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2013/4/11更新

チュニス 世界社会フォーラム 3/26-30
アラブの春−オキュパイ運動で 「もう一つの世界」へ  

ATTAC京都 春日 匠

3月26日から30日の日程で行われた世界社会フォーラム(2013チュニス)は、全日程を盛況のうちに終了した。チュニジアは、人口一千万人ほどで、これまで世界社会フォーラムが行われた7カ国の中でもっとも小さいが、それでも120を超える国と地域から5万人以上(うち8割がチュニジア国内から)が参加し、大小合わせて千を超えるワークショップが開かれた。

今回の開催地にチュニジアが選ばれたのは、もちろん2010年末から翌年にかけて同国で勃発した「ジャスミン革命」と呼ばれる政変ゆえである。この革命で、20年を超える長期政権を維持してきた独裁者ベン・アリは、亡命に追い込まれた。また、これをきっかけに、政治変革の要求はアラブ世界全体に波及し、エジプトなどでも同様の革命を引き起こしたほか、従来「保守的」というイメージを抱かれてきたアラブ社会の若者が民主化要求に動いたことは、先進国の若者を刺激し、スペインのインディグナドス(怒れる者達)運動や米国の「オキュパイ・ウォール街」運動として波及した。

しかしその後、チュニジアやエジプトで普通選挙が行われると、若者が支持する左派・世俗主義政党は組織基盤の弱さから票を伸ばせず、イスラム主義政党が勝利を収めるという結果になった。そういった経緯もあり、こういった新しい潮流との連帯を示すため、全世界から社会運動がチュニジアに参集することになったわけである。

TPP

グローバル企業の世界支配を許さない

パブリックシチズン
ロリ・ウォラック

TPPについて、米国の独立系メディア「デモクラシー・ナウ」が、パブリックシチズンへのインタビューを放映した。TPPの核心をつく内容なので、要約を掲載する。(文責・編集部)

TPPは、表向きは「貿易協定」ですが、実質は企業による世界統治です。加盟国には例外なく全ての規定が適用され、国内の法も規制も行政手続きも、TPPに合わせなければなりません。全26章のうち貿易関連は2章のみ。他はみな、企業に多大な特権を与え、各国政府の権限を奪うものです。

TPP投資条項によれば、外国の投資家がTPP条約を盾に米国政府に民事訴訟を起こし、国内規制が原因で生じた損害の賠償を請求できるのです。米国の企業はみな同じ規制を守っているのに、これでは国庫の略奪です。

極秘に進行するTPP交渉には、議会も不満を申し立てています。約600人の企業顧問はTPP情報にアクセスできるのに、米国の議員はできないのです。TPPは、内容がひどいだけでなく、「1%」が私たちの生存権を奪う武器です。

実に見事な「トロイの木馬」です。通りのいい看板の裏に表に出せない内容を仕込む、製薬大手の特許権を拡大する条項も入手しました。医薬品価格を急騰させます。

しかし、TPPはいわばドラキュラです。陽に当てれば退治できる。米国や全ての交渉国で市民の反対運動が起きます。企業権利の世界的な強制なんて、私たちは許さない。

TPPの狙いは、貿易ではなく、セメントのような作用です。一度固まったらおしまい。全員が同意しないと変更できない。

リーク草案が示唆するのは、司法の二重構造です。企業は国内法や司法制度とは別だての司法制度を持ち、企業お抱え弁護士たちが、いんちき国際法廷に加盟国の政府を引きずり出し、政府に無制限の賠償を命じるのです。

NAFTAにも似た制度があり、有害物質規制や都市区画法の補償として、3億5千万ドルが企業に支払われました。こういう悪だくみは、明るみに出せば阻止できます。

オキュパイ運動への反撃

リークが重要な意味をもつのは、これが最後の交渉になる恐れがあるからです。NAFTA以来、大企業は貿易協定を姑息に使って、規制を押さえ込み、底辺への競争を煽りました。交渉のたびに規制が緩和され、企業の権限は拡大しました。今回がとどめです。

いったん固まれば、門戸を開き、広く参加国を募ります。TPPは、強制力のある世界統治体制に発展する恐れがあります。世界的なオキュパイ運動への、企業側の反撃です。

さらに、交渉のゆくえによっては、既存の国内法が改変され進歩的な良法が無くなるばかりか、新法の制定さえもできなくなります。NAFTAと同じく企業の海外移転をうながす特権があり、新たな特権も付与されます。医薬品や種子の独占権が強化され、医薬品価格つり上げのため、後発医薬品を阻止する案まであります。

各国の金融規制も緩和させられ、高リスク金融商品も禁止できません。TPPは、地方財政にまで干渉します。全国で搾取労働の撤廃や生活賃金を求める運動が広がる中で、TPPは地域産業の優先を禁じます。地産地消や国産品愛好は許されないのです。環境や人権に配慮する商品も、提訴されかねません。TPPは、企業に凄まじい権力を与えます。

どの国の人々も、こんなものは御免です。過激な条項を推進するのは、米国政府です。だから、陽の目にさらして分析することが重要です。

今年2月には世俗主義左派政党である民主愛国党の党首ショクリ・ベライドが暗殺され、穏健イスラム主義政党である与党アンナハダと左派の対立は深刻化していると伝えられていただけに、チュニジアに行くまでは緊張感のある社会情勢を予想していたが、実際は(少なくとも表面上は)チュニスの街の人々は極めて穏やかに日々を過ごしているように見えた。

もちろん、イスラム風に髪を隠した女性もいるが、多くの若い女性はパリのそれとあまりかわらないファッションを愛用しているように見えるし、それがとがめ立てられるような様子は見られない。社会フォーラム参加者たちも、市民からおおむね好意的に迎え入れられたようである。

「アラブの春」のその後

今回の社会フォーラムはチュニス大学のキャンパスを利用して行われていたが、大学は会場の提供のみでなく、学生にヴォランティア等での積極的な参加を呼びかけたり、校内のインターネット設備などを無償で解放するなど、極めて好意的であったようである。

また、穏健イスラム政党を中心とした与党も、社会フォーラムそのものの開催には好意的であったようで、デモの警備等だけでなく、機材の提供などの形で協力があったという。

実際、チュニジアとエジプトの両方の国からの参加者に革命後の動向を聞いてみると、両国のおかれている状況はだいぶ対照的であるようで、チュニジアの若者たちは「革命後、我々は政治的自由を享受している。たしかに治安や経済情勢は悪化したが、それは自由の使い方にまだ慣れていないということであって、時間が解決してくれるだろう」といった感想を述べてくれ、現政府の民主制について、程度の差はあれ一定の評価をしているようである。

一方で、エジプトからの参加者は「牢屋の中の抑圧者と外の抑圧者」(ムスリム同胞団とムバラク政権関係者)が入れ替わっただけ、と厳しい評価を下し、エジプトの若者にとって革命はまだまだ継続中である、と述べた。

もちろん、両国とも政情は予断を許さないし、今後とも民主化運動と連帯、支援していく必要があるのは疑いを得ないが、少なくともチュニジアに関しては未来は明るいように思われる。

そういった背景もあり、初日のデモも極めてお祭り的な雰囲気の中で行われた。革命が行われたことを記念して名前が変えられた「1月14日広場」を出発し、暗殺された野党指導者の名や、「チュニジアは売り物ではない」という(社会フォーラムにつきものの)キャッチフレーズを口々に叫びながら、歩道も車道もなく(見物人も参加者も区別がつかず)繰り広げられる行進は、日本では不可能なことを考えれば、どちらの国の言論の自由が高いのか、といった疑問を抱かざるを得ない。隊列の中で目立っていたのは、パレスチナと、モロッコに実効支配される(アフリカのパレスチナと呼ばれる)西サハラの解放を叫ぶ人々であった。

また、労働組合やアラブ世界で深刻である女性の権利問題を掲げるグループ、そしてもちろん経済のグローバル化、第三世界債務、気候変動や環境問題に取り組むグループなども多く参加していた。これらの問題はもちろん、会場でさらにさまざまに議論されることになる。

近年の世界社会フォーラムは、ネットワーク化のための空間という面がさらに強化されていることも、特徴である。事前にワークショップを登録した後、他の団体の登録を見て、ワークショップを統合するための期間が設けられていたり、会期中テーマ毎に収斂集会とよばれる時間が設定され、世界同時行動などの調整が行えるようになっている。例えば「気候正義ネットワーク」と呼ばれるグループは、10月に世界同時行動を行う。

いくつかの重大な課題を残しつつも、世界社会フォーラムはその方法論を進化させつつ、アラブの春やオキュパイ運動との相乗効果の中で重要性を増している。日本からこの運動にどのように貢献できるか、考えていく必要があるだろう。

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