2013/11/2更新
10月16日、陸上自衛隊饗庭野(以下、「あいば野」)演習場(滋賀県高島市)に、米軍のMV─22オスプレイ2機が飛来した。悪天候にもかかわらず、岩国から日本海経由でやって来た2機の機体は、市街地上空を通過して午前10時20分頃、あいば野演習場に到着。予定通り訓練を行った。訓練は午前中で終了し、2機はあいば野から普天間に戻った。
今後も安倍政権は「沖縄県民の基地負担軽減」を口実に、本土各地でオスプレイ訓練を進めていく方針だ。10月下旬には、高知県で南海トラフ巨大地震を想定した「防災訓練」を名目に、オスプレイが救助活動訓練に参加予定になっている。オスプレイを使った本土初の日米合同軍事演習となったこの日のあいば野の反対行動の様子をレポートする。(編集部一ノ瀬)
オスプレイはどこから飛んでくる?─「オスプレイ反対」を訴えるデモが終わって、複数のデモ参加者が、あいば野演習場近くで待機していた。午前10時をまわった頃、マスコミの取材ヘリの音とは明らかに異質な飛行音が響いてきた。低く、耳につくような回転音。「これがオスプレイの音か!」─しかし、雲に遮られたせいか、その姿を確認できなかった。
後でオスプレイを見た人の話を確認すると、2機そろって、琵琶湖の方からやって来て、市街地を低高度で飛んでいったという。マスコミ報道の映像でも、役場や小学校などの上空を飛んでいるオスプレイの姿がはっきりと映っている。滋賀県知事は、安全のため琵琶湖・住宅地上空を飛ばないように、前もって防衛省に申し入れしていたが、結果的に沖縄同様、無視された。
16日当日は、台風26号の影響で、JR湖西線が運行見合わせになるほど風雨が強かった。デモ参加予定の約30人も、堅田駅で足止めになった。「雨風も強いし、オスプレイもよう飛ばんのと違う?」─今津東コミュニティーセンター(高島市)に集まった参加者約30人の中からは、そんな声も出るほどだった。
そんな中、オスプレイを監視している岩国から「8時45分、オスプレイ2機が飛び立った」との一報が入る。「えっ、オスプレイ墜ちたりせぇへんやろね?!」。
雨風は一向に弱まらなかったが、デモは9時半にコミュティーセンター近くの住吉公園から出発。あいば野演習場までの約1`の道のりを「日米合同軍事演習反対!」「オスプレイは来るな!」と訴えながらデモをした。また、「あいば野演習場でのオスプレイを使用した日米軍事訓練に強く抗議する」との申し入れ書を、あいば野演習場に手渡した。
デモ後、今津東コミュニティーセンターに戻り、堅田駅で足止めになっていた人たちと合流し、交流集会を行った。
今津町在住の西村修さんは、今回の軍事演習へのオスプレイ参加について、マスコミの報道を批判。2001年に今津町の隣の新旭町に三菱電機が計画していた「新中距離地対空ミサイル」の組み立て工場建設を白紙撤回させた経過がある、と紹介。「雇用や税収などのメリットがあったにもかかわらず、住民は『心は売らない』とミサイル工場を拒否した。そうした歴史に触れずに、《自衛隊基地と共存する街》《オスプレイ反対の声も大きくない》といった報道をしているのは、大きな問題だ」(西村さん)。
この日の行動の主催者から、野坂昭夫さんが、今年の合同軍事演習は、例年に比べて参加人数が少なく、演習規模が小さいのが特長だ、と指摘。特に米海兵隊側が、ハワイから参加する予定の部隊の参加を取りやめ、当初予定の180人から80人に減っているのだという。本土でオスプレイを登場させることに意義があった。「今回の訓練は、国民にオスプレイを容認させる目的であり、『沖縄の基地負担軽減』を言うなら、沖縄の米軍基地を撤去すべき」(野坂さん)。
沖縄現地では、沖縄防衛局が「オスプレイの本土訓練が沖縄の負担軽減になる」と、大宣伝をしているという。
「沖縄県民は、防衛局の大ウソに、本土訓練は『負担増加』だと怒っています。オスプレイの本土訓練は、山岳地帯での飛行訓練など、もともと沖縄ではできない、まったく別のものです。本土訓練によって、沖縄での訓練が減る訳ではありません。また、オスプレイが普天間飛行場という危険な基地に配備されている以上、沖縄での墜落の危険性や騒音などの被害は、オスプレイの移動の機会が増える分、むしろ大きくなります。本当に《沖縄の負担軽減》と言うならば、一部でもオスプレイの本土駐留を押し進めるべきです。米軍基地の存在そのものが問題だということを忘れてはいけません」(「沖縄通信」筆者・富田英司さん)。
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