働は数万世代先まで危険な負の遺産を残すことになる、とも語っている。
川内原発は、@活断層の過小評価、A火砕流の可能性という大きな問題を抱えたまま、再稼働審査が進んでいる。原子力規制委員会が、これらについてどれほど誠実に審査を行うか、注目が集まっている。
3時からは薩摩川内市内をパレードした。原発で働く人も多い地域だけに、安全面と雇用問題に配慮したアピールとなった。原発事故が起これば、現場労働者が真っ先に被曝するのみならず、被曝覚悟で修復作業にあたることになること、また、原発を再稼働しなくても、原発廃炉は長期の作業になるので雇用は確保されること、などを訴えるパレードとなった。
伊藤知事は年頭6日の記者会見で、6月に再稼働の結論を出す、つまり、再稼働を承認すると宣言した。これに対し、「ストップ再稼働!3.11鹿児島集会実行委員会」(参加93団体)は、3月16日に鹿児島市中央公園で1万人規模の大集会、大パレードを開催することに決定した。
同実行委は、「1万人は、簡単ではありません」としたうえで、「原発廃炉を願う皆様が、家族、知人、友人、これから会う人すべてに呼びかけて初めて達成できる」と参加を呼びかけている。
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翌16日、川内現地集会を準備した向原祥隆さん(反原発鹿児島ネット)の案内で、原発温排水被害に関する現地調査に同行した。
向原さんらは、九州電力による「環境アセス」の作成手続きが無効として、やり直しを求めた訴訟を提起したが、実質審議に入ることなく、2012年10月、棄却の判断となった。「門前払い」である。原発温排水は、地球温暖化を促進しているだけでなく、近郊漁民に甚大な被害を与えている。海温上昇に加え、原発配管洗浄のために強い洗浄薬品が混ぜられており、海産物に悪影響を与えるからだ。
この日の調査でも、ほとんどの調査ポイントで、1・7℃程度、海温が高いことが確認された。稼働していないのに排水の温度が高いことについて、九電に説明を求めている。藤原元学長が指摘した寄田現地では、火砕流の路頭が確認できた。原発からわずか2・5qだ。ここを火砕流が襲ったことは、素人の私でも確信できる。「見たくないものは見ないようにする」―こんな態度で安全を確保できるはずはない。規制委員会は、現地調査くらいすべきだろう。(編集部山田)
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