2013/6/25更新
安倍内閣の高い支持率を背景にした自民楽勝ムードのなか、民主党は低位安定。みんなの党・日本維新の会など右派第3極政党も、橋下妄言で勢いを失っている。
こうしたなか「もうひとつの選択肢」として、反原発・反改憲・反TPPで一致する「オリーブの木」構想が期待されたが、調整は不調に終わり、各党独自で支持集めに奔走している。
参院選の争点について、右派メディアは破綻が見え隠れする「アベノミクス」を挙げて争点ずらしに躍起となっているが、本当の争点は、@改憲、A原発再稼働、BTPP、C米軍基地再編である。
こうした争点について、緑の党・長谷川羽衣子さんと社民党・山城博治さんに話を聞いた。原子力規制委が、「再稼働ありき」の新基準を決定した。反改憲・反原発・反TPP・反基地を掲げる政治勢力の奮闘に期待したい。(編集部)
緑の党 長谷川羽衣子
編集部…「緑の党」の世界的な動きや広がりは?
長谷川…緑の党は、世界90カ国にあります。一番有名で政治的な力を持ってるのは、政権に参加しているドイツです。フランスの緑の党も、共同代表の女性が家庭相で入閣しています。ヨーロッパで緑の党は、無視できない政治勢力になっています。
中米では、メキシコが会員数約50万人で成長しています。熱帯雨林の伐採に反対する運動が盛んで、国会議員も誕生しています。「緑の党」発祥の地であるオーストラリアにも国会議員がいます。
ただ、アジア圏は「これから」です。台湾・韓国・日本で緑の党が作られていますが、台湾は、首都=台北の近くに原発があるため、反原発運動が盛んです。環境保護運動も活発で、地方議員は既に相当数いますし、国会議員ももうそろそろという情勢です。
編集部…日本では緑の党がなかなか定着しないのですが、その理由は?
長谷川…私は3・11後、初めて反原発運動に参加したので、歴史的経緯などは伝え聞いている程度ですが、緑の党がうまくいかなかった要因のひとつは、選挙制度だと思っています。現行選挙制度では、一度負けると再起不能です。供託金は、選挙区=300万円、比例区=600万円ですから、一般庶民が立候補するには高すぎるハードルです。
ドイツ、イタリア、フランスでは供託金は無料ですし、一番高いイギリスでも10万円程度。ドイツでも、票数に応じて供託金が還ってきます。日本は、得票が一定数以下だと全額没収で、候補者の自己負担になりますから、再チャレンジが難しいのです。
もうひとつは、参加型民主主義が日本にまだ根付いていないためでしょう。「政治家」という特別な人に委任するのが、日本の政治スタイルです。自ら参加し、創り出すのではなく、政治家に大きな期待をし、一方で失望して批判をする、というパターンです。
これは、選挙にお金がかかりすぎることと関連しています。国会議員の報酬は、ヨーロッパ諸国より高額です。国会議員の年収は約4000万円ですが、政治を丸投げすると、これぐらいの費用がかかってしまうのでしょう。市民も政治参加して、自分たちの意思と運動で政治を動かすようにすれば、議員報酬も会社員並で良いと思います。この表裏一体となった民主主義のあり方を変えていくのが、立候補した大きな目的です。
編集部…現状を変えていくための緑の党のプログラムは?
長谷川…まず、議員報酬の引き下げです。政治活動に必要な調査・研究費と報酬部分を分けるべきです。個人の収入部分は、ヨーロッパ並の800〜1000万円ぐらいに下げます。次に、供託金を引き下げ、できれば無料にしたいと思っています。
緑の党は、草の根の政治参加を活発化します。政治資金パーティーにしても、現状は普通の人が参加できる値段でありませんから、500〜1000円で政治報告会やミニ会を日常活動としてやります。市民と議員が、お互いの役割を確認し合って、共同する場にしていきたいと思っています。
編集部…社会運動と政治活動の関係をどう整理していますか?
長谷川…私の中ではつながっていて、大きな違いはないのですが、世間的には大きな区別があることを実感します。市民運動の側からはハッキリ区別されますし、政治が、市民運動と断絶していると感じてます。
ただし、緑の党のような草の根民主主義から生まれる政党は、市民運動がなければ躍進することはないので、市民運動の延長線上としての「政治」と考えてます。役割分担はあるでしょうが、基本的目的は同じです。
編集部…参院選に向けて、反原発で一致できる社民・みどりの風・新社などが合流する「オリーブの木」構想があります。緑のスタンスは?
長谷川…弱小政党が集まってもオリーブの木にはならないと思います。幹がないオリーブの木は、大きくは成長しないということです。小さな政党は、むしろ強いアイデンティティーがあるので、「大同小異で協力して」と言われても、そう簡単ではありません。
そもそもイタリアの「オリーブの木」構想は、政権与党への決断という場面の選択の時です。日本の現状とは、条件が全く違います。
私が京都の反原発市民運動で、統一デモの枠組みをつくった経験からしても、共産党と社民党が一緒にやるだけでも一年かかりました。「選挙」という党の存亡がかかる場面で協力するには、もっと時間がかかるわけです。これを可能にするのは、圧倒的な市民の力があって、「連合しろ」と強制するだけの力を持つ場合です。
編集部…安倍政権についての評価をお願いします。
長谷川…原発政策、憲法、TPPに関しては、当然批判されるべき政策です。
一番ひどいのは、原発政策です。福島事故が収束していないのに、再稼動を明言した公約を盛り込み、輸出までしようとしています。「世界一安全性が高い」などと言っていますが、トルコやインドは、製造者責任法があり、メーカーが賠償責任を負うことになります。日本国内でも原発メーカーに製造者責任を負わすことが必要ですが、もし海外で原発事故が起これば、三菱や東芝は確実に倒産です。そのリスクを負ってまで輸出するだけの根拠がどこにあるのでしょうか?日本経済にも大きなダメージを与えるので、安倍政権の先見性はゼロです。
さらに、女性手帳や歴史問題については、歴史を逆行させていると思います。選挙が近づくにつれて、保守色がどんどん出てきています。保守層を固めるという思惑なのでしょうが、「女性手帳」は、非常に問題です。恥ずかしい思いすら持ちます。
靖国神社への公式参拝は、外交的にも大きな失政です。私が外交上の問題を聞いている元外交官の方は(保守ですが)、「愚の骨頂だ」と言っています。ただし、ロシアとの北方領土問題の交渉糸口を掴んだことは、評価できます。
編集部…緑の党は「女性と若者の党」を掲げています。雇用の問題についてのビジョンは?
長谷川…まず、非正規雇用と正規雇用の格差を埋めなければなりません。「同一価値労働・同一待遇」が原則です。非正規雇用がこれほど蔓延しているにもかかわらず、社会保証制度が全く立ち後れています。求職期間中の生活保障と職業訓練は、早急に整備する必要があります。オランダの制度を参考にしながら「同一価値労働同一待遇」を原則とする政策を進めます。
また、新卒採用に頼らない採用システムも必要で、職業訓練がもっと実効性のあるものにして、再チャレンジが可能な制度が必要です。
関西経済同友会が、移民労働力の受け入れを求めていますが、これは大きな間違いです。労働力不足なら、まず女性が労働市場に参加できる環境が必要です。自治体が充実した保育ケアを提供し、子どもをもつことがハンディーにならないようにすべきです。
クォータ制度については、党内で先どりして取り入れています。緑の党は、役員も候補者も必ず女性が過半数になるようにしています。日本の政治は、ジェンダーバランスが悪すぎます。率先して変えていきたいと考えています。
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