2013/12/11更新
京都・田中
秘密保護法案が、衆院で自民、公明、みんなの党で強行採決された。衆院本会議でたった2時間の審議での採決には愕然とした。マスコミの報道の鈍さに不安を感じていたが、強行採決を境に漸く腰を上げたという感じだ。
世間の関心がどの程度なのかもわからず、どうしたものかと案じていた頃、12月1日、京大で『特定秘密保護法に反対する市民集会』が行なわれ参加した。パネリストとして、1972年に日米の間の『沖縄返還密約』の存在をスクープして逮捕された西山太吉さんをはじめ、村井敏邦さん(刑事法)、小笠原伸児さん(京都弁護士会)が講演し、秘密法の恐ろしさを知ることができた。
同法案が可決されると、こうした集会や、専門家を通じて、真相・真実を知ることが違法とされ、ある日突然、逮捕され、被告人にされるだけでなく、逮捕の理由も分らないまま秘密裁判が行なわれることになるのだ。弁護士も裁判官も逮捕の理由が審議できないどころか、両者でさえ違法な秘密の教唆の対象になるのだから、自由に発言も研究もできない時代がやってくる。どう考えても、戦前の特高(特別高等警察)のような公安委員会や警察の監視が強化され、ぎすぎすした社会になってしまう、と危惧している。
集会で知ったことだが、1941年に北海道大学の学生・宮澤弘幸さんが軍機密保護法の容疑で逮捕され、懲役15年の判決を受け、網走刑務所などで服役した。敗戦の翌年、獄中生活で患った結核によって27歳で亡くなったそうだ。逮捕理由は、北大の外国人教師宿舎に暮らす米国人教師に、根室飛行場の場所を教えたことだという。根室飛行場は誰もが知っていた。こんな冤罪事件は昔の話ではなく、1995年には沖縄で、那覇市が自衛隊の施設(ごく普通の建物)の公開をしようとしたことで、国に『国防上の秘密』として訴えられた事件があったという(朝日・11月6日)。裁判の結果は、国側の敗訴だったそうだが、国はなぜ秘密なのか、説明しなかったという。
今後、基地や公共施設などの記念写真を撮っただけで逮捕される、そんな時代にならないように、法案に反対する諸野党の国会議員に身を挺して法案阻止に頑張ってもらいたい。与党をはじめ与党に擦り寄る野党議員に国会から出て行ってもらい、一市民になって、民主主義を学習し直してもらうしかない。
石破自民党幹事長は、デモも『テロ』行為と一緒だと言う。文句を言わず、ひたすら権力に従っておれば何も問題は起こりませんよ、国民をちゃんと保護しますよ、と言っているに等しい。政治家、霞ヶ関の官僚は一体誰のために存在するのか、改めて考えていただくために、議員を辞めていただくしかないと思う。わたしたちの一票がこんな政治家を選んだのだから、一人一人が、ファックスなり、電話などで抗議しようではないか。
「特定秘密保護法案」が、現実になりつつある今、「自分の生活が、ある日突然止まってしまうかも知れない」という恐怖を抱いています。
「知る権利」はとても大事ですが、すべての人がすべての情報をコントロールできるわけではありません。少なくとも、既存の「個人情報保護法」が機能しておらず、個人そのものが危機にさらされている今、基本的人権を守るべき国家が、自らの存在を覆い隠すような法律だと思っています。
個人情報保護法施行から10年。いよいよ個人としての「意思」を示す行動が禁止される、そんな恐怖です。
特定秘密保護法で頻出する単語の一つに「テロ」があります。暴力によって訴える意思表示、などと解説されますが、この場合の暴力には、「物理的」な暴力に限らず、「言語による暴力」なども挙げられています。権力側が国民の意思表示で「苦痛」を感じた時点で、「テロ」として規定されてしまう危険性が出てきます。
このままだと、私が人民新聞に書くこと自体が「テロ」行為とされてしまうことになります。
重要機密を知り、漏えいすることへの処罰は、国家が個々人の情報の「価値判断」を許さない危うさを感じます。「機密」か否かの判断は、誰もできません。結局、私たちの生活の場で、取り締まりだけが横行する。秘密警察に支えられる国家の姿が近づいてきています。
こうした恐怖に抗い続けていくために、私は、以下のような方針を持って人民新聞での執筆をはじめとするすべての活動を継続します。
・社会で共有すべき情報・事象は、その有益性において引き続き取り上げていく。
・特定の個人に不利益を被る情報の提供は、厳に慎む。ただし、社会的な問題や事件の解決に必要と思われる情報については、除く。
・排他的な情報提供や意思表示を行わない。
・情報公開が必要と思われる事項については、引き続き積極的に求めること、です。
私は人間としての「モラル」をこそ堅持したい立場です。モラルの破壊を試みんとする権力には断固対峙し、妥当性のある真の民主主義の構築に寄与したいものです。自分たちの身の回りで「特定秘密保護法」の誤謬と対峙すべく頑張りましょう。
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