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2014/1/23更新

1500号を迎えて コラムニスト座談会(上)

50年後見据えた変革の構想

秘密保護法強行採決に続いて、靖国参拝をも強行した安倍首相。年頭記者会見でも、改憲への強い意欲を示した。首相の強硬姿勢は、国会で多数派を握っている間に「やれることは全てやる」という刹那的態度の裏返しでしかない。実際、金融緩和と「覚醒剤」的財政出動による景気浮揚は、春までと言われており、「アベノミクス」の化けの皮が剥がれるのも近い。

首相の強硬姿勢に、日本中が身震いするような危機感を覚え、強い右派風に身構えながらの新年となった。闘いの場は、議会から街頭へと移り、根本的変革を求める主張が強まっている。「安倍政権打倒」は、実感をともなった政治スローガンとなりつつある。

時代を画する2014年新年号は、人民新聞コラムニストの座談会を企画した。創刊45年を経た人民新聞が、この激動を受け止め、人々の歴史をどのように刻み、重なりうるのか?を話し合ってもらった。

座談会は、「50年先を見越した新聞作りを考える時期だ」というMさんの大胆な提起から始まった。日々現れくる新しい主張と、若い活動家と、いかに結びつくか?を長い時間軸で構想を語る時間となった。また、紙媒体としての人民新聞は、ネットによる情報発信をどう捉え、自らの手段とするのか?も話し合われた。(文責・編集部)

若い次世代の運動とどうつながるのか?

─人民新聞が次の若い世代の運動と、どうつながるか? どうつなげていくか?

◇M

これからの「人民新聞」を考える時に、50年ぐらいの射程で、どんな人と、どんな新聞を作っていくのかを考えなければいけない時期だと思います。人民新聞を創設した人々は、学生中心に盛り上がっていた新左翼運動とどうつながっていくのか、日本共産党に対抗する社会運動、革命闘争を担っていく次の主体をどう作り上げるのか、という点を考えて、紙名も「新左翼」としてスタートした、と聞いています。

ここに集まった皆さんの顔ぶれを見ると、「その意図は50年かかって見事に成就している」と感じました。次の時代を担っていく若者たちとの協働の場として新聞を作ったわけですが、そのとおりになっています。そんな発刊を担った先輩たちは、今ではほとんど鬼門に入られて、全共闘世代も引退を考える時期になっています。そういう時代だからこそ、これまでの「人民新聞」がどういう役割を果たしてきたのか、を踏まえながら、「これからどんな新聞を目指すべきか」を、話し合いたいと思っています。

食べものとエネルギー問題を結びつける

◇I

若い人たちは、インターネットを使ってどんどんネットワークを作り、自分たちで動いています。アラブの春もそうです。原発再稼働反対では20万人まで集まった官邸前デモは、夏を越えると減少し、12月の衆院選挙では脱原発派がぼろ負けする、という経過を辿っています。つまり、街頭闘争だけで勝利は得られないということだと思います。

「脱原発運動」は、エネルギーをどこから引っ張ってくるんだ、という政治経済の問題と、自分の食べものはどこで確保するか、という暮らしの問題が一体化して初めて、中央権力を打倒できるような闘争となります。100万を超える人が立ち上がって、権力をひっくりかえしていくという、アラブ各国で次々と民衆が立ち上がってひっくりかえしていったプロセスが、日本でも起こる可能性は強くなっています。

街頭実力闘争を闘って権力をひっくりかえすという方針は捨てずに、「食べ物」と「エネルギー」への問題意識が根付いた中で、「こんな社会の仕組みは許せない」という若者の怒りは強く大きくなっています。

街頭闘争も、基礎となる地域運動がなければ勝てません。首相官邸を20万人、50万人が取り囲んでも、運動のベースとなる地域を変えることが問題です。都市の消費者だけでなく、地域の中で生み出された自然エネルギーグループと、有機農業運動グループがきちんと結びついて、隊列を送り込むぐらいの基盤が必要です。

◇M

「権力奪取」の中身が、曖昧になっている印象があります。権力奪取とは、食べものや日々の生活の人間関係の中にある権力的支配関係を、「今・ここ」でひっくり返す作業の積み重ねです。東京・永田町での政権交代や、エジプトでのムバラク政権退陣のような「政変」で社会が根本的に変わるわけではありませんし、それは本当の意味での権力奪取ではありません。生活の中に政治はあります。

われわれが目指す社会の中身も、曖昧になっている気がします。選挙に勝ったら世の中変わる、とみんなが思っていたら、「反原発」の意思は選挙結果にストレートに反映されるはずですが、表現されませんでした。それは、「投票行動で世の中は変わらない」ということが見えてしまっているからではないでしょうか。

◇I

その通りだと思う。かつて「新左翼」は、創刊号で「平和から反戦へ、反戦から反帝へ」というスローガンを掲げていました。政治化することに価値がおかれた時代です。

当時は「権力を打倒するために、もう一度地域に入る」という我々の世代の戦略は妥当性を持ちえたと思います。しかし今は、その問題意識だけでは難しくなっています。日々の暮らしの中で「反権力」といった場合、たとえば「脱原発」ひとつ取ってみても、かつて実力闘争が闘われた伊方ですら「再稼働反対」を言えない雰囲気になっています。福島も「放射能による健康被害」なんて言えなくなっている惨憺たる状況です。それが今の権力状況です。

ここでせめぎ合うためには、どうするのか。それは例えば、西日本から送った有機野菜を並べて、八百屋を作って、「野菜カフェ」という名前をつけて、机といすを置いて、子ども連れで来たお母さんが、知らない者同士だけど隣り合わせに座ってお茶飲んで、情報交換をするというところから始まると思います。権力との闘いを「どこで組織するのか?」という視点で議論されるべきだと思います。

権力の網が、私たちを縛り付けて、職場でも地域でも、言いたいことが言えないような社会がすでに実現しています。「秘密保護法」の世界がもう現実になってしまっているのです。

「言いたいことを言えるような空間を少しでも押し広げよう」─こんなスローガンが必要な時代に生きていることを感じています。

紙媒体とインターネット情報を結びつける

◇や

首相官邸前デモもそうですが、ネットで集まった人たちのもろさを感じます。運動が高揚している時はどんどん増えていくけれど、ちょっと挫折すると、潮が引くように人がいなくなる。孤立化した個人の弱さがそのまま反映されているように思えます。私たちの世代は負け続けてきた経験しかないので、そんなに簡単に勝利するとは初めから思っていません。だから、実生活の中で仲間を作り信頼関係を作り上げることを重視してきたと思います。

実生活での信頼関係が基礎にあって、情報伝達の手段としてインターネットが意味を持つものだと思います。

◇H

若い世代で、紙の新聞を取らない人は、本当に増えています。ネット情報は、アクセス数だけで上位下位が決まるので、大事な情報を見逃してしまいます。紙の新聞は、全体を見渡せるので、必要な情報を得やすいし、事の軽重も判断しやすい、というメリットがあります。

影響力拡大にはネット発信強化を

◇や

つい最近、「アマゾン」(米の大手インターネット通販会社)の創始者が、「ワシントンポスト」を買収しました。そのジェフ・ベゾス氏は、「紙の媒体の最大の問題は、読者が読みたくもないものをたくさん書いた上で、金を払わされることだ」と語っています。彼らは、自分の必要なものだけ読めたらいいわけです。

でも新聞の面白さは、いろんな記事が並んでいて、ふと目にとまって読んでみたら「あ、おもしろい」というところでしょ。インターネットの検索機能では、そんなことはできないし、せいぜい「ヒット数が多い記事」を読むぐらいしかできません。

◇A

しっかりした中身のフリーペーパーも発行されています。購読料がないので広告収入だけですが、記者を4人抱えて、地域の話題を掘り起こし、議論を巻き起こしてもいます。取材活動自体が、地域活性化に役立っているのです。こうした方向もあり得ます。

◇H

影響力拡大を重視するなら、ネットに踏み出すことは必須条件だと思います。いい情報は、みんながコピーして勝手にばらまいてくれます。紙媒体で出している情報も含めてネット上に発信すれば、人民新聞の影響力は広がるでしょう。ただし、ネット発信はお金にはならないので、紙媒体の購読料は、協力支援金という意味合いが強くなるかもしれません。それでもお金を出してくれる人をどう広げるかですね。

◇編集部

紙による発信は続けますが、ネット発信は強化する必要を感じています。ホームページの更新に加えて紙面には載らなかった情報をネットで発信するだけでなく、ツイッターやSNSによる双方向通信も、広げたいと思います。

「関係づくり」を軸にした新聞活動を

─大所高所から世の中を語るのではなくて、現場に足を運んで記事にしていく「現場主義」が人民新聞の基本です。編集体制については?

◇M

編集部を中心とした放射線状の関係ではなくて、現場で運動し、生活し、関係を作っている人との関係を、重層的にどう作っていくか、だと思います。現場の人と信頼関係を作り、生の声が人民新聞に反映されることで、運動現場自体も広がりがもてるようになれば、協力を得られると思います。

国際面では、中国の原稿を書いてくれている人は、現地で日本語教師をしていたり、イスラエルに暮らしながら、パレスチナ問題を考えている人とか、海外は割とそういう関係ができつつあるように思います。ただし海外の記事、特にパレスチナの記事は人民新聞の特色でもあるけれど、関心のある人は注目するけれども、興味のない人は読んでくれない、という現実もあります。

いずれにせよ、人民新聞は、「情報を売る」のではなく、「関係づくり」に興味をもち共感してくれる人々をどれだけ広げられるか?です。そうした人々との関係を厚くしたら、結果として新聞の中身も充実していくと思います。

もう一つは、大震災と原発事故が、日本社会全体の大きな動きを生み出していると思います。誰もがものを考えるようになったし、自分なりに社会とどう向き合うのか、を迫られています。日常生活は繰り返されていくけれども、それぞれ何かを考えながら積み重ねています。

日本全体の意識は大きく変わり、今も続いています。そういう時代だからこそ、意識的に、きちんとこちらから働きかければ、展望は見えてくると思います。

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