2012/11/7更新
10月1日、岩国からオスプレイが飛来し、4日からさっそく沖縄での飛行訓練を開始。基地周辺は勿論のこと、那覇市・浦添市の人口密集地上空を飛ぶ訓練を繰り返している。23日には夜間飛行訓練も開始した。沖縄県民は、いつ墜落するかわからない恐怖におびえると同時に、オスプレイの騒音に驚いている。そこに、米兵による集団女性暴行事件が起こった。沖縄県民は怒り心頭である。さらに県民を怒らせているのが、まるで「他人ごと」のような日本政府の無責任な対応である。(富田英司)
(関連:no ospray 沖縄県民大会事務局 2012年9月9日(日)に宜野湾海浜公園多目的ひろばで開催された「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」事務局の公式ブログ)
集団女性暴行致傷容疑で逮捕された米兵は、米海軍航空基地所属の上等水兵C・D・ブローニング容疑者(23)と同三等兵曹のS・A・ドージャーウォーカー容疑者(23)の2人。両容疑者は、補給業務を支援するため、14日から米軍嘉手納基地で従事し、16日にグァムに移動する予定だった。たまたま嘉手納基地内に部屋を確保することができなかったため、基地外のホテルに外泊していた。
2人は16日午前0時頃ホテルを出て、犯行現場近くの飲食店数件で飲酒し、コンビニで帰宅途中の20才代の女性におよそ知りえる日本語で声をかけたが、女性が無視して立ち去ると、女性のあとをつけて襲い、人目がない道路脇に引きずり込み犯行に及んだ。被害女性は、首を絞められ全治3日程度のけがを負った。
事件後、女性の知人が素早く警察に通報し、捜査員が現場周辺の宿泊施設を徹底的に捜査し、事件発覚から3時間後に1人目の容疑者をホテルで発見し、緊急逮捕した。
2人はこの日の午前9時にはグァムに行く予定だったので、スピード捜査ができず、2人が嘉手納基地から出発してしまっていたら、逃げ得になってしまっただろう。また、市街地のホテルではなく、嘉手納基地内に宿泊していたら、沖縄県警は米軍基地に入ることができないため、捜査も逮捕もできなかった。米軍基地は、「日米安保条約」と「地位協定」によって『治外法権』として存在し続けており、それを知って犯罪に走る米兵が後を絶たない。
だからこそ、沖縄からは「地位協定の改定」要求がくり返し出されているのである。
沖縄に来る米軍兵士の意識について、元海兵隊員であったダグラス・スミス氏は次のように述べている。「海兵隊は第2次大戦で日本と激しく戦い、『沖縄は戦利品』という意識を持っている。その意識は現在も消えたわけではない。最近の沖縄基地では、司令部は一生懸命、兵士らに基地外で問題を起こさないように教育していると思う。だが、今回の容疑者は、そのような教育を受けていない。『戦利品』である沖縄ではルールを守る必要がないという米軍文化のイメージが働いたのだろう」
今回の事件を受け、米政府は素早く「在日全米軍兵士の深夜外出禁止」を打ち出した。全軍人への外出禁止は初めて。夜間外出禁止は10月19日に発 効し、午後11時から午前5時まで。対象者は約4万人。さらに23日、在日米海軍司令官のダン・クロイド少将が、沖縄県や嘉手納飛行場周辺3市町の首長などに謝罪した。このように素早く再発防止策を打ち出したのは、オスプレイへの抗議行動が激しさを増しており、米国にとって最悪のタイミングだったからだ。
しかし、沖縄県民からは「事件が起こった直後は再発防止に取り組むが、『喉元過ぎれば』で、今回も期待できない」「沖縄は日本でない感じだ。知事は、日本政府ではなく、オバマ大統領に直接訴えた方がいい」等々、実効性への疑問が噴出しており、「日米地位協定の改定」を強く求める意見が多い。
それにしても情けないのが日本政府だ。こんな大事件が起こったのに、森本防衛大臣は「現時点で日米地位協定を改定する考えは政府内にはない」と語り、官房長官も「運用の問題だ」と言っている。
これまで沖縄で起こった米兵の事件・事故を考えれば、早急に「日米地位協定の改定」で兵士の暴走を抑える仕組みを構築すべきである。ところが、政府及び大臣はまったくの「思考停止」で、あるのは「対米従属」だけ。
さらに驚いたのは、「米兵の女性暴行事件」と報道されているのに、森本防衛大臣は「非常に深刻で重大な『事故』だ」と発言。他の会見でも4度も「事件」を「事故」と言い換えている。玄葉外務大臣に代わり事件の対応に当たった吉良外務副大臣も、「今回の『事故』はあってはならない」と発言している。
人を傷つけた「事件」と交通事故の「事故」とでは、全く違う。こんなことは世間の『常識』である。大臣たちにそんな『常識』がないのか、それとも「重大事件」を軽く扱いたいのか。もしそうだとすれば、極めて悪質である。
もう一つ驚いたのが、自民党の対応だ。「民主党は政権党をやめるべきだ」と、得意に喋る自民党の石破幹事長は、高まる「日米地位協定の改定」要求について、「運用改善でできることを見極めないといけない」と、地位協定改定を否定した。自民党こそが、沖縄の思いを踏みにじり、長年「日米地位協定の改定」を阻止してきた張本人である。反省のない自民党に政権を担当する資格はない。
繰り返される暴行事件に対して、大田昌秀元沖縄県知事は、現状と展望について次のように述べている。
「本土復帰後から2011年まで、米兵らの犯罪検挙数が5747件、うち女性暴行や殺人などの凶悪犯は568件も起きている。事件のたびに日米両政府は綱紀粛正や兵士教育などと言ってきたが、一度でも効果があったか。事件の背景の1つは、米軍の植民地意識、占領軍意識だ。2つには、今だに地位協定すら改定できない日本政府の姿勢だ。全基地撤去を求める時期が来た。安保を根拠に在日米軍は置かれているのだから、安保を認めてオスプレイ配備に反対するのは矛盾だ。
県も『綱紀粛正』などの生ぬるい要求ではなく、基地撤去を要求すべきだ。日米安保条約を破棄して友好条約にし、在沖米軍基地を撤去すべきだ。沖縄の犠牲で成り立つ安保を見直す以外に、事件を防ぐ方法はない」。
中部市町村会の儀間会長(浦添市長)は、在沖米海軍艦隊活動司令部への抗議後の記事会見で、「許しがたい蛮行そのもの。基地撤去を訴えなければ、根底からの解決はない」と、同じく基地撤去を要求している。
県議会も22日、臨時議会を開き、女性暴行事件について、「激しい憤りを禁じ得ない」と強く批判する抗議決議と意見書を、全会一致で可決した。意見書では、被害者への謝罪と完全補償のほか、「日米地位協定の抜本改定」と、初めて全米軍基地「返還の促進」を要求した。
このように沖縄の怒りは、オスプレイの強行配備、米兵の暴行事件を受け、米軍基地撤去に高まっており、ゲート前の抗議行動・集会は、激しさを増している。
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