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2013/7/8更新

今も続く危険手当のピンハネ
地元業者もゼネコンの食い物に

昨年11月、福島県楢葉町での除染作業に就いた高田恵一さん(仮名)は、「政府から支給されているはずの危険手当(1万円)がピンハネされている」として、3次下請けである派遣会社に団交を要求。ピンハネされた危険手当分は取り戻したが、元請けゼネコンである清水建設の責任追及にまでは至らなかった。

高田さんは今、いわき市で、除染や福島第1での復旧作業に従事する被曝労働者の労働相談を受付けている。高田さんに福島での被曝労働の現状を聞いた。(文責・編集部)

前近代的な重層下請け構造で消える危険手当

編集部…事故原発収束作業では、労働者が足りないと聞いていますが…。

高田…事故原発での日当が下がり、除染作業の方が日当は高くなっています。より危険な事故原発を希望する労働者が足りなくなるのは、当たり前です。しかも、収束作業現場に入るには煩雑な手続きが必要で、待機時期が長いのに日当は低い、という相談が多くなっています。

編集部…除染労働に関する相談事例を紹介してください。

高田…いわき市にある籐建で働く労働者3名が、12月に相談に訪れました。「除染作業の危険手当がピンハネされている」という訴えでした。社長はヤクザではないのですが、元暴走族であることを労働者に吹聴するチンピラで、暴力支配がまかり通るような職場だったようです。

労働組合が団交を申し入れると、社長が組合員となった3人を脅して、示談にしてしまいました。「3人だけに危険手当は支払うが、その後自主退職」という示談内容です。

直後の3月、籐建の下請けで働く4人が、またもや「危険手当が支払われない」という相談に訪れました。うち3人は、秋田の人材派遣業者=A社から送り込まれた労働者で、1人はいわき市にあるSRKという会社から籐建に送り込まれていました。SRK社長も暴力的で、籐建社長と友だち関係のようでした。SRKの給与明細には、「危険手当=1千円」が明示されていたので、違法性は確実でした。

相手が相手なので、被ばくネットや全港湾など、いわき現地の20人くらいで団交したのですが、その後、当該組合員が社長に「組合と手を切れ」と脅され、諦めてしまいました。

一方、A社から派遣された組合員は、交渉継続中です。2回目の団体交渉で籐建は、「日当6千円+危険手当1万円」と書かれたウソの雇用契約書を示し、「実際の支払額=1万1千円との差額なら支払う」と言ってきました。

A社社長は「籐建から危険手当は一切もらっていない」と証言し、書面に署名もしています。籐建の説明は、デタラメもいいところです。こうした前近代的悪徳業者が、除染業界には蔓延しています。

編集部…籐建が《危険手当》をピンハネしている?

高田…実は、籐建自身も危険手当を満額もらっていないようです。福島の2次・3次下請けは、ピンハネされた危険手当を受け取っていて、元請けであるゼネコンだけが儲かるシステムではないかと推測しています。

実際、3次下請業者の社長から「元請けから危険手当を支払ってもらえない」という相談がきたこともあります。除染という公共事業は、労働者は無論ですが、地元業者も含めて、ゼネコンの食い物にされている、という構図です。

効果のない「除染」と劣悪な労働環境 福島を食い物にするな!

編集部…《危険手当》については、昨年11月に未払いの実態が明らかになりました。経産省・環境省が調査に入り、改善されたのでは?

高田…実態が明らかになって、下請け業者は賃金を下げて(日当1万円→6千円)、危険手当(1万円)を上乗せし、その差額分(6千円程度)を支払って問題解決を図る(日当6千円に下げ+手当1万円、さらにそこから寮費・食費・交通費を控除させ、差額2000円〜3000円を支払う)、という収束策に出ました。

しかし、労働者からの相談で団交を申し入れ、危険手当分(1万円)を労働債権として要求しても、下請業者自身が危険手当分を受け取っていないので、なかなか解決しません。

労働局はアンケート調査をしたのですが、本当のことを知ろうとしていないのです。労働基準監督署は、「手当は賃金ではないから、指導できない」と何もせず、結局、実態を告発した労働者が特定され、チクった犯人として会社から報復されて放り出される、というのが「改善」の実態です。

編集部…被曝管理は改善されたのですか?

高田…昨年私が従事した楢葉町の除染作業では、放射線管理手帳すら発行されませんでしたが、今は、支給されるようになっています。しかし、装備面は改悪されています。防塵マスクが支給されなかったり、市販の風邪用のマスクが支給されたりしています。

業務用マスク支給を要求し続けた労働者が、業を煮やして環境省に電話をし、実態を告発して指導を求めたところ、翌日からマスクは支給されるようになったのですが、職場で犯人捜しが始まりました。そうした雰囲気にいたたまれなくなった労働者が名乗り出たところ、即日解雇されました。

政府も自治体も、除染をして住民を帰還させるという方針のもと、公共事業として除染作業が発注されています。「にわか除染業者」の参入も激しく、作業管理も被曝管理もかなり杜撰と言わざるを得ません。

福島住民は、除染の効果をもはや信じておらず、莫大な除染費用は大手ゼネコンに吸い上げられ、地元業者も含めて、福島が食い物にされているのが実態といえます。

* * *

▼「いわき自由労働組合」では、福島現地で被ばく労働問題に取り組んでいます。皆さんからのカンパ支援にご協力ください/[振込先]東北労働金庫小名浜支店・一般口座・口座番号6328095「いわき自由労働組合」

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