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2012/9/14更新

 

シリアの「解放」??

民族的・宗教的浄化とジェノサイド

シェーマス・クック(ソーシャル・ワーカー労組員)
Shamus Cooke's ZSpace 8/7

驚くべきNT(ニューヨークタイムス)の記事

米国の大手メディアで、驚くべき変化が生じた。反シリア・戦争プロパガンダと虚偽報道で明け暮れた後、ようやく真実の一端を伝えるようになった。シリアは、民族的・宗教的迫害と虐殺の悪夢で崩壊寸前である。

際限のない戦争煽動記事を書いてきたニューヨークタイムズは、一呼吸おいて、その手についた血をぬぐい、シリアの本当の状態を報道し始めた。「ホムス市・シリア政府軍の市民無差別虐殺」という大宣伝は嘘だったのだ。事実は、まさにその反対だったことを認め始めている。

実際、ホムスを脱出した難民の多くは、自由シリア軍の迫害から逃れてきたキリスト教徒である。自由シリア軍は、シリア世俗政権を倒す宗教戦争にスンニ派強硬派を巻き込むために、シーア派やキリスト教徒など宗教的マイノリティを殺害している。(訳注:パレスチナ難民やイラク難民も犠牲になっている)

そもそも自由シリア軍は、大衆運動から生まれたので はない。それは、サウジアラビアの財布と武器から生まれた。シリア政府を破壊する戦争は、民族的・宗教的戦争として戦われている。

サウジアラビアは、敵対的政権を倒す道具としてスンニ派過激セクトであるワッハーブ派(訳注:復古主義的なサウジ国教)を輸出してきた長い歴史を持っている。米国は、サウジと長い間同盟関係を築き上げ支援してきた。この両国関係から生まれたのがタリバンでありアルカイーダで、両組織は米国世界戦略の申し子なのだ。この戦略は「反米」政府を倒すうえで非常に効果的であるので、タリバンとアルカイーダの苦い経験にもかかわらず、未だに使っている。

この戦略は、中東労働者の政治的活動を抑え、中東全体をイスラム形成期の原始的状態に停滞させる効果もある。サウジアラビアでは、抗議運動、労働組合、公民権運動は法典違反なのである。

シリア自由軍の住民虐殺

ホムスの迫害されている宗教的少数派は、シリア政府を、欧米メディアお気に入りでサウジアラビアの傀儡である自由シリア軍から自分たちを守ってくれる味方だと見ている。

ニューヨーク・タイムズの読者意見欄には、同紙の報道以上に事実が明確に述べられている。

「サウジアラビアの金と武器は反乱軍(自由シリア軍)を支えているので、3月反乱軍にホムス地方の自宅から『浄化された』キリスト教徒8万人は、帰郷できる希望を次第に失い始めている」「反乱軍(自由シリア軍)の民族的宗教的浄化のため、反乱を支持していた一部のスンニ派の人々や態度が揺れていたシリア国民の一部が、アサドへの忠誠へと戻り始めた。また、かつてアサド政権を泥棒政治(訳注:国の資源・財産を権力者が私物化する政治)だと見ていた人々が、今や危機に陥ったシリアの多元主義(民族的・宗教的)の守護者と見るようになった…」などだ。

「民主主義の推進」理由に、虐殺黙認

こうして事実関係が突然転換したように見えるが、実は米政府もマスメディアも早くから知っていた。ニューヨークタイムズを引用すると、「2011年6月に駐シリア米大使は、ダマスカスの本国はもちろん西側諸国大使に、反乱軍にアルカイーダが流入していることを通知した。しかし米政府は、サウジアラビアのシリア破壊方針を推進し、イスラエル援助とイラン弱体化のためには、人道危機悪化に目をつむっているばかりか、火に油を注いでいる。この反動は必ず米国へしっぺ返しとして戻ってくるであろう」

まとめると、米民主・共和両党の政治家は、シリア紛争に関して国民に嘘をついてきたのだ。民族的・宗教的野蛮行為によって反米政権が崩壊すれば、政治的に自分たちにとって有利になると考えたからである。

最後にもう一つニューヨークタイムズを引用すると、「シリアの宗教マイノリティ迫害に対する国際社会の無関心 =反アサドで隊列を組んでいる西側諸国が反乱勢力の非人道的暴力に対して完全沈黙していることは、多くの世俗的シリア人の間に反米感情を生み出している。彼らは、米国を、中東で最も世俗政権を嫌うワッハーブ派(狂信的スンニ派)の国=サウジの同盟国と見るのだ」

これが真実である。1年もかかったが、シリア戦争は「善と悪の戦争」というはっきりしたものでないことが、突然明らかになったのだ。

シリア政府は決して立派な政権とはいえないが、その政権潰しは、全く虚偽の上に立っており、イランを孤立させて転覆しやすくすることだけを目的とする外国(米とサウジ)の絶大な支援で行われているのだ。流血を「民主主義の進歩」として推進している米政府と米マスメディアは、偽善をはるかに越え、戦争犯罪人のカテゴリーに入るものだ。

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