2012/7/12更新
編集部 山田洋一
「脱原発は、全く考えておりません」「大飯3・4号機再稼働以降も、他の原子力プラントの再稼働に全力を尽くしてまいりたい」─八木社長は、会見をこう締めくくった。「脱原発の株主提案について、経営に反映させる考えはないのか?」との記者質問に対する語気を強めての答えだ。
あまりに頑迷な態度には、むしろ追いつめられた焦燥感・切迫感が伺える。株主総会では、30にわたる株主提案が提出された。うち28が「脱原発」を経営方針に盛り込むよう求めるものだ。総会ではすべて否決されたが、京都市・神戸市・大阪市が共同で提案した、情報公開を定款に盛り込む提案や、筆頭株主である大阪市が推薦した社外取締役の選任も、「脱原発を主張している」ことを理由にして、取締役会は反対した。
総会後、堂島リバーサイドフォーラムで行われた記者会見で八木社長は、否決について「充分御議論頂いた結果」と胸を張ったが、株主提案の可決には、出生株主の3分の2という高いハードルが設定されている上に、取締役会は総会前に過半数の委任状をかき集めている。否決は開催前に決まっている「茶番だ」との株主の声も聞こえてきた。
第88回関電株主総会は、第3会場まで人が溢れるほど過去最大の参加者となり、開催時間も過去最長の5時間を超えるものとなった。
早朝から「再稼働反対!」のシュプレヒコールが飛び交い、午後には在特会メンバーもなだれ込み、総会会場となった梅田芸術劇場周辺は、騒然とした雰囲気に包まれた。
総会会場内も、原発をめぐって激しい議論が交わされた。総会直前に大飯原発再稼働が発表されたが、関電の株価はさらに下がり続けている。こうした経営状態悪化もあり、脱原発を経営方針に入れるよう求める株主提案がなされた。
特に京都市・神戸市・大阪市が共同で提案した。@脱原発方針への転換、A代替エネルギー開発、B発送分離に向けた改革の実施、C経営情報の公開は、将来のエネルギー事情を見越した現実的提案だった。3市合計で10%を越える株式を保有する大株主提案だが、取締役会はすべて反対し、総会で否決した。
福島在住の株主も、再稼働反対、脱原発提案を行った。行動する株主の会は、核燃再処理からの撤退を訴えた。また、「オール電化」キャンペーンの中止と謝罪を求める提案もあった。
「今日の総会の議論では、原子力を止めるべき」というのが最大の集約である」「真摯な議論が交わされた」と評価した個人株主の感想だ。
株主総会の取材は初めてだったが、脱原発を求める株主たちは、10年以上に渡る取り組みに基づいた、しっかりとした議論が準備されていた。一方、八木社長を筆頭とする取締役会の答弁は、まさに木で鼻を括った官僚的答弁一色で、「関電は、1ミリも変わろうとしていない」と落胆した。株主提案を中心に、議論の中身を報告する。
福島では、16万人が家も職も失い、路頭に迷っている。他の人たちも、自治体による安全キャンペーンと情報の隠蔽に翻弄されている。「安全? 危険?」「逃げる? 逃げない?」「戻る? 戻らない?」などの選択に、日々迫られている。家庭内論争や家族分断、 避難先での孤立・閉塞感、そして、取り返しできない喪失感による鬱的症状に苦しんでいる人も多い。
再稼働を決めた大飯原発3・4号機は、フィルター付きベントも免震棟もなく、防潮堤もかさ上げされていない。さらに敷地内には、活断層らしい破砕帯も見つかっている。それなのに、どうして安全だと言えるのか?関西電力は、東京電力の二の舞にはならないで欲しい。
私たちは、美しい故郷を失った。福島県は、ほぼ全域が放射線管理区域と同程度の汚染に見舞われている。福島は死んだのだ。今になって、原発を受け入れたことを悔いている人もたくさんいる。失ってからでは遅い。福島から学んで欲しい。第2・第3の福島を作らないで欲しい。
子ども達の5年後、10年後、20年後が心配だ。「私は、いくつまで生きられるの?」「私は赤ちゃんを産めるの?」子どもたちにこんなことを言わせる大人の世代責任は、重いのだ。私は、この責任を取るために福島で生き抜いてい く覚悟だ。
地震国日本に、原発はあってはならない。原発再稼働は、豊かな自然・日常の暮らし・仕事・夢、そして子どもたちの未来を奪うことになる。大飯再稼働は、絶対にやってはならない。
門川大作京都市長は、@「脱原発依存」を経営方針に掲げるよう提案。A代替電源として再生可能エネルギーを中心とした自立分散型電源の開発、B発送電分離に向けた事業改革、を求めた上で、大胆な転換の必要を説いた。
また、矢田立郎神戸市長は、「原発事故がいったん起これば、影響は広範囲に渡ることが福島事故で身に染みた」としてうえで、@原発依存度の引き下げと電力多様化へのロードマップを示すこと、A市民・自治体との連携の取り組みを強化するよう求めた。
さらに、「関電は衰退産業の道を走っている」と指摘した橋下大阪市長は、まず使用済み核燃料の再処理事業について質問した。中間貯蔵施設の増設、最終処分場の目処がまったく立っていない現状で、将来リスクとして、@関電管内で使用済み核燃料は、いつまで保管できるのか? そうした将来リスクを念頭に置いた経営方針になっているのか?という問題提起だ。
また、A原発新設を見込めず、40年廃炉ルールが確立した場合、関電は、何基原発が停止すれば赤字になると予想しているのか?さらに、B将来政府が変わって、原発ゼロの方針を掲げた場合への備えはあるのか?との質問も行った。
これに対し白井常務は、@核燃サイクルは引き続き重要」としたうえで、「使用済み核燃料は未来の貴重な燃料」として管理する。中間貯蔵施設についても、できるだけ早く立地点を探すと答弁。岩根副社長は、Aについて11基が止まれば9000億円の損失が出るとしたうえで、今後も相当な数の再稼働を目指す、と回答した。
官僚答弁そのもので、言葉は丁寧だが、聞く耳持たずの姿勢で、3市の提案をことごとく突っぱねた。
電力使用量が増大し、地球環境にも貢献しないオール電化を推進しておいて、計画停電だの、CO2排出削減だの、果てには電気料金の値上げまで言い出す会社の姿は、放火しておいて消防車を来させるマッチ・ポンプそのものだ。
@オール電化で使われているIHクッキングヒーターや電気温水器をガスに置き換えると、もっと環境にやさしい住宅になる。Aオール電化の優等生と宣伝する「エコキュート」は、実使用状態の
効率は、カタログより大きく低下するとの研究が報告されている。B関電は節電を訴えているが、オール電化にした場合の電力使用量は、電気温水器使用の住宅では、93%の増加になる。エコキュートの住宅でも27・8%増加する。この事実を、社会に衆知すべきである。
関西電力は、オール電化政策をただちに中止し、オール電化の環境性や節電性についての事実を公表して、これまでの謝った宣伝を詫び、電気機器の取り替えを希望する顧客には、会社の負担で取り替えを推進し、顧客の節電意欲を高めるべきだ。