2012/10/16更新
9月23日、釜ヶ崎「ふるさとの家」(西成区)で「あとからくる者のために…」と題する中嶌哲演さんの講演集会が行われた。主催した「西成青い空カンパ」は、飯舘村の酪農家・長谷川健一さんを招いての講演会を機に結成され、今も伊達市東仮設住宅自治会にカンパを送り続けている。この日は、1年半にわたって仙台で救援活動を続けた川浪剛さんの現地報告の他、「お迎えライブ」と称して、反原発ソングや福島民謡、奄美島唄の演奏もあり、盛りだくさんの内容。
「『原発で作った電気はいらない』と関西の人は声を上げて欲しい」―こう呼びかける中嶌哲演さんは、東の原発銀座=福島に対し、西の原発銀座と言われる若狭地域で長年反対運動を続けてきた。中嶌住職は、「西成で心の拠り所として地の塩のような働きを積み重ねられてきた『ふるさとの家』で私の拙い話を聞いていただけることを、心からありがたく思っております」と話をはじめた。(文責・編集部)
原発安全神話は、@5重の壁、A「止める・冷やす・閉じ込める」の厳重な管理、という2大スローガンに依ってきました。安全神話は福島事故で崩壊しましたが、それでもなお語られていない事実を指摘したいと思います。大飯原発3・4号機がフル稼働していますが、この2機が1年間動くと、炉心には、広島原爆2000発分の死の灰が溜まり、核燃料のなかには、長崎原爆60発分のプルトニウムが作られます。
これまで日本の原発が生み出した死の灰は、広島原爆約80数万発分です。この死の灰は、無害化まで100万年間の管理が必要で、暫定管理でも10万年を必要とします。たかだか40〜50年間の便利さを追及した結果、これだけ長期にわたる負の遺産を残していいのでしょうか。これが原発問題の根幹であり核心です。
プルトニウムという元素名は、「地獄の大王」を意味します。この精製過程は、核武装の野望を含んだものだと思っています。使用済み核燃料が六ヶ所村で再処理され、敦賀にある高速増殖炉「もんじゅ」の運転に使われると、純度99・8%にまで高まります。核兵器の理想的純度は94%と言われていますから、超核兵器級のプルトニウムを作り出すのが「もんじゅ」の使命だったのです。
国際世論は、北朝鮮の核兵器開発を問題にしていますが、日本は、宇宙開発事業団 によってロケット技術を開発しています。これにもんじゅで生み出される高純度のプルトニウムを組み合わせれば、日本は軽量の核兵器で核武装できるのです。つまり、「核の平和利用」と宣伝された原発は、潜在的に平和を脅かす核兵器開発を含んでいたのです。
福島原発10基と関東の関係と、若狭原発15基と関西の関係は、うり二つです。若狭現地で使う電力は、舞鶴の火力や水力発電から配電を受けているので、若狭原発群から生み出された電力は、全量関西に送られています。過去40年間で若狭の原発群は、2兆数千億`hの電気を関西に送り続けました。
反原発デモで逮捕者 10/5関西電力本社前
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ただし若狭住民は、原発を抵抗なく唯々諾々と受け入れたわけではありません。再稼働を許した大飯原発に限っても、1・2号機建設には大反対運動が起こり、町長をリコールして地盤整備工事を一時中断させるところまで追い詰めましたが、権力・金力・警察・機動隊等が大動員され、結局押し切られてしまいました。
3・4号機の際も、住民投票を求める直接請求署名が規定数を大きく上回りましたが、町長も議会もこれを否決しました。大飯町に隣接する小浜市でも4基の原発建設計画がありましたが、有権者の過半数を超える反対署名を集めるなど、強力な反対運動で阻止しました。大飯原発から半径10q以内の住民分布を見ると、68%が小浜市民で、大飯町民は、19%でしかありません。仮に小浜市民に地元住民としての発言権が与えられていれば、大飯原発4基は、存在していなかったかもわかりません。
ではなぜ、若狭に15基もの原発が建てられたのでしょうか?火力発電は、大都市の海岸部に作られています。消費地と供給地が一致しており、自給自足的といえます。しかし原発は、消費地である大都市から遠く離れた福島や若狭に作られています。住民が少なく、事故による災害を最小にしたいからです。若狭住民の立場からすると、原発安全神話は、第1機目が建設された時点から崩壊していたと思っています。
今回の福島事故ではっきりしたのは、原発震災の最大の被害者は、子どもたちだということです。政府は、年間被曝許容度を1_Svと決めていますが、子どもや胎児への影響は、大人の数倍といわれています。つまり、1_Sv/年であっても、子どもにとっては、数_〜10_Sv/年の悪影響を受けることになります。
この許容線量を超える子どもたちが、福島には36万人いると言われています。実際、福島県が42000人の子どもを対象に甲状腺調査をしたところ、6〜10才の女子54%に、甲状腺に嚢胞などの異常が見つかった、と発表されました。11〜15才の子どもの55%に甲状腺異常が見つかっています。
チェルノブイリでは3〜4年後から見られた甲状腺異常が、1年半という短期のうちに発見されたことに、欧米の研究者たちは、強い懸念を表明しています。
そもそも子どもにとって、外で遊べない、土に触れられない、というのは拷問です。何の責任もない子どもたちに最も厄災をもたらす原発事故を、繰り返してはなりません。天災としての地震・津波は避けられないでしょうが、大人災としての原発震災は、何としても防がねばなりません。
かつて敗戦末期の不決断が、沖縄の犠牲の上に広島・長崎の悲劇を招きました。今、日本の政府は、再び沖縄をふみにじり続け、「ヒロシマ」に匹敵する破局的な福島原発震災を起こしました。今後、「ナガサキ」に相当する若狭や六ヶ所などでの大事故が、「第2のフクシマ」として起こる可能性があります。もういいかげんに若狭の原発を止めようではありませんか。