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2013/4/11更新

岩国から

とりあえず「様子見」に徹した本土初の低空飛行訓練

オスプレイ強行配備に全国から反対のうねりを!

「ピースリンク広島・呉・岩国」世話人 新田 秀樹

オスプレイ強行配備から5カ月、沖縄以外では初めてになるオスプレイの低空飛行訓練が行われた。配備にあたっての「環境レビュー」の公表も異例であったが、今回の低空飛行訓練に際して、2月28日に低空飛行訓練では初めて事前通告をしてきた。「3月6日から8日、3機が岩国基地を拠点に九州のイエロールートで行う」というものだ。

さらに前日になって、イエロールートから四国〜紀伊半島につながるオレンジルートへの変更も、通告してきた。理由は、イエロールート下にある陸上自衛隊の日出生台演習場で迫撃砲による実弾演習訓練を行う、というものだった。

このルートの変更が一体何を意味しているのか。さまざまな憶測が飛び交ったが、自衛隊の演習自体は相当以前から計画されていた可能性が高く、米軍機の低空飛行訓練が全く米軍の都合で行われていることを示すのだろう。米軍は訓練コース上の送電線などの障害物は事前に調査するという。しかし、演習もそうなのかも知れないが、山間部での工事資材搬入のヘリや、緊急出動の消防などのヘリなどには、これまで全く事前の情報は知らされず、事故の可能性も指摘され続けた。

今回の訓練で、私たちピースリンクは岩国基地の監視体制とコース上の監視体制を模索したが、十分ではなく、とりわけ四国での監視をできるネットワークは弱いのが現状だ。岩国基地の監視は、私たちと関係の深い「住民投票の成果を活かす岩国市民の会」を含む3団体で急きょ結成した「オスプレイの低空飛行訓練に反対する3・5市民の集い実行委員会」で行い、ピースリンクのメンバーも、3日間はりついた。

オスプレイ配備・訓練反対!全国キャラバン

本土で「オスプレイ」低空飛行訓練スタート
オレンジルート下自治体へ申し入れ行動

沖縄配備そのものへの批判を

「オスプレイが日本で訓練するのは、米国本土で低空飛行訓練をおこなうことができないから」─こう説明するのは「オスプレイ配備・訓練反対! 辺野古新基地建設やめろ! 全国キャラバン」(以下、キャラバン)隊の隊長である山城博治さん(沖縄平和運動センター事務局長)だ。

この3月からいよいよ、日本本土でのオスプレイ低空飛行訓練が始まった(前号「沖縄通信」参照)。全国でこのオスプレイ低空飛行に対する反対運動が取り組まれている。その中で「沖縄意見広告運動」はキャラバン運動に取り組み、オスプレイの低空飛行訓練がおこなわれる県への申し入れや、様々な集会をおこなっている。

3月25〜26日に、オスプレイ低空飛行訓練の「オレンジルート」(四国〜和歌山)下にある四国3県(愛媛・高知・徳島)と和歌山へのキャラバン隊に同行することができたので、その様子を報告する。(編集部・一ノ瀬)

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高速道路を走る車中からは、四国山地の山々が見える。折り重なる山々の風景は、水墨画を思わせる。千数百bを超える険しい山あり、そして吉野川やその両岸に広がる徳島平野あり─こうしたおだやかな四国の地で、なぜオスプレイの低空飛行訓練がおこなわれるのか?

オスプレイの特徴は、ヘリコプターの垂直離着陸・ホバリング・超低空での「地形追従飛行」ができる点と、固定翼機の航続距離・高速で移動できる点の「いいとこ取り」をしているところにある。

したがって、オスプレイは軍事行動において、レーダーに捕捉されないように飛ぶ地形追従飛行ができるように、あらゆる事態を想定してパイロットを訓練しておく必要がある。複雑な地形・山岳地帯・寒冷地・空気の希薄な高度…オスプレイの訓練ルートをこうした視点から見てみると、こうした条件に合うところが選ばれていることがわかる。「沖縄の高江や金武で、オスプレイは木の高さスレスレで飛んでいます。こうした危険極まりない低空飛行が、今後本土でも繰り返されるのです」(前出・山城さん)。

米国本土でも、オスプレイは配備されているが、住民の同意を得られず訓練をおこなうことができない。昨年夏には、ニューメキシコ州、ハワイの基地で計画されていたオスプレイ飛行訓練が、住民の反対を受け、「遺跡保護」のために中止になっている。

米国にとって、そうした配慮をする必要がない日本は、実に魅力的な訓練場所なのだ。

米国にもの言わぬ日本政府

「オレンジルート」では、1994年と99年に米軍機が墜落事故を起こしている。今回の訓練では、愛媛県西条市で窓ガラスが揺れたという報告があり、同県の職員が69デジベルの騒音を記録した。中四国防衛局は、オスプレイが岩国基地を離着陸するたびに関係県庁に電話連絡をしたが、「訓練に関する情報はない」というのみだった。

キャラバン隊の申し入れ行動での意見交換では、県側は「住民の安全を守る観点から、事前の連絡を含め、国からの迅速な情報の提供を求めていきたい」との考えを明らかにしていた。事前通告もなしに、我が物顔で日本各地を低空飛行するオスプレイ。そして、「一番信じられないのは、そうしたアメリカに対し日本政府がものを言わないこと」(前出・山城さん)。

キャラバン隊は各県への申し入れで「低空飛行訓練があるのも、沖縄にオスプレイが配備されているため。ぜひ、沖縄のオスプレイ配備そのものへの反対の声を上げてほしい」と要望した。全国キャラバンは、今後も全国のルートを回る予定だ。

「今後は、さらに多くのオスプレイが配備されていくでしょう。私たちは堂々と声を上げて、大きな『オスプレイ反対』の声を上げていきましょう!」(山城さん)。

沖縄意見広告運動/電話・03─6382─6537 FAX・03─6382─6538

今回の低空飛行訓練の概要は、6日13時10分頃普天間基地を飛び立ち、オレンジルートで低空飛行訓練をし、15時50分頃岩国基地に着陸した。2日目の7日は、19時頃から30分間、基地内で着陸や旋回などの訓練をし、約40分後にオレンジルートで夜間訓練をして帰った、という。最終日の8日は、13時10分頃岩国基地を飛び立って、15時20分頃普天間基地に帰った。実質的な訓練は、昼夜1回の2回だけである。

今回の訓練自体、これまでの戦闘機などの低空飛行訓練を見れば、「低空飛行訓練」とは言えないレベルで、ヘリをチャーターしたNHKの映像を見ても、高度を落としたと言ってもかなり高い所を飛んでいるように見える。訓練時間にしても極めて限定的で、実績作りのために行ったと言える。環境レビューでは、岩国基地とキャンプ富士を拠点に年間330回行うとしており、その地ならしの可能性が高い。

かなり気を使い、様子見に終始している今回のオスプレイの本土での訓練開始だが、沖縄での訓練の様子はあまりにも違いすぎる。「可能な限り」とした日米合意は配備された10月1日から反故にされ、配備後2カ月間の沖縄県の目視調査でも、517件中318件の合意違反飛行が確認されている。

日本政府にしても、米軍側の発表の鵜呑みに終始し「合意は守られている」と答えるありさまだ。配備にあたって「米国政府に配備計画の修正を求める立場にない」という態度に終始しており、主権国家とは言えない状況を一方で沖縄に押し付けている。

日米地位協定で日本の法に縛られない米軍

そもそも、オスプレイ配備にあたって、米国内でも反対の声は根強い。低空飛行訓練に対しても猛烈な反対運動で、延期を余儀なくされている現状だ。しかし、自由に訓練ができるのが日本、というわけだ。

現在も、日本列島全体に広がる8つの低空飛行訓練コースや訓練エリアでは、戦闘機などによる激しい低空飛行訓練が行われている。それは、訓練下で生活している人々のことを顧みず、しかも民間施設を含めた建物を攻撃目標として行われている。

今、全国の低空飛行訓練に苦しむ住民から悲痛な訴えが出ている。オスプレイ強行配備を機に、沖縄の叫びと低空飛行に苦しむ住民の訴え、いずれも「日米安保」の犠牲を強いられている声を集約し、運動につなげていかなければならないと思う。各地からあげられる「オスプレイ配備と低空飛行訓練中止を求める議会決議」、そして沖縄以外からも「日米地位協定改定を求める決議」も出てきている。

今、ピースリンクをはじめさまざまな人々が集まり、「オスプレイ配備と米軍機低空飛行訓練を許さない市民ネットワーク」を作ろうと動き出した。国際平和都市を名乗るヒロシマ、しかしその実態は周りを軍事施設に囲まれ、その理想とは程遠い。とりわけ40キロも離れていない岩国基地は、現状の海兵隊航空基地の機能に加え、米海軍の原子力空母ジョージワシントンの艦載機移駐先になろうとしており、オスプレイ低空飛行訓練の拠点と相まって、沖合埋立で1・4倍に拡張した基地は、極東最大の軍事基地になろうとしている。

この岩国基地を起点に広島、島根、岡山などに広がる低空飛行訓練コースのブラウンルートとエリア567と呼ばれる訓練空域を結ぶ運動として、活かしていきたい。低空飛行で深刻な影響が出ている広島県三次市で、5月12日に結成集会を行うことを決めた。市民ネットワークの呼びかけに保守、革新問わず反応が来ている。それだけこの問題が地域では深刻な問題になっているからだ。

日米地位協定があるから、他国の地でも日本の法律に縛られることなく自由に訓練を行い、訓練に伴う損害は日本政府が補償している現状の中、その大半の負担を担う沖縄の反対運動に連帯し、終わらない戦後、米軍支配に全国から反基地、反安保に闘いを巻き起こそう。(連絡先・広島市中区大手町4─3─10広島YWCA気付)

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