2013/8/9更新
強まる再稼働への圧力「影」に惑わされず力を尽くそう 伊方原発反対八西連絡協議会事務局近藤誠
状況悪化と同時に生まれた希望的現象 福島原発告訴団団長武藤類子
伊方原発反対八西連絡協議会事務局 近藤 誠
参議院選挙の投開票の翌日の22日、「安倍自民大勝」「ねじれ解消」「民主惨敗」の見出しが各新聞紙面のトップを占めた。原発推進を公言した自民の勝利に、電力関係者は「再稼動にプラス」と喜びの声をあげ、改憲勢力も「国政選挙は今後3年はない。この《黄金の3年間》で内外の懸案事項に果断に取り組む。集団的自衛権の政府解釈の変更をためらうべきではない」(読売・永原政治部長)など、勢いづいている。
一方で、「安倍政権の勝利に世界は憂慮している」(中国)、「憲法改正が加速化する恐れがある」(朝鮮日報)など、アジアからは不信や不安の目が向けられている。アメリカの政府関係者の「政治面で安定するのは良いが、歴史認識での違いが出ると韓日、日中の関係がさらに悪化しかねない」との声も報道されている。
憲法問題は、原発問題にも密接につながっている。福島原発事故の直後に「原発は要らない」との声と意識が広がり始めるや、石破自民幹事長らが、核保有の可能性を維持しなければならない、と原子力推進の「本音」を叫んだ。
彼らの原発推進は、核保有の願望と表裏一体のものであることをさらけ出した。アメリカの核の傘に頼る現状をいつか脱して、壊憲して自らの核武装で近隣諸国を脅迫しつつ、ゼネコン企業、商社の代弁者として「強盗的押し売りセール」や「資源争奪」の先頭に立つ、という政治屋たちの暴走が始まろうとしているのではないか、と近隣諸国の人々は懸念しているのだ。筆者も同様に危惧している。
同時に、政府や電力会社の再稼動へ向けての強行姿勢に抵抗すらできない原発立地自治体の姿勢も、「第2の福島」への「暴走」であり、その結果は「核の暴走」になるだろう、と危惧が強まっている。
伊方原発の立地する愛媛県の中村知事は、かねてから四国電力擁護の姿勢が強く、再稼動にも前のめりだ。山下伊方町長も、四電の3号機再稼動審査申請に「一歩前進」と評する始末だ。
参院選後は、一層、再稼動への圧力が強まるだろう。年末までに伊方原発の審査結論が出る可能性も報道されている。
しかし、こうした流れの下であろうとも、私たち地域住民は、再稼動は決して認めない。伊方原発30q圏内の各自治体で再稼動阻止に取り組む人たちで交流と情報交換、共同行動などのネットワーク作りを進めるとともに、昨年11月に結成された再稼動阻止全国ネットワークの人々とも連携を強め、大飯、志賀、柏崎、泊、伊方、玄海、川内など各原発現地での共同の取り組みも進めている。
「自民大勝」といっても、その内実は有権者の4分の1程度の支持に過ぎない。翼賛報道で肥大化する「影」に惑わされてはいけない。「あきらめた時が負け。自ら白旗を掲げない限り、負けることはない」─この気持ちで筆者は42年間、原発に抗い続けてきた。
今、全国の50基の原発で48基が止まり、伊方も1号機が運転開始してから34年ぶりに全3基が停止して1年7カ月過ぎた。土俵の中にいるのは私たちであり、土俵に必死で這い上がろうとしているのは、転げ落ちた電力会社や推進派なのだ。
これからも、明日を担う世代が安心して暮らすことのできる大地や海を引き継ぐために、心ある皆さんと共に力を尽くしたい。
福島原発告訴団団長 武藤 類子
福島選挙区は、自民党の森雅子さんが当選しました。「原発事故子ども・被災者支援法」成立に向けて一生懸命やっておられた方ですが、当選後の報道陣の取材に、原発の再稼働は党の方針に従う、といったのには驚きました。
福島県民は皆「原発はもうたくさんだ」と言っています。しかし同時に、原発によって破壊されてしまった暮らしを何とか取り戻したいという思いも強いのです。
原発再稼働を明言する自民党に投票した方々は、差し迫った生活破壊を食い止めてくれるのでは、と期待したのでしょう。
投票率の低さは大きな問題です。政治に無関心になる風潮はずっとありましたが、若者の無関心を作りだしたのは、我々世代の責任もあると思います。若者の無関心の裏には失望感があるのかもしれません。
「何をやったってどうせ駄目じゃん」みたいな感じを持ってる人がたくさんいるのだと思います。自分が社会を形づくっており、世界の一部であるとの実感がなく、自分の行動が誰かとつながっていくという経験もないのだと思います。自分のことが好きになれる、自信が持てるような関係作りが必要だ思います。
投票率が低いことは、政権の正当性を危うくするはずです。自民党は眠ってる人が多い方がいいのかもしれませんが、何か対策すべきです。
ただ、山本太郎さんが東京選挙区で当選できたことは、希望です。若いムーブメントがわき上がってきました。山本太郎さんの主張は、原発再稼働反対、子どもを被曝から守るために避難させなければいけないと、一貫しています。本気で脱原発を考えている姿勢が心に届いたのでしょう。彼が国会の中で発言できるような環境作りを考えて欲しいと思います。
同様にミュージシャンの三宅洋平さんのもとに集まった若い方の支持も、すごいと思います。緑の党は、議席こそ獲得できませんでしたが、国政初挑戦で45万人の支持を集めました。あまりに状況が酷くなると、同時に起きてくる希望的な現象なのでしょう。
脱原発陣営が連合できなかったことは残念ですが、落胆している暇はありません。これからどうするかを考えたいと思っています。
当面の課題としては、「原発事故子ども・被災者支援法」の意義について広く知ってもらい、内実を作っていかなければなりません。「原発事故子ども・被災者支援法」は、被害者救済のベースになる重要な法案ですが、知らない被災者もたくさんいます。自民党が圧勝してしまったので、棚晒しにされる恐れがあります。
他にも、被曝労働、放射性廃棄物焼却問題や子どもたちの健康問題にも取り組まねばなりません。こうした毎日起こっている福島の状況を、知りうる限りたくさんの人に知ってもらうよう語り続けたいと思っています。(談/文責・編集部)
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