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2013/3/23更新

命をないがしろにする者たちへ私たちの真っ直ぐな怒りを向けよう

武藤類子さん(福島原発告訴団・団長)のアピール

武藤類子さんは「関西2万人行動」で福島の現状を訴えた。(文責・編集部)

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福島は、雪解けとともに、雪で遮蔽されていた放射線が徐々に上昇しています。春先の強い風に放射性物質が舞う季節でもあります。2重生活が立ちゆかなくなり、避難先から福島へ戻る人も多くいます。

爆発した4つの原子炉からは、今も毎日2億4千万Bqの放射性物質が空気中に放出されています。海に出た放射能の量は、誰にもわかりません。福島原発専用港で捕獲されたアイナメから、51万Bqのセシウムが検出されました。

原子炉を冷却する水は、濾過されて大きなタンクに溜められますが、あと2年でタンクは満杯になるそうです。東京電力は、ストロンチウムを濾過した後、水で希釈して海に流そうとしています。

4号機の燃料プールは、もし大きな余震で崩れ落ちたら北半球が大惨事になるかも知れないのですが、今年11月に、ようやく取り出し作業が始まります。しかし、地上50b以上の高所作業の安全性は確保されているのか。作業員の被曝はどれぐらいなのか。誰もが不安に思っています。

原発内で被曝しながら働く作業員の6割以上は福島県民で、事故で職を失った人々も多く含まれています。危険手当のピンハネなど待遇の劣悪さが問題となっています。

また、被曝を伴う除染作業が、十分な防護策もないままに低賃金で強いられています。最近、16歳の少年が除染作業員に混じっていたこともわかりました。莫大な税金が投入される除染は、効果が期待できないばかりか、除染によって出た放射性のゴミは、袋詰にされてあちこちに積み上げられています。

健康被害を無視して「安全な原発」推進に走り出した日本

最近、18歳未満の子どもたちの甲状腺検査(2011年度)の結果が、ようやく公表されました。約3万8千人の内、「悪性」と診断された子どもが10人いました。うち3名がガンと確定されました。福島県立医大副学長の山下俊一氏らは、この結果について「エコーなど医療機器の発達により発見が進んでいる」との見解を発表。科学検査室などの検査結果でも、「嚢庖や結石の出現率は同じ、むしろ他県の方が多い」と発表し、「原発事故との関連がない」と結論づけています。

でも、そんなに簡単に結論づけていいのでしょうか?  健康被害の実情は、「まだ解らない」のが現実でしょう。私たちは、子どもたちの健康被害を心から心配しています。昨年6月に「子ども被災者支援法」が成立しました。被害者救済の方向性と内容が問われる重要な法律ですが、具体的な中身は全く決まっていません。この法律が被害者救済法としてしっかり機能することを、切に望んでいます。皆さんも、子ども被災者支援法への関心を持っていただきたいと思います。

福島の中では、8000Bq以上の稲わら・牧草などの農林関係の廃棄物の焼却実験炉が密かに作られようとしていたり、除染で伐採された木材を使った木質バイオマス発電所が作られようとしています。

放射性物質を焼却する安全性は一体どうなのか?  奇跡的に残っている、比較的線量が低く安全な地にこのような施設が建てられることに、大きな疑問を感じています。

被曝隠しのIAEAがやってくる

昨年12月、郡山市においてIAEAと日本政府の共催で、加盟国100カ国以上が 参加する国際閣僚会議が行われました。その中では、大半の国がIAEAの基準の下に新しい「安全な原発」を推進していくそうです。「被災地福島県は安全」と宣伝され、原子力産業の巻き返しを印象づけたこの国際会議に、非常な違和感と不安を覚えました。

そして福島県は、190億円という莫大な予算を投じて、県内2カ所に「環境創造センター」を設立しました。除染・廃棄物処理、さらには放射線に対する教育、広報についての研究をすると謳っています。

また、IAEAが福島県に常駐するといわれています。チェルノブイリ原発事故後、WHOと協定を結んで、チェルノブイリ原発事故の健康被害の実態情報を外に出させず、研究をさせない役割をしてきたIAEAが福島に来ることに対して、とても危機感を感じています。

一番の問題は「人々の分断」

そして一番の問題は、意図的に、あるいは無意識に行われる人々の分断です。賠償範囲の線引き、新たなる放射能安全神話の流布、等々の中で人々は、さらに引き裂かれ、または互いを気遣ってものが言えなくなる状況があります。私たちが抱える問題は複雑化し、細分化されています。

私たちの怒りと悲しみは消えることはありませんが、この2年間、ただ怒りに身を任せてきたわけではありません。

調べ、学び、自分を顧み、助け合い、声をあげてきました。怒りの表現はさまざまですが、困難を極める中で、私たちは今、冷静さと明晰さを併せ持つ怒りが必要だと思います。

たきびの火は、最初に薪の表面を燃やす炎はとても深い赤で、炎は激しく動きまわります。やがて燠ができると、静かなトロトロとした炎になり、明るい朱色になります。そして、最も高熱を発する時には、光の玉を描くように白い炎となります。深く美しい成熟した火をそこに見ます。

怒りもまた、成熟したものは、新しい世界に向け、何かを変えていこうとする深く美しい怒りとなるのではないでしょうか。生きる尊厳を奪う者、そして命をないがしろにする者に、私たちは真っ直ぐにその怒りを向けていきましょう。もしかしたら、それを自分自身の中にも見つけざるを得ないことがあるかもしれません。

最後に、嬉しいニュースをひとつお伝えします。昨年始めた、福島原発事故の責任を糺す告訴運動が、第1次で1300人余り、全国第2次告訴で14000人を越え、今年1月から始めた「厳正な捜査と起訴を求める緊急署名」は、わずか2カ月で10万筆を突破しました。

1人の手から10人の手に、そしてさらに10人の手に、つながりがどんどんと横に拡がる実感があります。一人ひとりが自分を磨きつつ手をつなぎ、共に歩んでまいりましょう。

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