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2013/1/28更新

中国 尖閣諸島問題

反日暴動を乗り越える日本語学科学生、老師の言葉

政治屋が作った分断越える民の底力を

在中国江西省日本語教師 田中 弘美

思えば昨年は、「日中国交正常化40周年」の節目だったのだ。40年は短くない。柿の木は8年で結実するという。樹木が成長し、立派な枝葉を繁らすのに、40年は十分な年月だ。日本と中国は、この40年で、たった一本の木すらまともに育てられなかったのだろうか。昨年9月後半、尖閣諸島(釣魚島)国有化を契機に中国全土を覆った反日暴動の際、私は南昌市郊外の宿舎で、独り暗澹たる思いに心が塞いだ。

反日暴動そのものの思慮分別のなさにも腹が立った。しかしそれ以上に、そもそもこの反日の嵐の発端を作った日本の政治家たちには、形容できないほどの憤りを覚えた。

1972年の国交正常化以降、多くの日本人が中国に渡り、「友好親善」「互恵平等」「相互信頼」を掲げ、長い時をかけて地道に経済的、文化的交流の地歩を固めてきた。その骨を折ってきた日本人たちが、突然、往来で日本語での会話ができなくなり、ラーメンの汁をかけられたり、蹴られたりしているときに、この 騒ぎの張本人・石原慎太郎は、安全な日本国内で、「政府に吠え面かかせてやった」とほくそ笑んでいたのだ。

彼の関心事に、国民の利益など全くない。中国と友好関係を築くため現地で額に汗して働く日本人の存在が脳裏に一瞬でも浮かんだなら、「尖閣買い上げ」など言えるはずがない。政治家であるはずの石原の思考には、国際的平和外交という超基本的な方法論がなく、自国民の安全確保にすら全く関心を示さない。一国の政治外交を自分のおもちゃにする我がままで幼すぎる人間の行いによって、日本と日本人は多大な損失を被った。この損失は大きすぎる。

しかし、反日暴動によって不利益を被ったのは、日本人だけではない。それは大学・専門学校の日本語学科の中国人学生・教師、親日派の人々、ひいては両国の友好促進のために地道な活動を続けてきた全ての中国人を攻撃し、気持ちを確実に萎えさせるものだった。

私の勤務校の日本語学科の学生たちは、一部の中国人の乱暴狼藉を非難しつつも、内面では、「中国人としての愛国心」と「日本語を学ぶこと」をどう統一させるか悩み、途方に暮れた。老師(先生)方は私の身の安全確保に全力を挙げて取り組んでくださったが、日本贔屓でトヨタの車を持っているS老師は車庫に車を隠し、バス通勤に切り替えた。G老師は、「私はもう40歳近いです。いま職を失ったら、子どももいるし、どうやって生活したらいいか…」と呟いた。皆、元気がなかった。

出会えば友達

だが、3カ月経った今、私は日本の皆さんに伝えられることがある。その後の学生や職場の老師たちの言葉だ。

ようやく反日の嵐が収まった頃、学生たちに「9〜10月にかけての尖閣問題、および反日暴動について」思うことを書かせたところ、学生たちは「中日政府はしっかりと平和に話し合いをして、領土問題を解決してほしい。領土問題は解決不可能な問題ではない」「両国メディアは、相手国の悪い点ばかり報道する。もっと良い点を紹介するべきだ」「両国民ともに、政府やメディアの情報を鵜呑みにしてはならない

。ものごとを多面的に観なければ、真実は分からない」「中国人はもっと落ち着いて冷静になるべきだ」と書いていた。

最も多い意見は、「政治は政治。こんな時こそ民間の草の根交流が大切だ。国民同士が仲良くなれば、政治に良い影響を与えるだろう」「日本語学科の学生たちは、学んだ日本語を生かして、中日友好の懸け橋になれる。私たちは草の根友好の役に立てる」というものだった。

9月末、授業で声も出ないほど落ち込んでいた学生たちが、その2カ月後にこれを書いたのだ。周囲から「売国奴! 」「恥知らず! 」と罵られながら、「自分は何ができるか、何をしなければならないか? 」考える学生たちの姿が浮かぶ。G老師も、「『こんな時だからこそ、

日本語をきちんと学ぶべきだ』と学生に言っています。これは闘いです」と、きっぱり述べられた。こんな強い言葉を老師から聞くのは、初めてだった。

私たちに何ができるだろう。私も学生たちと同じことを思っている。こんな時だからこそ、民の底力が必要なのだ。私たちは、政治家によって作られた互いの国(国民)に対する敵意に組み込まれないようにしたい。

「イチャリバテョーデー」…出会えば友達である。簡単に言うと、日本人1人と中国人1人が友達になる。それをみんながすればいいのだ。人民新聞読者の皆さんが具体的に行動することを、心から願う。末尾に私のささやかな取り組みを添える。応えてくださったらありがたい。

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