2013/5/20更新
報告・園 良太
2004年の「新宿フリーターメーデー」から、毎年5月初旬の新宿や渋谷で行われてきたデモは、早9年目を迎えた。「プレカリアート」「棄民」「雑民」と人称は変わっても、不安定な生を強いられた人々が繁華街のど真ん中で声を上げるインパクトと重要性は変わらない。
2013年のテーマは、「自由と生存のメーデー2013〜気をつけろ!雑民の敵がいる。」。5月4日にサウンドデモ、集会、アフターパーティーが新宿で開催された。一参加者の視点から報告したい。
この数年来の「貧困問題」への関心の高まりに対し、呼びかけ文は「そろそろ結論が出たのではないか。『貧困』への焦燥と敵視に突き動かされた社会改造の合意が行きつく先については。そして、そのような合意に私たちが付き合う必要がないことについては」「そろそろ敵を名指そう」と言う。つまり、新自由主義と貧困への問題意識が1周し、自民党政権の生活保護削減と株式投資バブルが同時に猛威を振るう新たな棄民国家/社会と向き合え、という指摘だと思う。
それを集会のスターター・平井玄氏は、〈「2周目の新自由主義」を仕切るのは「1%」ではない。5%の厚い「超富裕層」である〉と言った。メーデーのチラシには「敵」を探すかのような目が描かれた。「敵」はさまざまな場所に居るのだ。
デモは13時に新宿アルタ前広場に集合し、元福島原発作業員のごぼうさんの支援協議会、名古屋メーデーから来た仲間、「2・9竪川弾圧」当該、竪川野宿者当該、三鷹の野宿者運動、平井玄さん等が発言した。そして、警察の妨害を阻止しながら参加者が車道に飛び出し、サウンドデモが賑やかに新宿の街へ出発した。無数の黒旗、日の丸を「敵」と示した旗、「DANCE IS NOT A CRIME」のバナーがはためく。
このメーデーは、本当に参加者の表現が多様だ。「極右新自由主義政権追放!」「公営住宅が足りない!」「原発労働者使い捨てやめろ」「三里塚」など、それだけ課題が多いからでもある。爆音と共に紀伊国屋前〜靖国通り〜歌舞伎町前を歩き、新宿西口からはごぼうさんがこれまでの思いをラップ開始!使い捨てへの抗議、街頭で無数の「G」(使い捨てられる不安定雇用労働者)たちへの呼びかけ、自分自身への葛藤から参加者への「お前も喋れよ!」の呼掛けが続いた。素晴らしいリリック(歌詞)だった。
またもう一人のDJが「安倍政権おかしいよな!うちらのためにはならないよな!」と力強くコールし、参加者が「うぉー!」と答える時間が続いた。そのわかりやすさに街の人たちも食いついていく。さらに甲州街道へ出ると、DJmixnoiseが王道ダンスミュージックを流しまくり、盛り上がりも最高潮だ。やはりサウンドデモは、いい。「♪生きていてよかった、そんな夜はどこだ?」というフレーズが最後に流れる。私たちはそれを確認するために毎年の自由と生存のメーデーに参加しているのではないか、と思った。(映像)
ゴール場所の緑道で皆が和やかに休憩した後、フリーター労組事務所で集会が始まった。平井氏は敵対線を引き直すことを改めて提案し、「敵」は「階級」という答えを出している、「右も左もない」といった国民主義イデオロギーがそれを隠していくのだ、と指摘した。それを受け、「敵」は大きなものだけでなく、「正規/非正規」の中にもある程度存在する、という意見が出た。
また会場からは、派遣社員の使い捨てが極まった状況への怒りが語られ、「アベノミクス」への批判も相次いだ。「しゃかりきになって働く人々は救ってあげる」ということだが、今の日本でそれをやるのは、《自分が壊れる》ということだ。何をやられても我慢して、心や体を壊しながら競争するのは自分にはもう無理だとハッキリ言うべきなのだ、という意見が出て、大きな共感を呼んでいた。
最後は新宿「カフェ・ラバンデリア」に移動してのアフターパーティー。デモのDJ陣が歌い、曲をかけ、お互いの存在を喜び合った。最後は猫耳をつけてみんな大はしゃぎし、久々に来た多忙な仲間が「やっぱり自由と生存のメーデーは解放的で良い!」と心から喜んでいた。
問題は何も終わっていない。だが私たちが街頭に出て、叫び、討論する空間さえあれば、いつでも状況を変えていくことはできるのだ。
HOME┃社会┃原発問題┃反貧困┃編集一言┃政治┃海外┃情報┃投書┃コラム┃サイトについて┃リンク┃過去記事