2013/4/22更新
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン 天笠 啓祐
安倍政権が、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に参加することを表明した。これまでも、グローバル化は海外の安価な原料や製品の流入を加速してきた。いまスーパーなどに行き、食品売り場を歩くと、一見国産に思える加工食品でも、その原料のほとんどに輸入食材が用いられている。野菜はアジア、穀物は米国、食品添加物は中国産が多い。
輸入穀物や野菜は、長距離輸送の際に起きるカビや腐敗などを防ぐため、農薬を多量に用いることを当たり前にしている。食品添加物も輸入ものが増大しているが、特に増えているのが中国産添加物で、不純物が多く安全性に懸念が生じている。さらには、北南米産の穀物では遺伝子組み換え作物が増え続け、いまや日本人は世界で最も遺伝子組み換え食品を食べていると見られている。
進行するグローバル化の象徴が、遺伝子組み換え(GM)作物である。TPPによって、GM作物を用いた多国籍企業による食料支配がさらに進み、日本の農業は破壊され、私たちの食卓の危険性が増幅される危険性が強まることは確実である。
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によると、2012年におけるGM作物の作付け実績は1億7030万haになり、世界の農地の10%を超えた。その大半が米国モンサント社の種子を使用しており、種子の独占化が進み、多国籍農薬企業による食料支配が強まっている状況が示されたといえる。
現在、世界で販売されている種子の約60%が、わずか4社の多国籍農薬企業が支配する、寡占化が起きている(2009年)。トップ企業モンサント社に続く米国デュポン社、スイスのシンジェンタ社、独バイエル社の4社である。この4社によって世界で使用される農薬の3分の2が製造されている。種子を支配し、農薬を売り込み、食料を支配するためのGM作物開発であることが、いっそう明瞭になってきたといえる。それを後押ししているのが、米国の食料戦略であり、その有力な武器が貿易自由化圧力である。
日本の農業は、TPPによってコメの生産が破壊され、農業が支えてきた日本の原風景も無惨な姿に変えられることは必至である。その上、食卓も世界中からやってくるGM食品によって支配されてしまう。
米国政府通商代表部による2011年度年次報告は、米国が食料輸出を押し進める際の最大の障壁が他国の食品表示制度にある、と指摘している。日本がTPP交渉に参加すれば、GM食品表示制度の撤廃圧力が強まることは必至である。
この2月に、米国とEUの間で自由貿易協定締結に向けて交渉が始まることが伝えられた。この交渉での最大のテーマがGM作物にある、と米国の交渉担当者が述べている。EUの食品表示制度がGM食品の流通を阻み、米国農産物の輸出を妨げている。それを緩和あるいは撤廃させるよう米国が主張するのは必至であり、交渉の行方が注目される。
韓国の環境農業団体連合会顧問弁護士のソン・ギホさんは、3月初めに来日され、韓米FTAで何が起きたかを報告された。その際「聖域として設定されたものには期限があり、必ずすぐに聖域ではなくなることが約束されます。しかも、聖域を求めれば必ず代償が求められます。その際、少しでも譲れば、さらにつけ込んでくるのが米国の戦法です」と述べた。米国のしたたかな戦法によって、日本政府が翻弄されることは目に見えている。
食品の安全審査や環境影響評価に対する介入も起きることは、必至である。米国は日本政府に対して、GM食品の安全性評価や生物多様性への影響評価の簡素化を求めてくることは確実である。すでに牛肉に関しては輸入条件が緩和され、BSE対策がほとんど行われていない米国産牛肉の大量流入が始まり、日本での全頭検査も崩壊寸前となった。
食品添加物に関しては、米国で承認されているものが、次々と日本で承認されている。これまで米国で承認されて日本では承認されていないものが多く、加工食品が日本に輸出できないものが多いからである。農薬の残留基準もまた、厳しい日本の基準を緩和して、緩やかな米国の基準に合わせることが求められている。遺伝子組み換え作物に用いられる除草剤ラウンドアップの残留基準は、米国で100ppm、日本では20ppmである。
さらに、成長ホルモン剤や抗生物質の使用、放射線照射食品の容認、GM動物食品の容認といった圧力などが加わることも必至である。TPP交渉が始まれば、食の自給や安全が脅かされ、環境が悪化するだけでなく、米国産や遺伝子組み換えの表示もなくなるため、消費者は知ることも、選ぶこともできない状況に追い込まれていく。TPP交渉参加は、日本という国の形を大きく変えるだけでなく、私たちの暮らしも、環境も、食生活も激変させる。
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