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2013/11/2更新

前近代的労働環境の温床=派遣法
「住民の生活環境改善」ではなく利権で動く『除染』

福島連帯ユニオン書記長 佐藤 隆

丸投げされた「徹底調査」

桜井勝延南相馬市長は、危険手当について、「政府直轄の除染地域(除染特別地域)だけでなく、自治体が行う除染区域(重点調査地域)についても支払われるよう予算をつけるべきだ」と発言しています。環境省は人事院規則を適用し、国直轄の除染について、発注条件として危険手当を支給するとしているのですから、自治体管轄地区についても、当然の要求です。

汚染状況重点調査地域は、岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉県の104市町村が指定されたので、除染対象地域は広大です。危険手当についても、予算は膨大になるので、労働者に支払われているのか?しっかりとした監視と管理が必要です。ところが、これがピンハネされている事実が明らかになりました。

危険手当のピンハネが報道されると、環境相と厚労相が記者会見を開き、「徹底調査」を約束しました。しかし「徹底調査」とは、ゼネコンに調査を指令しただけでした。環境省はゼネコンに丸投げし、ゼネコンは1次下請けに丸投げ、さらに2次・3次に…という構造ですから、まともな調査になるはずがありません。

福島労働局は、調査票を作って一部でアンケート調査を行いましたが、末端の下請け業者が、労働者に「危険手当を受け取っていた」とウソを書かせる不正が横行しました。「ウソを拒否したら解雇された」という労働者からの相談もたくさんありました。

「福島特別体制」を作れ

山谷・釜ヶ崎・寿町といった寄せ場で横行していた重層的な請け負い構造と搾取は、「建設労働の近代化」というスローガンのもと、労働者の闘いによって改善されてきました。

ところが、震災後の福島の現状は、数十年前の前近代的な労働環境に逆戻りしたようです。除染という公共事業利権に群がるため、有象無象の業者が雨後の竹の子のように入ってきています。インターネットで労働者を募集し、電話1本で労働者を送り込むという「派遣業者」もあります。そんな業者が雇用責任など果たすはずもなく、むき出しの搾取がまかり通り、労災隠しにもつながります。

こうした口入稼業の法的根拠となっているのが、労働者派遣法です。職業安定法が骨抜きにされ、人を動かすだけの「口入屋」が合法化されたのです。こうした悪質業者を取り締まる政策的方向性は全くなく、企業舎弟も潜り込み、重層的な搾取構造が作られているのです。除染現場の労働環境の悪化は、派遣法の成立と拡大による部分が大きいと言えます。

福島労働局との交渉では、まず福島で異常な労働状況が生まれていることを確認します。従来の労働行政では対応できないのは明らかなので、福島特別体制を作るよう要請しています。厚生労働省は、他県からの応援も組織して、福島に対しては3倍くらいの人員を投入すべきです。現場の監視体制を作り、対策を打つことが必要だ、と訴えています。

東電は破産処理を除染も廃炉も国の責任で

私たちは労働組合ですから、危険手当のピンハネや防護装備の問題など、相談が持ち込まれれば、労働条件・安全の問題として解決に動きます。しかし、その先に除染そのものの効果や必要性などの根本問題を見据えておかねばならない、と思っています。

郡山では、マスコミも行政も除染の大合唱です。事故後1年経った頃から、「子どもを守れ!」というかけ声で、自治会などがまともな防護装備もなしで、高圧洗浄機で道路を洗ったり、ホットスポットの除染も含めて住民が大量動員されました。効果は一時的で、「除染ではなく移染だ」という批判が広がりましたが、これで内部被曝した人も多いはずです。被曝管理という点で、自主的除染には問題があります。

今は、「除染をすれば故郷に戻れる」という帰還を促す方便となっていますし、事故の影響を少なく見せて、できればなかったことにしたいという意図も見え隠れします。

これは、避難した人々を切り捨てていく方向に向かいます。除染をして特定避難区域指定が解除されると、以後、生活補償は打ち切られます。しかし、子どもがいる家族などは帰れず、経済的に行き詰まっていきます。県外に自主避難した人々への支援も、縮小されます。

除染作業は、住民の生活環境改善という本来の目標が棚上げされ、公共事業利権として動いている側面が強いので、住民は不信を抱いています。そもそも線量の非常に高い強制避難区域の除染は必要性があるのか?という疑問もあります。政府の責任で「帰還不能宣言」をして、住民には十分な補償を提示すべきです。

除染も廃炉作業も、膨大な被曝労働を強いることになります。市場経済原理ではできない事業ですし、東電に責任能力は全くありません。東電を破産させ、経営者・株主の責任を追及した上で、国直轄でやるしかないでしょう。

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