2013/1/1更新
前号でお報らせしたように、放射能がれき拡散に反対している活動家を大量不当逮捕した大阪府警への抗議が拡がっている。大阪府警は、12月9日、JR大阪駅での放射能がれき拡散反対の街頭宣伝(10月17日)を「鉄道法違反・威力業務妨害・不退去」として下地真樹さん(阪南大準教授)ら3名を令状逮捕した。これによって、放射能がれき問題での逮捕者は8名(1人は再逮捕)となった。
13日には、これら8名の即時釈放と謝罪を求め「放射能拡散に反対する市民を支援する会」が結成され、16日・22日に記者会見が行われた。
同会は、小出裕章(京大原子炉研助教)さんら100名以上の研究者が呼びかけ人となり、即時釈放を求める署名活動を12月13日から始めたが、スタートから1週間で8000筆を越えている。
また、逮捕された下地真樹(阪南大学准教授)さんが教鞭を執る大学当局に対しては、@今回の逮捕を理由にした処分をしないよう申し入れ、A不当逮捕に抗議し下地 さんへの支援を求める「嘆願書」(56名の研究者が賛同)を、学長・副学長に手渡した。
12月17日には、若手憲法学者を中心に70名が連名で「JR大阪駅頭における宣伝活動に対する威力業務妨害罪等の適用に抗議する憲法研究者声明」を発表した。
同声明は、今回の逮捕が「憲法上強く保障された表現の自由を不当に侵害し、市民の表現活動を幅広く規制対象にする結果をもたらすものであって、憲法上許容されない」、「下地氏らの政治的主張を狙い撃ちにしたのではないかという懸念を感じる」としたうえで、逮捕に強く抗議し、即時釈放を求めている。
22日の記者会見で、石埼学(龍谷大学教授)さんらは、@逮捕の必要性、A鉄道法違反の適応についても強い疑問を表明し、「大阪府警は運動弾圧の新たな手法として威力業務妨害罪適用を発明した。今、反撃しておかないと、全国化する」と警告した。
阪南大学教授・島浩二氏は、阪南大学当局が下地真樹准教授の逮捕について大阪府警から事前に通告を受けており、本人に知らせることもせず、研究室の家宅捜索も了解していたとして、強く批判している。
島教授らは、同僚の逮捕に対して20数名の同大学教職員によって「支援する会」を結成し、大学当局と交渉したが、その中で、次のことがわかったという。逮捕直前の12月6日に大阪府警公安3課の刑事2名と松原警察署の刑事が大学を訪問し、8日に下地准教授を逮捕(実際は9日に延期)し、10日に研究室を家宅捜索する旨を伝えた。これに対し大学は、同日夜に「危機管理対策本部」を立ち上げ、逮捕に備えたという。
明らかな犯罪行為・反社会的行為ならともかく、被疑内容も知ったうえで逮捕と研究室の家宅捜索を容認したとすれば、阪南大当局は大阪府警との共犯関係にあると言っても過言ではない。「大学自治」は完全に死語となっている。
12月18日、下地真樹氏の勾留理由開示公判が行われ、大阪地裁は10日間の勾留延長を決定した。この日開示された裁判所の見解は、検察側の主張そのもので、裁判所の存在理由そのものを疑わざるを得ないような劣化ぶりを示した。
比して下地氏の意見陳述は、事実に基づいた説得力ある主張で、なおかつ全身で不当逮捕への怒りを表現した迫力あるものだった。
この日裁判所には、90名ほどの支援者が詰めかけた。法廷に入りきれない傍聴希望者が外で待機していたため、下地氏は外にも聞こえるよう大声で陳述を行った。裁判長が制止する場面もあったが、「仲間と共にありたい」との下地氏の気持ちを抑えることはできなかった(陳述の書き起こし)。
逮捕は「がれき焼却反対」つぶし
橋下大阪市長は、岩手県からの震災がれきを受け入れる方針を示しており、11月には試験焼却と埋め立てを実施。来年2月からは、本格的な焼却と埋め立てを行う予定を立てている。同市長が主導しているがれき受け入れ方針に沿って、大阪府警が異常な運動弾圧を行っており、今回の一連の逮捕は、政治権力と警察権力の本質を露わにした行動といえる。これを全国化させないためにも、大阪府警と大阪地裁に即時釈放と謝罪を求める大行動が重要だ。
追記:12月29日、下地さんは解放された。その記録。2012/12/29 【大阪】下地真樹氏 釈放会見。その文字起こし。
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