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2013/1/1更新

東京都知事選を振り返る

政治への失望と高揚の間で「踊った18日間」

石原失政のツケを背負わされた都民の失望すら「味方」に付けた猪瀬

遙矢当 

猪瀬直樹知事の誕生、今はまだ、この意味が多くの都民には分かり得ないものです。まだ彼は「石原慎太郎の後継者」に過ぎない存在だからです。多くの都民にとって、新しい知事が猪瀬氏でなければならなかった積極的理由はなく、猪瀬氏は熱望された候補ではなかったのです。この3年半で民主党が作り出した政治に対する「失望感」と、毎週金曜日に官邸前で行われている脱原発の抗議行動に代表される政治への「高揚感」。この2つの悶々とした都民の感覚を象徴するのが猪瀬氏だったということでしょう。

この2つの感覚を如実に表した例として、12月8日、池袋東口での演説が印象的でした。目玉は、若手のオピニオンリーダーと目される東浩紀氏の応援演説でした。東氏は開口一番、マイクを手にこう言いました。「3・11以前は言葉だけの派手な(政治)テーマに踊らされてきた」と。

東氏の言う「派手」なテーマとは、東京オリンピックの招致、新銀行東京の救済、新宿歌舞伎町の浄化作戦、築地市場の移転、三宅島でのオートバイレース、米軍基地返還…。思えば枚挙にいとまがないこの数々のテーマこそ、猪瀬氏へ後継の指名をした石原前都知事の施策だったはずです。都民は、12年もの間、石原前知事のために「踊り続けた」のです。

今後厳しくなる猪瀬都政への評価

いや、踊り続けたかのように見える都民は、その失政を背負わされ、自ら「ゴルゴダの丘」を登る日々を送ってきたのかもしれません。

選挙戦で猪瀬氏が現出させ た都民の「高揚感」は、脱原発を軸としたエネルギー転換と、財政を中心とした都政再建という重要な2つのテーマを消去しました。18日間、都民は新たな議論を交わす余地を持たず、悶々とした感覚を消去することもなく投票所に向かったのだと思います。猪瀬氏は、そんな都民の悶々とした感覚を「消せる人」に魅せることが上手だったからこそ、都民の「失望感」すら味方に付けたのです。

ただし、猪瀬都政が4年間続くかどうかは不明です。同じく「高揚感」の現出が得意な橋下徹氏は、4年の知事職から逃げて、新たな「高揚感」を求めて市長選候補となりました。

今後、猪瀬都政に対する都民の評価は苛烈となるでしょう。相反する「失望感」を抱える都民が、石原知事の失政を許さないという逆説を突き付けるからです。その時は、4年を待たず次の都知事選を迎えるでしょう。

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