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2013/10/11更新

ブラック企業で働く飲食店勤務の外国人労働者が団結
「フードサービスユニオン」設立

APFS労働組合執行委員長・山口智之さんに聞く

 外国人労働者を組織する労働組合が、飲食店に勤務する外国人労働者の組合「フードサービスユニオン」を設立する準備を進めている。少子高齢化への対策として移民受け入れがテーマとなるなか、日本国内ではすでに100万人近い外国人労働者が就労しているという。今や飲食店やコンビニエンスストアの店舗を支えているのは外国人労働者。しかし、就労の現場には露骨な差別もある。APFS労働組合執行委員長の山口智之さんに、「フードサービスユニオン」設立の経緯と、飲食店で働く外国人労働者が直面する問題について聞いた。(清水直子)

 ――APFS労働組合組合員の顔ぶれは。

APFS労働組合は、外国人支援団体APFSの労働相談部門が分離・独立して、2007年に結成された地域合同労組(ユニオン)です。65人の組合員の多くは外国人労働者で、なかでも7割以上がビルマ(ミャンマー)人。ビルマ人は、日本では飲食店で働くことが多いのです。飲食店では、日本人の店長以外はアルバイトの外国人労働者が店を支えているというケースが多いですね。

――どんな相談が多いですか。

不当解雇といじめです。飲食店にはブラック企業が多く、日本人でもひどい目に遭っている労働者がいますが、日本人以上に劣悪な雇用環境におかれることが多い。主な原因は人種差別。日本人に対してはしないような悪質な行為も見られます。トイレ掃除など日本人労働者の嫌がる業務を押し付けたり、「お前たち外国人はいい加減だから遅刻をする、業務上の間違いを起こす」といった差別的言辞によるハラスメントが典型です。

現在、相談者の多くは、いわゆる不法就労ではなく、合法的に就労している労働者です。留学生の場合、入国管理法によって、届け出をして資格外活動の許可を得れば、1日4時間週28時間までは就労できるのですが、その許可をとっていないということはあります。

――「フードサービスユニオン」設立のきっかけは。

設立のきっかけは、格安の居酒屋として東京都内で店舗展開している居酒屋「清龍」(本社・東京都豊島区)で起きた労使紛争。ビルマ人のミョータンさんは、「清龍 高田馬場店」で、7年間もまじめに働いていました。

ところが、外国人差別をする日本人アルバイトが入ってきて、何人もの外国人労働者とトラブルを起こします。営業中に別のビルマ人労働者とけんかになり、警察が出動する事態になりました。ミョータンさんがこのけんかの仲裁をすると、会社側は、ミョータンさんもけんかに加わっていたと一方的に思いこみ、本人や周囲の他の従業員の話も聞かず、即日解雇したのです。

私たちが相談を受けると、同社の社会保険未加入、深夜割増賃金未払い、有給休暇未付与などの法令違反も明らかになりました。居酒屋「清龍」が安いのは、外国人労働者を安価に雇い、平気で使い捨てるからこそと言わざるを得ませんでした。

ミョータンさんは、APFS労働組合に加入し、会社と3回にわたり団体交渉を行いましたが、社長は非を認めず、「うちの決まりだから、うちが勝手に判断する」などと発言。会社側の弁護士も社長を説得できない様子でした。

やむを得ず8月に店舗前で抗議行動を行うと、驚くべき事態が明らかになります。店舗に貼られていたスタッフ募集の看板に、何と「外国籍不可」と書かれているのです。

――悪質ですね。

職業安定法第3条(職業紹介、職業指導等についての平等)の主旨や憲法第14条(法のもとの平等)を無視した外国人差別です。同店には、複数の外国人労働者が就労しています。「外国籍不可」と書くのは、ミョータンさんと私たちの主張を受け、会社側が「これ以上外国人労働者が組合に駆け込まれてはかなわない」と付け足した条件にほかなりません。

さらに会社は、同店で就労中の外国人労働者の労働時間を極端に減らしてしまいます。生活が立ちゆかなくなった労働者は、退職を余儀なくされました。9月末に退職するこのビルマ人労働者が中心となり、飲食店勤務の外国人労働者による産業別組合として「フードサービスユニオン」を設立することにしたのです。

ビルマ人は概しておとなしい人が多く、労働現場で理不尽な目に遭ってもがまんしてしまうことが多い。長く安心して働くためにも、がまんしないで、人権の問題として自分の権利は主張しよう、と伝えたいです。

APFS労働組合では、これまで苦渋をのまされてきた飲食店勤務の外国人労働者によるさらなる団結を闘いを作り出したいと考えています。今回は、退職後の労働者が中心となっていますが、工場勤務やホテル客室の清掃に従事するの労働者が一定数いますので、「個別駆け込み相談」にとどまらずそれぞれの産別でユニオンを作り、自身の職務における権利意識の向上、さらには集団的労使関係の構築を目指していきたいですね。

APFS労働組合(APFSユニオン)
〒173─0023東京都板橋区大山15─8ミナマウンテン201
電話・03─5966─2290

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