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2013/4/6更新

TPP

新自由主義に反対する国際ネットワーク  パブリックシチズンがTPP秘密条項をリーク

グローバル企業による世界統治

「グローバル企業による世界統治」といえば大仰に聞こえるだろうが、パブリック・シチズンがリークした資料によると、@「ISD条項」と呼ばれる「投資家対国家間仲裁裁判所」を通じてグローバル企業の利益が保護され、A強制力を持って資本や企業の利益追求が保障されようとしている、ことがわかる。これらを通してTPPは、外国投資家に国内企業よりも幅広い特権を認めさせるのである。秘密主義で進められている「通商」交渉がいかに危険であるかがわかる。ISD条項についてみてみる。

ISD条項とは、「投資家対国家間の紛争解決条項」(Investor State Dispute Settlement)の略語。自由貿易協定(FTA)を結んだ国同士において、企業が政府に賠償を求める紛争の方法を定めた条項で、NAFTA(北米自由貿易協定)で導入。米韓FTAにも導入されている。

裁判所にあたる「国際投資紛争解決センター」は、世界銀行の傘下にあるが、問題なのは、まず@裁判官を、投資家を擁護し政府を訴える企業弁護士が担っている点だ。民間企業を代表して国家を訴える弁護士が「裁判官」の役を交代で務め、「裁判官」と企業弁護士を行き来するという「資本家の資本家による資本家のための裁判所」なのだ。訴訟を開始する企業は、裁判の場所を選択し、名簿のなかから裁判官を1名選出する。訴訟を受けた国家がもう1名を選出し、その2名で残りの1名を選出することになるという。

外国企業は、投資先である国内の裁判所や法律を迂回し、この国際的な仲裁裁判所にTPP加盟国を直接訴えることができるツートラック・ システムとなっているため、国内企業に優る特権と言える。グローバル企業と投資家は、ISD条項によって金銭的賠償を当該国の政府予算からぶんどることができるのである。NAFTA下で以下の事例が報告されている。

実例1

カナダ政府は、当時カナダの国内法では使用禁止されていなかった有害物質MMT含有の石油の輸入を禁止した。しかし、有害性が立証されていなかったので、これは輸入規制だとして、カナダに輸出したアメリカの石油会社・エチル社が、カナダ政府を訴えた。

カナダ政府が有罪となったが、上告できないため、@有害物質を規制する法律の撤 廃、A推定1000万ドルの賠償の支払い、が行われた。

実例2

アメリカの廃棄物会社メタルクラッド社は、メキシコの廃棄物会社から廃棄物処理の権利を買い取った。その後、メキシコが地下水汚染を防ぐためとして、設置許可を取り消したため、損害賠償を求める紛争となった。裁定では、埋め立て許可の取り消しが投資家に損をさせたと判断されたため、メキシコ政府は1670万ドルを支払ったのである。

この国際裁判所には市民に対する説明責任がなく、司法倫理基準や上告手段が欠如している点も問題だ。透明性・公正さ・独立性がなく、グローバル企業が主権国家に圧力をかけ、国庫から賠償金を奪い取る武器となる。

「期待」に対する賠償支払い

ISD条項は、外国企業が建てた工場などに対し、当該国政府が急に政策や法律を変えて没収(国有化)する場合(直接的収容)などを想定し、企業が政府に賠償金を求めることができるとしていた。ところがリークされたTPP資料では、投資家に「間接的」収用への補償請求権を与えている。間接的収用とは、投資価値を減少させるような規制やその他の政府の行為を意味するという。「公衆衛生、安全、環境、不動産価格の安定(たとえば、低所得世帯のために住宅事情を改善しよう とする処置を通じたもの)など、公共福祉の保護のために政府が立案・施行した非差別的規制行為」すら、ある状況のなかで間接的収用になりうる、という文言が含まれている。

さらに、間接的収用に対する補償を請求する権利として、国内で活動しているすべての企業が満たさなければならない規制を守るための費用(浄化装置や安全装置)を、外国投資家が政府に要求できる、という規定もあるのだから驚きだ。外国投資家の「期待」を損なう場合も賠償請求できるとされ、新たな環境保全の法律に対して、損害を請求する権利を含むという。

企業有利のISD条項で、新たな規制や法律に投資家が異議を申し立てる機会が多くなると、政府は異議申し立てや訴訟を恐れて、労働権や環境を守る規制強化に及び腰になることも考えられる。ISD条項とは、「各国が自国民の安全、健康、福祉、環境を、自分たちの国の基準で決められなくする『治外法権』規定」と批判する識者は多い。

そもそも、経済の国境をなくす「経済のグローバル化」は、100b競走で金メダリストと幼稚園児を同じトラックで走らせるというものだ。金メダリストとは、巨大な多国籍企業であり、幼稚園児とは、地域に根ざす中小零細企業だ。勝負は、最初からわかっている。強いものが勝って、弱い者は淘汰される。企業格差の拡大と中小企業の倒産を招くことは明らかだ。

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