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2013/11/12更新

電力会社救済のためだけの原発再稼働
12月全国行動へ

「(審査は)折り返し点にきている」―10月26日、原子力規制委員会の更田豊志委員は、再稼働審査についてこう語った。汚染水問題がお手上げ状態にもかかわらず、原子力規制委員会は、40回にのぼる審査会合、各原発への現地調査を行い、適合審査を急ピッチで進めている。

再稼動申請された7原発14基のなかでも、第1グループと目される伊方・川内・泊・大飯各現地では、様々な反対行動が取り組まれてきたが、年内が正念場となっている。

現地の阻止行動のや地元自治体の動向などを取材した。川内原発については、反原発・かごしまネット代表の向原祥隆さんに電話インタビュー。伊方原発は、門田鈴枝さん(原発さよなら四国ネットワーク)、柏崎刈谷原発は、小木曽茂子さん(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)に話を聞き、編集部でまとめた。

12月1日には松山市(愛媛県)で1万人集会、7・8日はもんじゅ全国集会(福井県敦賀市)〜大飯・高浜行動、15日には川内(鹿児島県)で阻止集会が計画されており、12月は原発現地を結んだ全国行動となる。(編集部)

急ピッチで進む再稼動適合審査

「再稼動阻止」へ正念場

反原発・かごしまネット 向原 祥隆

九電の活断層解釈はひどい

今年2月1日、政府・地震調査委員会が原発周辺の断層について発表し、九電の地震評価を酷評しました。九電が主張する断層は、染色体みたいにチョロチョロっとした線ですが、調査委員会はそれらを一本に結びました。長さは2倍以上になりますし、想定される地震の規模も最大で11倍に塗り替えました(図@)。

ところが九電はこれを無視し、従来の断層評価のまま再稼働申請(7月8日)をしました。さすがの原子力規制委員会も2回目の会合(7月23日)で、「それはあんまりだ」として、「もう一度断層評価をし直しなさい」と差し戻しました。

地震調査委員会の議事録を見ると、「(九電に提出させた)生のデータを見ると、活断層が存在するのは明らか」としたうえで、「(九電の)解釈はとにかくひどいものである」と酷評しています。

同委員会は、活断層が川内原発の方向に延びる可能性も指摘しています。議事録に「F─A断層の東端がどこかなどの読み直しが必要になる」という発言があります。F─A断層を東に延ばせば、川内原発に近づきます。「F─C断層がさらに北に延びる可能性について」の発言もあります。F─C断層が北に延びれば、これも川内原発に近づきます。

地震調査委員会は、「これらの読み直しは必要だが、それは膨大な作業になる。だから規制委員会がやりなさい」と提言しています。川内原発周辺の活断層については、重大問題が未解明のままです。私たちは今、県議会に対し「拙速に結論を出さないように」と要請しています。

川内川河口推定断層

さらに、「川内川河口推定断層」という大断層の存在もクローズアップされています。原発からわずか1`の所にある推定断層です。

九電の調査報告書を見ると、川内川両岸の海岸段丘に12・5万年前の汀線(海岸線)があります。さらに、川内川の河口の36m地下に、やはり12・5万年前の汀線があることがわかっています。基準面の20m上の両岸に汀線があり、36m下にもある。つまり、この12・5万年の間に、50〜60mの段差ができたということです。

これは大規模陥没構造の断層であるということで、注目されています。マイナス36・1mの汀線については、九大の下山正一教授が1999年に論文(図A)を発表していますが、九電は、断層評価には一切書いていないので、これも書き加えるべきだ、と私たちは主張しています。

桜島からの火砕流の危険

川内原発の敷地を2度火砕流が襲ったこともわかっています。原発敷地の南2`の寄田地区に高さ10mほどの露頭、東5`の高江地区には4mほどの堆積が確認されています。地震学者は、火砕流が敷地まで到達したことは自明で、その規模は、雲仙普賢岳の火砕流の40万倍と試算しています。九電は否定していますが、原子力規制委員会は、火砕流を前提に安全評価をするよう求めています。

原子力規制委員会は「原子力発電所の火山影響評価ガイド」を示しました(2013年3月28日)。原発に到達する火砕流が発生した場合は、対策をとることが不可能なので、火砕流が発生する可能性が「十分小さい」と評価できない場合は、「立地不適」と判断され、既存原発なら廃炉を迫られる、としています。

川内原発を火砕流が襲えば、壊滅することは確実です。川内原発は、この火山基準一点で廃炉にされねばなりません。

原発を動かせば、必ず事故は起こります。九電の活断層評価はめちゃくちゃですが、活断層があろうがなかろうが、大地震は起こる、というのが地震調査委員会の見解です。日本は阪神淡路大震災(1995年)以降、地震の激動期に入ったと言われています。中越、中越沖、岩手・宮城内陸、駿河湾、そして2011年の三陸沖地震と、立て続けです。おまけに、日本の原発は30年、40年経って老朽化しています。動かせば必ず事故になるのです。

放射性物質は3時間で宮崎へ

7月28日、川内原発で過酷事故が起こった際、放射性物質がどこまで拡散するか調べるため、市民グループら約300人が、同原発近くの久見崎海岸から約700個の風船を飛ばしました(主催・原発なくそう!九州川内訴訟)。

風船は、3時間で宮崎県都城市に、3時間半で宮崎市に到達しました。あっと言う間です。

ところが、鹿児島は残念ながら、再稼働したいという人が結構います。県知事・県議会、薩摩川内市長・市議会とも、再稼働に前のめりです。地元では、どの家庭でも原発の世話になっている人が親類の中に1人や2人はいるからです。

立地している薩摩川内市でさえ、表だって「原発反対」は言いにくいのですが、前回の県議会議員選挙では、当選議員3人のうち1人は反対派でした。票もそれぞれ1万2千票くらいだったので、3分の1くらいの人は、気持ちの上では反対と思っているのでしょう。

こうしたなか、30`圏内の姶良市議会が「拙速な再稼働反対」の陳情を採択しました。

内容は、@原発周辺の活断層の存在をすべて明らかにすること、A火山災害に対する安全性の根拠を明らかにすること、B安全確認を最優先するため、6カ月という枠にこだわらず審査するよう原子力規制委員会に要請すること、C地震・火山問題について、鹿児島県独自の専門委員会を設置すること、D地震・火山問題について、専門家による検討委員会を公開の場で実施すること、E実効的な避難計画も策定されていない状況での拙速な原発再稼働には反対すること、です。

この内容を県知事に意見書として出しました。唯一の希望です。こういうことを今後とも広げていきたいと考えています。九州各地で再稼働反対の自治体決議を上げていきたいと思います。

再稼働に向け着々と進む現地調査

原子力規制委員会は9月20日、現地調査を実施しました。50人ほどが正門前に集まり抗議行動をやりましたが、委員は裏口からこっそり入ったようです。来春の再稼働に向けて、審査は淡々と進んでいます。

原発問題は、決してエネルギー問題ではありません。「電力不足」という神話が虚構だということは、もう実証済みです。沖縄電力は、原発がなくて火力だけです。値上げ前の九電の料金と変わらないのです。値上げもしていません。九電は、原発と火力と二重に原価がかかるから値上げが必要で、原発をやめたら値上げは必要ないのです。

11月10日、福岡の舞鶴公園で「脱原発全九州集会」があります。僕たちも、鹿児島からバスを連ねて行こうと思っています。12月15日には、川内現地で集会をやります。100団体が実行委員会を形成し、2000人規模の予定で、建設時の反対集会以降で最大規模となります。再稼働されてしまえば、元の木阿弥になってしまいます。今が踏ん張りどころです。

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