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2013/7/8更新

駆け込み寺を砦へ  プレカリアートユニオン日記

破綻していくトラックドライバーの輸送現場

プレカリアートユニオン書記長 清水 直子

プレカリアートユニオンの組合員・Aさん(37歳)が、雇用主である田口運送株式会社(田口精一代表取締役/東京都北区)を相手取って、残業代の支払いを求める裁判を起こした。原告は、長い時で1日20時間にも及ぶ長時間労働に従事しているが、時間外賃金は払われていない。

Aさんは、同社で大型トラックのドライバーとして働き始めて間もなく5年。仕事には責任を感じ、誇りを持っている。

「大型トラックは、一般道路では道路の幅とほぼ同じ。車体も大きいので、ちょっとしたハンドルミスが重大事故にもつながります。そんな緊張と隣り合わせで、時間に間に合うように大事な荷物を運ぶ責任のある仕事。いくら物を作っても、運ぶ人がいなければ、物が必要な人の手に届くことはありません。私の運ぶ牛乳やヨーグルトやアイスクリームを待っている人がいて、多くの人の生活を支える大事な仕事であると思っています」と彼は言う。

Aさんが運送業界に入った1998年頃、大型トラックのドライバーの給与は、今の倍ほどだった(今は月給30万円程度)。きつい仕事に見合った給料を受け取ることができ、子どもを育てていけると思い、大型免許を取得したのだ。しかし、1日14時間は当たり前の長時間の重労働であることは変わらない一方、賃金は下がり続けている。1時間当たりの時給が最低賃金を下回る従業員もいるほどだ。

会社は、時間外労働の賃金を支払わないようにするため、本来時間外労働の賃金とは性質が異なる職能給、成績給、職別給、さらには安全評価給という無事故手当までが、時間外労働の賃金であるかのように就業規則や賃金規定を変更し、つじつまを合わせようとしている。

しかし会社は、毎年10月に最低賃金が上がると基本給をわずかに上げるが、その一方で手当を減らして相殺するので総額は変わらない、と説明する。各種手当てが時間外労働の賃金である、などと言えないことの証だ。

人の生活を支える物流の労働は低賃金・長時間・重労働

Aさんは、「トラックのドライバーは、割に合わない仕事になり、輸送の職場から若者が減っています。私の勤めている営業所には、20代が1人しかいません。30代は私を含めて2人。40数名の営業所の95%以上を40代〜50代が占めています。以前は、普通免許を取得すると同時に取得できていた中型免許も、今では新たに取らなければならなくなりました。わざわざ免許を取得してまで就きたい仕事ではなくなってしまい、このままでは、日本で物を運ぶ人がいなくなってしまうのではないか、心配しています」と訴える。

相談・連絡先

プレカリアートユニオン

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その上、輸送している商品を破損させた場合の商品事故の弁済金が給与から天引きされることも、常態化している。過当競争が進み、経費を削減した運輸会社が、安易にドライバーに負担をつけ回しているのだ。残業代も支払われず、商品事故のリスクは負わされる配送業務。今は、ドライバー個人の我慢や努力で何とか保たれている現場も、このままでは、破綻してしまう。

日本がいくら「もの作り」を大事にしても、物を運ぶ輸送の現場が破綻しては、成り立たない―組合員たちは、そんな危機感を持っている。

だから、提訴は、単に個人の残業代請求を目的にしたものではなく、ドライバーの待遇改善を目指しているものだ。提訴に合わせて、5月23日、厚生労働省記者クラブで、流通の現場が劣化していることに危機感を持つドライバーが、記者会見で実態を語った。

記者会見の様子は、ウェブサイト上で公開しているので、ぜひご覧ください。

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