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2012/10/9更新

アメリカ大統領選挙とウォール・ストリート

ロムニーに乗り換える?金融界

アメリカウォッチ 島・M・ゆうこ

無制限となった選挙資金提供

2010年1月21日、シティズン・ユナイテッド対連邦選挙委員会の裁判で、米国最高裁は、米国憲法改正法第一条に基づき、「政府は、法人および組合による政治献金の限度額を定めることはできない」と判決を下した。

その判決から2カ月後に「スーパー・パックス」(Super PACs/以下「SP」)が設定された。これは、従来の政治活動委員会(PAC)と異なる新たな選挙資金組織であり、個人、組合、企業の選挙資金に関する規定を定めている。「SPに寄付する大物は、ウォール・ストリート(WS)の金融機関である」と言われている。

WSの金融機関は無党派に属し、両党の候補者に寄付する習慣がある。しかし、今年11月の大統領選挙では、WS金融機関の選挙献金パターンに劇的な変化が見られる。

2008年の大統領選挙では、主な大手銀行はいずれも、共和党の大統領候補者であったジョン・マケイン氏より、オバマ大統領に2倍から4倍多い選挙資金を寄付した。しかし4年後の今年、WSの金融機関は、ほとんど共和党の大統領候補ミット・ロムニー氏に献金している(表参照)。

4年前、これら大手の銀行はいずれもオバマ氏に多額の献金をしたが、今回、掌を返したように態度が変わっている。

『オープン・シークレット組織』によると、FECは、2012年のオバマ氏に選挙献金を提供した主な金融機関はウェルファーゴだけであり、ロムニー氏には、オバマ氏の約2倍近く寄付が集まっている。ゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースはオバマ氏に少額の献金をしただけで、主な大手銀行はすべてロムニー氏に巨額の寄付をしている。

オキュパイ運動に危機感募らせる金融界

オバマ氏が就任後、金融機関の支持を失った理由のひとつは、オバマ氏が「WSの『太った猫』を援助するため大統領になったのではない」と発言したことである。さらに、WSの最高経営責任者(CEO)たちは、ロムニー氏の秘密の個人資産を攻撃したオバマ氏の選挙チームの宣伝に不快感を抱いている。6月26日の「ブルンバーグ」紙によると、彼らは前回オバマの強力な支持者だったが、今年はロムニー氏に乗り換えるという。

また、08年の大統領選ではオバマ氏を支持していた投資会社スカイブリッジ・キャピタルのCEOは、「増大する赤字、高い失業率、WSのオキュパイ運動のような反金持ちの風潮があるため、WS寄 りのロムニー氏が大統領になるほうが気楽だ」と語っていたと報じられている。

しかし、現実的な理由は政治的なものであり、金融規制が主な要因だろう。07年のサブプライム住宅ローン危機を発端として、08年、世界最大の金融機関リーマン・ブラザーズとAIGは倒産に追い込まれ、株は暴落した。この世界的な金融危機を受け、前大統領ジョージ・W・ブッシュ政権は、08年10月に、「金融機関が破産すると世界経済に及ぼす影響は計り知れない」という理由で、住宅ローン危機救済プログラムであるTARP法案に署名した。TARPは、連邦政府の財務省が抵当流れの個人または商業用の住宅を買い取り、融資することで、金融機関救済と金融市場の安定化を図る法である。しかし、この金融救済法は一般的に納税者には評判が悪く、論争的な法である。

金融規制に消極的なロムニーは、1%の代表者

08年、共和党の大統領候補ジョン・マケイン氏は磐石な金融規制を公約して注目された。同年9月17日の『ワシントン・ポスト』は、マケイン氏は1990年代には金融機関の規制緩和に積極的だったが、08年の大統領選キャンペーンでは、金融規制を公約した、と報じた。サブプライム住宅ローン危機で、有権者が不動産価値の暴落の責任を金融機関に向けていた矢先、国民の利益を守ることが政府の責任であるとして、金融規制政策を前面にアピールした。「公正性と実直性を強化するため、WSの金融機関の改革法案を制定すること」が政策のひとつであった。

このため、マケイン氏は、金融機関の支持を失い、WSはマケイン氏よりオバマ氏に多額の選挙献金を与えた。

08年3月21日の『ロサンゼルス・タイムス』は、金融機関からオバマ、ヒラリー・クリントン両氏が莫大な選挙資金を受けたことで、金融規制に歯止めがかかるのではないかと民主党議員が心配していたことを報じた。

しかし、主な大手銀行から優遇されたオバマ氏は、住宅ローン崩壊後、最悪の経済情勢の時に就任したため、必要に迫られて、09年5月にクレジットカード法に署名した。この法は連邦政府の法で、公正および透明性を銀行に求め、クレジットカード保持者を保護するため、独断的な利息、不条理な罰金、過剰な手数料の防止、その他の規約を含む包括的規制法である。

さらに、住宅危機に伴う08年の経済崩壊後、金融危機を防ぎ、透明性を強化し、消費者を保護する目的で、10年7月にドッド・フランク・ウォール・ストリート改革と消費者保護法(DFWSRCPA)と呼ぶ、金融機関を規制する本格的な連邦政府法に署名した。ドッド・フランク法の主な目的は、多数の規制を課すことで倒産する金融に対して連邦政府の関与を減少させるためでもある。

また金融業界の腐敗に対抗するため、危険性の高い住宅ローンの慣行を停止し、住宅ローンおよび販売信用を含む金融業務に関する確実な情報を24時間提供することを義務付け、証券法違反の情報を入手した人物が政府に報告できるシステムを制定した。

このような法制定がどこまで金融側で徹底されていたかを、一般の国民が知る術はないが、ミット・ロムニー氏は、11月の大統領選に勝利した場合、ブッシュ氏が署名した「サーベンス・オクスリー法」と呼ぶ金融規制法とオバマ氏が署名した「ドッド・フランク法」のいずれも撤廃すると公約している。

「サーベンス・オクスリー法」は、ワールドコムやエンロンの会計不正スキャンダルに対処するため制定され、会計業務の報告プロセスを規制し、投資家を保護することを目的とした上場企業会計改革および投資家保護法である。この2つの金融規制を撤廃し、合理的な規制法に改正すると宣言している。金融業界は、この2つの複雑な規制は行きすぎで、無駄な経費と書類業務が増えると不満を漏らしている。ロムニー氏はそのような銀行側に同情し、経済後退の原因になるような規制はすべて反対する方針を打ち出している。現在、金融機関がほぼ全面的にロムニー氏を支持している理由は簡単明瞭である。

11月の大統領選は、無限の政治資金を合憲とした最高裁の決定後、初めての選挙で作成が原因で抵当流れが相次いだ銀行の責任を追求するため、今年2月、オバマ氏は主要銀行と協議を行い、弁償金による和解策を見出した。昨年の10月から、労働組合と連携して活動を展開しているWS占拠運動の活動家は、「99%」を自称している。8月3日の『ニューヨーク・タイムス』紙は、「1%は銀行、住宅ローン会社、保険会社などの金融機関である」と述べている。

また同紙は、WS占拠運動の政治的目的は明白であり、経済格差の不満をオバマ政権に向ける活動家も存在するため、民主党はWS占拠運動を慎重な態度で支持し、共和党の中心人物の複数は、この運動を「はびこる暴徒」と呼び、批判的であると伝えた。オバマ氏は「米国人のフラストレーションを反映している」と語り、99%を代表する活動家に同情的であるが、一方、金融規制の撤廃を強調するロムニー氏は、この1%に支持されている代表者である。

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