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2012/10/3更新

「震災ガレキは安全」デマに反論する

明らかなウソを聞き流すわけにはいかない

下地真樹(ストップ!放射能汚染ガレキ関西ネットワーク)

YouTube  下地真樹@大阪 瓦礫の広域処理に対する抗議 @中之島公会堂前

不燃ゴミと可燃ゴミの処理基準を意図的に混同

環境省は「100Bq/s以下のゴミは、一般ゴミと同じ扱いで安全に再利用可能」と説明したが、それは不燃ゴミだけです。可燃ゴミについては、基準値がないはずです。原子力発電所で発生した可燃ゴミは、100Bq/s以下であっても、ドラム缶に保管して管理しているのです。環境省は、可燃ゴミの基準と不燃ゴミの基準を意図的に混同して、ごまかしの説明をしています。

不燃ゴミの処分基準が作られた背景は、原子炉解体時に出る数万dレベルの不燃ゴミを念頭に置いたもので、今回の震災ガレキのようにその何十倍ものガレキを燃やすことを念頭に作られた基準ではないし、様々な批判もある基準です。

トレンチ処分(地表を掘削して埋める処分)の10万Bq/sという基準も、今回の原発事故で発生したような大量の放射性廃棄物を日本中どこに埋めても良い、というような基準として作られたものでは決してない。ちなみに、現在日本でトレンチ処分の実績は、数カ所しかない。

つまり、ガレキの広域処理によってばらまかれる放射性物質の総量はもとより、現在も今後も発生する低レベル放射性廃棄物に含まれる放射性物質の総量について、環境省は全く語らない。総量規制することなく環境安全保全など、できるはずがない。

基準が80倍に緩められた理由を説明せよ!

もともと100Bq/sだった基準が80倍に緩められたものを4分の1にして、大阪府は「安全だ」と言っている。まず、基準を80倍に緩めたことの説明がなければならない。

そのうえで、8000Bq/sの基準値は、「作業員の年間被曝量が1_Sv以下になる数値」という説明だった。しかし、その1_Svの実効線量の定義式を、環境局の担当者は知らなかった。つまり、その定義式についての検討は全くなされておらず、「内部被曝を軽視してる」という批判の意味を全く理解していないことを意味する。これは、大阪府の資源循環課も同じだ。

「1_Svの被曝限度」という時、ドイツでは、呼吸・食事等の内部被曝と外部被曝を合計して1_Sv以下を基準としている。しかし、環境 省と大阪府市が、「作業員の被曝線量=1_Sv以下」という時には、内部被曝などの他の要因を全く無視している。厚労省の食品安全基準値では、食品・飲料水による内部被曝で1_Svが基準になっているので、これをガレキ処理による被曝を合わせたら、作業員の被曝が1_Svを越えることは容易に推測できる。

実質検討なしに「安全」を答申した「専門家会議」

大阪市が安全の根拠としている「専門家会議」も、食品やガレキ処理など個別に想定されている被曝量の足し算すらしていない。環境省のデータを無批判に受け入れているだけで、その典型はバグフィルターのセシウム除去データだ。大阪市の専門家会議は、昨年12月に「バグフィルターによってセシウムの99・99%を除去できる」との指針を報告したが、今年になって、環境省自ら「バグフィルターの実証データはない」ことを認めた。大阪府の検討会議がバグフィルターの性能について検討を行っていないことは、明らかだ。

こうした経過と同様に、海面処分場である大阪市・北港処分場への埋立の安全性にかんする個別評価の検討も、杜撰なものであった。6月5日に環境省が評価書を公表するやいなや、大阪府の検討会議は6月10日にわずか1日で終了し、1週間後には府の指針が改訂、6月20日には橋下市長が再度受け入れ表明をするというスピード日程である。これは完全に政治日程であって、実質的な検討など行われていない。

実際、6月10日の検討会議後の大阪府資源循環課との話し合いの中で、担当課長ならびに室長は私たちの簡単な質問にも答えることができず、評価書を理解しないまま検討を終了したことが明らかになっている。こんな状況で、安全だという評価を信用せよと言う方が無理である。

環境省に「安全」を語る資格はない

大阪府は、ガレキ受け入れにあたって、海上輸送の積み降ろしの際に1度だけ、コンテナ外側の空間線量検査をすることになっている。しかし、これは、ガレキの汚染検査としては全く意味がない。なぜなら、ガレキに含まれる放射性物質からの放射線は、わずかに離れて測定するだけでもほとんど検出できない。仮に、府の指針に沿った測定方法で有意に高い空間線量が検出されたとすれば、それは基準よりもはるかに高いレベルで汚染されていることを意味する。

また、搬入されるガレキの線量検査は、サンプル検査とされている。であれば、当然誤差を考慮しなければならない。つまり、誤差の上限で100Bq/s以下という基準でなければ、大阪市自ら設定した基準は守れないのである。サンプル検査結果をそのまま横滑りさせて、基準値以内という論法は、統計処理の方法として間違っていることは、素人でもわかることだ。誤差が考慮されていない検査は、信用できない。

岩手県の広域処理の必要性についても、ごまかしがある。今年7月初旬に、私が岩手県に電話をして、「どの市町村のガレキが広域処理の必要性があるのか?」と質問したところ、岩手県担当者は「まだ決まっていない。総量から概算している」と答えた。県のガレキ処理量は、各市町村からの積み上げによって決まるはずだ。ところが岩手県は、今年6月の段階で、広域処理が必要な市町村のガレキの量を把握していなかったのである。大阪市は、宮古市のガレキが現地処理できないとして受け入れる方針だが、それは後付けの理由なのだ。

最後に、環境省は、広域処理の宣伝のために40億円を使った。ところが一方で、環境省が設置した災害廃棄物安全評価検討会の議事録を「費用がかかる」という理由で作成しなかった。この結果、国会は、広域処理の法律を作った時点で、検討委員会議事録もなく検討会の議論の詳細を検討することができない状態で議論をし、広域処理法案を可決した。

この例からもわかるように、環境省は「ガレキの広域処理ありき」の方針をもって、拙速な検討会議を組織し、大キャンペーンを繰り広げて放射能の全国拡散を強行しようとしている。環境省に安全を語る資格はない。

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