人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 1部150円 購読料半年間3,000円 ┃郵便振替口座 00950-4-88555/ゆうちょ銀行〇九九店 当座 0088555┃購読申込・問合せ取り扱い書店┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto: people★jimmin.com (★をアットマークに)twitter
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

2013/12/28更新

大阪・震災がれき焼却とは何だったのか
被災地のがれき焼却が今後の大問題に

下地 真樹さん(阪南大学准教授)インタビュー

大阪市舞洲処分場での震災がれき広域処理の焼却が、9月7日に終了した。がれき焼却は、「広域処理に回すがれきがない」という、予測通りの幕引きとなった。

「がれき不足」は、大処理を引き受けた自治体全てに当てはまる。住民説明会で、反対派4人を逮捕するという強硬策をとった大阪市・橋下市長だったが、強行した「がれき処理」とは、いった何だったのか。

下地真樹さん(阪南大学准教授)にお話をうかがった。(編集部一ノ瀬)

──「焼却処理」の問題点について聞かせてください。

下地…「危険性のあるものを、住民の承諾もないまま焼却を強行した」ということです。

がれき焼却前から、@がれきの量は初めからあやふやで、広域処理に回さなくとも、地元で処理可能であり、数億円単位の復興予算のムダ遣いで、被災地のためにはならない、A「放射能汚染物質は拡散させない」「燃やさない」という原則からいって、必要なかった─と批判してきました。

広域処理が終わってみると、実際に、この指摘通りでした。また、より重大なことは、この広域処理で適用された「安全基準」が、今後も基準としてまかり通ってしまい、被災地でもがれき処理が始められていることです。

たとえば、岩手県の宮古・下閉伊広域圏では、高汚染レベルの牧草・ほだ木(しいたけ栽培用の原木)などの焼却が行われました。地元住民への説明会でも、牧草から最高1951Bq/sのセシウムが確認された、と報告されています。

福島各地では、こうしたがれき焼却が始まっていますが、その一方で、環境省が鮫川村に建設した仮設焼却施設で、今年8月に爆発事故が起きました。事故の際も、地元住民への連絡がなく、相変わらず住民を無視したやり方が浮き彫りになっています。

また、福島では、除染で伐採した木の処分も兼ねた「木質バイオマス・ガス化発電」施設建設を検討しています。建設候補地だった塙町では、住民の反対を受け、今年10月に中止を発表しました。

また、昨年1月には、二本松市内の新築賃貸マンションから、高い放射能が検出されました。放射能で汚染された採石を、コンクリートに使ったことが原因でした。

気をつけるべきなのは、がれきの広域処理が、被災地でのがれき処理を進めるロジックに使われていることです。被災地の方に聞いたのですが、「他所でがれきを受け入れてもらったんだから、地元で焼却しないのは自分勝手」「焼却処理することで、復興につながる」と、がれき焼却への不安や反対の声をあげづらくなっているそうです。

大阪でがれき処理が終わったからといって、決してがれき問題は終わっていませんし、被災地では、より大きな問題になっていくことを忘れてはなりません。

──がれき焼却による健康被害については?

下地…がれき焼却以降の「健康被害」と疑われる情報について、ネットで集めている方もおられます。健康被害の訴えが多数寄せられているようですが、厳密な因果関係は、今のところわからない、と言わざるを得ません。もともとの大気汚染もありますし、中国から飛来したとされるPM2・5などの問題もあるので、もっと情報が必要ですし、長期にわたる分析が必要です。

放射能と健康の因果関係を特定するのは、とても難しいことです。ましてや、被災地の人々が、自分の健康被害の原因を放射能だと証明するのは、ほぼ不可能です。だからこそ国や東電は徹底的に情報を隠し、責任追及をかわそうとするわけです。

──下地さんも、「関西大弾圧」で不当逮捕され、北九州や富山でも弾圧がありましたが、そうしてまで強行する理由は何でしょうか?

下地…原発建設と原発事故に関する過程と同じです。がれき焼却で明らかになったことは、国・行政の徹底した「情報隠し」でした。たとえば、環境省とのやり取りの中で、たびたび情報公開を求めましたが、がれき処理に関する検討会の議事録が隠されていて、「記録を取っていなかった」と言い訳をする始末です。

決定権を持つ権力者が、どんなに杜撰な内容でも、「やる」と決めたら押し切る。説明責任を果たしていませんし、ごまかそうとばかりしていました。民主主義の手続きからすれば、国や地方自治体のやったことは0点です。それでも、ごり押しできる行政の権力とは、本当に怖ろしいものです。

9割が現状を知らないならば、権力を持つ者が物事を推し進めることは可能です。今の日本では、事実に気付いた1割のうち、実際に声を上げる人はさらに少数です。権力は、その数%は機動隊を使って黙らせればよい、と私たちを見下しているのでしょう。

「特定秘密保護法」の本質は、この点にあります。

「反被曝」を切り口につながっていこう

──被災地や福島の人々とどうつながっていけばよいのでしょうか?

下地…福島では、放射能被害について語ることがタブー視されています。それは、@避難先や仕事・経済上の問題で、避難が困難であること、A避難者へのサポートの手薄さや避難先の無理解などの「社会の非力さ」、にあります。

どこから突破口をつくっていけばいいのか?私は「反被曝」「内部被曝」が切り口になると思います。食品、放射能汚染物、避難問題、健康調査…など、「できるだけ被曝を避ける」という意味から可能なことをやるだけでも、福島や被災者とのつながりを追求できると思います。

もちろん、「反被曝」を徹底するなら、集団移住など避難を最優先させるべきです。そもそも、数値の違いはあれ、日本全土が放射能汚染されていますので、日本にいること自体が危険です。

しかし、家族、仕事、経済上の問題などで、「福島に残る」ことを選択された方も多いわけで、その選択も、当然尊重されるべきです。

──がれき焼却反対運動は、「運動圏」とは無縁だった人たちも参加する、幅広いものになりました。

下地…それまでデモや集会に参加したことのない人たち、特に子育て真っ最中の保護者の方々が、「がれき焼却反対」運動に参加しました。本や講演会、ネットなどで情報を集め、行政への申し入れやマスコミへの働き掛け、署名活動・イベントの開催など、一人ひとりが主体的になって、エネルギッシュに活動されました。その原動力は、「がれき焼却は、国や自治体の説明通り、本当に影響がないの?」という素朴な疑問や、「子どもたちを守りたい」という切実な願いからでした。

原発再稼働でも、新しい人が運動に参加するようになりました。皆さんよく勉強されていて、玄人はだしの方もおられます。それはすばらしいことですが、それぞれのシングルイシューにこだわるあまり、他の人が抱えている問題を受け入れられなくなっている部分も出ています。

たとえば、「今は『反被曝』に集中するべきで、他の問題に手を取られるべきではない」などの批判の声を聞いたことがあります。

しかし、すべての問題は、根っこでつながっています。他の問題と積極的につながっていった方が、解決に近づけるのはないかと思います。

その意味で、日本の市民運動では、「周りの人に学ぼう」とする姿勢が大事ではないでしょうか。(文責・編集部)

  HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com(★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.