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2013/7/19更新

モンゴル

日本の原発輸出核廃棄物処分場建設の一環

ウラン開発で鉱毒事件
仏アレバ系開発会社を封鎖抗議

6月10日、モンゴルの日刊紙「ウネン」は、「オラン・バドラフの住民は、銃に弾を込めて故郷を守る」という記事を掲載。ウラン鉱山開発にともなう鉱毒事件と遊牧民の抗議行動を報じた。仏アレバ系のウラン開発会社=コジェ・ゴビ社は、2010年末から2011年5月にかけてウランを試験採掘していたが、同地域の家畜に異常出産が続き、地元遊牧民は、「放射能が原因」として、同社の操業停止と早急で公正な調査を求めて、会社を実力封鎖した模様である。

本紙がこの抗議行動に注目するのは、日本の原子力政策とも密接に関係しているからだ。モンゴルのウラン開発は、同地における核廃棄物処理場建設と表裏一体の計画で、日本の原発輸出と再稼働を可能にさせ、原子力ムラの生き残りをかけた「最後の切り札」でもある。

コジェ・ゴビ社

 フランスのアレバ社が70%、モンゴルのゴビ・ゲオ社が30%出資する合弁会社。モンゴル政府は、市場経済移行後、地下資源開発に国際資本投資を受け入れるために鉱物資源法を施行(2007年)した。コジェ・ゴビ社が、ドノルド県の探査権を取得。ウランを化学物質の入った水溶液で溶かして吸い上げる「イン・シチュ・リーチング法」で試験採掘を行い、2700dのイエローケーキを生産したと言われる。

7月6日、「モンゴルを襲う核のゴミ」と題する緊急勉強会(大阪市)が開かれた。モンゴル反核運動リーダー=アリオンボルド氏への質疑を中心に、モンゴルの核開発、日本の関わりを考えたい。3月30日、モンゴル政府庁舎前では、「ウランは掘らん」「ウランは売らん」の横断幕を掲げた反核運動家が訪問中の安倍首相を迎えたことは、1478号で伝えた。安倍首相の同国訪問は、「ウラン採掘、原子炉建設、使用済核燃料の処理問題など、重要問題が話し合われたのは必至」との見方もある。

原発再稼働を公言する安倍首相だが、モンゴルウラン開発からは、福島事故に向き合うことなく、原発継続どころか輸出まで目論む国際的原子力ムラの戦略が見えてくる。(編集部・山田)

※ ※ ※

7月6日の緊急勉強会におけるモンゴル反核リーダー・アリオンボルドさんのインタビューを掲載する。同氏は環境団体「ゴロムト」代表で、この日大阪とウランバートルをスカイプでつなぎ、参加者と意見交換した。(文責・編集部)

編集部…銃を携えての会社封鎖は、今も継続しているのですか?

アリオンボルド…アレバ社が試験採掘しているのは2カ所(ドルノゴビ県オラン・バドラフとズーン・バヤン)ですが、両方とも牧民は座り込みを解除し、交渉を始めました。鉱毒被害が大きかったオラン・バドラフの事業所は、今も操業停止状態です。

地元紙では「銃に弾を込めて」と報道されたのですが、実際には平和的な方法をとっています。牧民らの署名を大統領や国会議員にも渡して対策を求める、といった活動が基本です。ただし、いつでも闘えるよう銃を用意したり、ウラン試掘用井戸を破壊した若者もいます。今のところ話し合いで解決する空気が主流です。

編集部…モンゴル政府やアレバ社の対応は?

アリオンボルド…会社との交渉で、住民が「ウランが原因で健康被害等が起った場合、責任は取れるのか?」と聞いたところ、アレバ社は「核エネルギー庁の認可を受けているので、責任はモンゴル政府にある」と答えたそうです。住民の怒りは高じています。

核エネルギー庁が認可し、アレバが操業して、チェックするのも核エネルギー庁、というシステムそのものに問題があります。利益配分は、アレバ社=49%、モンゴル政府=51%なので、両者は利益を共有しており、チェックが効かないのです。

会場…現地に加工工場はあるのですか?

アリオンボルド…ドルノゴビ県で作られているのは、イエローケーキの前の段階のウラン加工物です。将来、これを韓国に輸出して燃料棒を作り、サウジアラビアの原発で核燃料として使うことも想定されています。ただし、証拠はありません。

鉱毒事件の起こったウランバドラフは、ウラン採掘後、廃棄物処分場にする計画もあります。理由は、ゴビ砂漠だからです。

編集部…メディアや国民の反応は?

アリオンボルド…世界的にみても、ウラン鉱山開発が行われている地域では、情報が政府によってコントロールされているため、現地の遊牧民は何も知らないまま犠牲になる、ということが起こっています。

 包括的燃料サービス(CFS)構想

 モンゴルには、世界最大といわれる推定埋蔵量140万トンのウランがある。掘り出して核燃料を製造し、日本・米国・韓国から原発を買った国に輸出、その原発から出る使用済み核燃料をモンゴルの最終処分場で引き受ける、という構想。同構想は、モンゴルに対して「ウランを輸出して外貨を稼ぎたいなら、最終処分場を作って使用済み核燃料を引き取れ」という「核のゴミ」押しつけプログラムでもある。

この構想は、日本が新興国へ原発輸出する際のセールスポイントであり、日本でたまり続けるプルトニウム処分の解決策でもある。モンゴルこそ、アジアの脱原発のカギを握っているといっても過言ではない。

3・11後、日本政府は、モンゴル政府との交渉に関して、ウランや原発に関連する言葉を使わなくなり、公式サイトからも関連情報を消去している。しかし、原発利権に群がる人たちにとって、「モンゴル・ウラン・イニシアティブ」は、夢の続きを見させてくれる甘美なベッドである。

ウラン開発という重要問題は、政府や国会だけで議論するのではなく、国民、とりわけ犠牲となる牧民との真摯な話し合いが必要です。

このため私たちは、正確な情報を住民に提供し、適切な判断ができるよう援助しています。今回も、首都でデモをしたり、現地へ行って遊牧民と学習会をしたり、遊牧民を助ける運動をしています。

モンゴルにはたくさんのメディアがあり、反核運動も近年盛んになってきました。主要な新聞・メディアは政府の側についている場合が多いのですが、インターネットメディアの中には、反核運動を支持するところもたくさんあるので、メディアも分断された状況ですが、まとまっていく方向にあります。

 編集部…遊牧民の方は、家畜を食べられないのですか?

アリオンボルド…私たちが現地に行くと、歓迎の意を込めて山羊を屠殺して夕食に出してくれるのですが、内臓に異常があることが、私たちもわかるし、主人である遊牧民もわかるのです。

モンゴルの牧民は、これまで何も心配することなくお腹をいっぱいにできたのですが、「これで大丈夫か?」と思いながら食事をするのは、これまでなかったことです。

水も不安です。遊牧民たちはその土地の水を飲んでいるのですが、コジェ・ゴビ社の人たちは、ミネラルウォーターを買って飲んでいます。現地の水が汚染されていることを知っているからです。コジェ・ゴビ社がウラン試掘している場所は、遊牧民が飲んでいる地下水の源流地にあたります。

モンゴル人は家畜の様子を見て、環境の変化を判断しています。人間に直接被害が出てくる前に、家畜で見ることができるのです。

ウラン鉱毒が原因と疑われる家畜の異常出産

 最初に被害を訴えたのは、ウラン採掘地から6qのところで幕営していた牧民ノルスレンさんである。昨年末、最初の仔牛が死亡。1月末までに22頭死んだ。

3月、家畜繁殖研究所は、「重金属と放射性物質が原因である」との調査結果をまとめた。ところが核エネルギー庁は、家畜繁殖研究所の結論を否定。首相直轄で調査チームを作り、5月1日に次のような結果を公表した―「(仔牛死亡の原因は)ウランではない。伝染病でもない。銅とセレンとアンチモンが疑わしい」。

5月28日、牧民らがウランバートルで記者会見。写真を示しながら、21戸の家畜の異常出産のリストを読み上げた。その報告によると、@2つの頭をもった仔羊の出産、A足の立たない仔ラクダが生まれ、3日後に死亡、B口が割れ、歯のない、目の見えない仔ラクダの出産、C首のない仔ラクダの出産、などが含まれている。

牧民たちは「2つの頭の子どもが生まれたら、初めて私たちのことを信用するのか? それまで政府は放っておくのか?」と訴えている。

人間にも既に影響が出ているという。子どもが風邪をひくと、数カ月も治らない、母ラクダの乳製品を食べて育った子どもの体調が悪い、という。(「モンゴル国ドルノゴビ県におけるアレバ系コジェ・ゴビ社のウラン鉱毒事件」─今岡良子著を参考に作成)

鉱山労働者も、問題を抱えています。粉塵を吸い込まないような防護措置がほとんど採られていないために、放射能を含んだ粉塵を吸い込み、健康被害が起こっています。

健康に関わる専門家との連携は模索しています。特にガンは、その原因を特定するのが非常に難しいので、専門家の協力が不可欠です。検査・調査機関は全て政府のものなので、市民が出資して運営する研究機関を設立する計画があります。

 編集部…あなたは日本の反原発運動との連帯の必要性を訴えています。理由は?

アリオンボルド…ウランを採掘して、加工したイエローケーキを輸出すると、それは核燃料として原発で燃やされ、できた核廃棄物がモンゴルに帰ってくる、という「核燃料サイクル」の一環を担うことです。こうして、モンゴル産のウランは、核廃棄物として戻って来る可能性を含んでいるのです。

もうひとつは、モンゴルに原発を造れば、使用済核燃料を処理する必要が生まれます。核のゴミの最終処分場建設がこれを口実に進むのではないか、と危惧しています。

モンゴルの首相は、「外国産」核廃棄物の受け入れを否定しましたが、逆にモンゴル起源の核廃棄物については、受け入れる可能性を示唆したものだと考えています。

昨年5月に発表されたモンゴル「投資計画2012─2017」には、「放射性廃棄物保管、加工、埋蔵施設建設関連施設建設」の予算がつけられていました。こうした意味でも、モンゴルでのウラン開発は危険です。

私たちは、原発事故で今も被害を受け続けている福島の人々との深い連帯を求めています。福島の人々が苦しんでいるのに、ウランを売って豊かになりたいとは思いません。

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