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2013/12/4更新

暴挙 安部政権

国家秘密法 強行採決 国際基準(ツワネ原則)大きく逸脱
国連特別報告者も懸念を表明 

特定秘密保護法案が衆院を通過した、国会「外」では、連日反対集会やデモが取り組まれ、世論調査でも過半数が反対を表明、8割以上が慎重審議を求めていた。議会と民意の乖離は、ここに極まった感がある。民意を反映しない国会の存在意義そのものが問われる事態だ。

与党が強行採決を決めた11月22日、国運人権理事会特別報告者2名が、日本の秘密法について、「国際法における人権基準に照らし憂慮」を表明した。日本の秘密法は、国際基準からしても、トンデモ法案なのである。

秘密保全法制の国際基準として「ツワネ原則」が日本に紹介され、注目されている、ブライバシーアクション代表の白石孝さんが大阪での講演会で紹介した内容を、編集部でまとめた、

安倍首相は、「ツワネ原則?単なる民間団体が出したものでしょ」と言い放ったそうだが、自ら国際認識の音痴ぷりを告白したも同然だ。

第1次安倍政権は、実質5〜7ヵ月しかなかった国会開催期間の問に、17回もの強行採決を行なった。今後、このようなシーンを何度見ることになるのか?(文責・編集部)

「国際法における人権基準に照らし憂慮」

プライバシーアクション 竹白 孝さん

今年6月、「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(通称「ツワネ原則」)が公表されました。南アフリカ共和国の首都・ツワネで公表されたので「ツワネ原則」と呼ばれています。この国際原則は、国際連合、人民の権利に関するアフリカ委員会、米州機構、ヨーロッパ安全保障協力機構の特別報告者を含む世界70カ国以上、500人以上の専門家により、14回の会議を経て作成されたものです。国立国会図書館も、「自由権規約19条とヨーロッパ人権裁判所10条の下で国際的に承認された考え方である。また国際法律家連盟、安全保障に関する国際団体などが名前を連ねており、22の団体や学術機関により起草されたという経緯が強い権威を与えている」としています。つまり、国際基準として充分権威があるものだ、と国会図書館も認めています。

中身を紹介します。まず、ツワネ原則は、国家には安全保障上の秘密が存在するという現実を受け入れたうえで、議論を始めています。@「国家秘密はある」けれども、A秘密は最小限度に抑える、B根本原則は国民・市民の知る権利だ、という現実対応の原則であることです。

そのうえで、「(国家機密に)関連する法律や政策の起草、改正、施行に関わる人々に指針を提供するために作られた」としています。まさに、現日本政府へのガイドラインとして作られたということもできます。

原則全体は、約50あるのですが、ポイントだけを指摘します。

原則1で「市民は政府情報にアクセスする権利を有する」─すなわち「知る権利」を明示しています。その対象は政府だけでなく、「公的な機能を果たす、あるいは公的な資金を受け取る私的機関も含まれる」としています。助成金などを受けている団体も対象となるのです。

原則4では、「知る権利を制限する場合、その必要性を証明するのは政府の責務である」としています。秘密にするなら、その項目と理由の説明責任は政府にある、とはっきり言い切っています。安倍首相の答弁とは真逆です。

原則9です。「政府は防衛計画、兵器開発、情報機関によって使われる情報源など協議の分野で合法的に情報公開を制限できる」。つまり限定的には秘密にできる。さらに「外国政府から提供された機密情報も制限することができる」としています。

その上で、原則10Aが重要です。「しかし政府は、人権、人道に関する国際法の違反についての情報は制限してはいけない」―つまり、前政権の違反行為についても責任を取らなければならない、ということです。

内部告発者への報復を明確に明確に禁止する「ツワネ原則」

原則10Eでは、「市民は、監視システムについて知る権利がある」としています。同じ内容は、原則5と10Cでも確認されています。「(情報公開は)安全保障部門や諜報機関を含め、全ての政府機関は情報公開の対象から逃れることはない。また、「それら機関を運営するための法律や規則、予算についても知る権利を有する」。

原則40・41・42は、政府内部告発者への報復を禁じています。 まさにスノーデン氏のケースになります。さらに原則43・46では、刑事罰を与えることについて、高いハードルを課しています。「実在して確認可能な重大損害のリスク」を証明できる場合にのみ、刑事罰が検討されるとしています。

原則47は、共謀罪による訴追を禁止しています。ジャーナリストなどが機密情報を受け取り、公開することに対し、「共謀その他の犯罪で訴追されるべきでない」としています。

安倍首相は、内部告発者やジャーナリストの取材活動を最高懲役10年の厳罰で取り締まろうとしています。さらにそれを実行しなくても、漏らすように教唆したり扇動・共謀したものも処罰しようとしています。ツワネ原則に真っ向から違反する内容です。

原則6と31―33は、「独立した監視機関」の設置を求めており、その機関は「必要なすべての情報にアクセス可能であるべきである」との規定です。日本の法案では、国会の監視機関の設置も明示されず、有識者が秘密の指定手続きに関わることもできません。

原則16 「情報が機密化される期間は、必要な期間に限るべきであり、無期限であってはいけない。情報機密化が許される最長期間は法律で定めるべきである」―日本の法案では永久非公開も可能です。

原則17「機密解除を要請する明確な手続きがなければならない。その際、公益に与する情報を優先的に解除する手続きも定めるべきである」

ツワネ原則は、今回出された秘密保護法案の争点になっている点について、ほぼ全て解答を与えています。それだけではなく、「自衛隊法」のほか3つある国家秘密に関わる現行法の見直しすら要請しているのです。

「ツワネ原則」について安倍首相は、「特定の民間団体が示した一つの参考意見」として無視を決め込む姿勢ですが、国際標準としての「ツワネ原則」の存在と内容を広めていく必要があります。

スノーデン事件の意味

スノーデン氏の情報暴露で、驚かされたのは2点です。米国政府の情報収集活動の凄さ=ここまでやってるのかという驚きと、A秘密法が成立すれば、社会的に重要な特ダネが封殺されてしまうということです。報道関係者は、政府への潜入取材を特ダネとして書くことができなくなり、「大本営発表の記事しか書けなくなる」という懸念をもっています。

5カ国比較を見ていただくと、日本は、漏洩については一律最高10年です。アメリカでは一般的漏洩が10年で、外国勢力への漏洩が死刑です。スノーデン事件は、これにあたる事件です。同氏の情報を基に、アメリカのワシントンポストとイギリスのガーデアン紙が報道したわけですが、スクープの情報源は国家犯罪、しかも死刑に当たる「犯罪者」となります。

日本で特定秘密保護法案が法律になった場合には、スクープの出所が違法状態なので、報道されないか、報道した側も罰せられることになります。

「共謀罪」とセットで超監視社会

秘密保護法案は、危険な法律ですが、あくまで1つのステップです。次は、1999年から実施されている盗聴法の対象範囲の拡大でしょう。

さらに次のステップが「共謀罪」です。来年には提出される可能性があります。禁固4年以上の刑罰全てが、「共謀罪」の適用対象になりますので、弁護士によると、600くらいの法律が対象となるそうです。つまり、共謀罪適用は、麻薬犯罪や殺人だけではない、ということです。

例えば、飲み屋に行って「社長が気にくわない、明日行って殴ってやろう」と話すと、これは4年以上の刑の対象なので、相づちを打っただけで予備罪となります。労働組合が団体交渉で、社長を部屋に閉じ込めると監禁罪。公務員の友達と飲んで、「この前のイージス艦の件、何かおかしいと思わない?その情報って教えてよ」、と言うと、教唆扇動でこれもやられます。秘密保護法で取り締まられるのは、公務員だけではなくなるのです。

こうして共謀罪が成立すれば、公安警察だけでなく、民間でも監視・通報する人が出てくることもあり得ます。つまり、そこかしこに密告者がいて、飲み屋で軽々しく話もできない社会になります。秘密保護法や共謀罪が行き着く社会とは、とんでもない監視社会です。これが「自由社会を守るため」としてまかり通ろうとしています。まさに取り返しのつかない社会への扉を開こうとしているのだと思います。

すでに「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」が可決、成立しました。憲法9条の改憲は、実質的に進んでいるのです。

安倍首相の改憲テンポと強い意志は、これまでと全く違います。国会論戦で勝ち目はなく、世論で盛り上げるしかありません。秘密保護法についても、政府は一定世論を意識せざるをえない状況になってきてることは確かです。2〜3人いれば駅前で宣伝もできますので、反対世論を全力で広げていき、参院での審議で押し返して、継続審議に持ち込みましょう。

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