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2012/7/12更新

ウソの上に成り立つ原発は砂上の楼閣

おおい町議・猿橋 巧さんインタビュー

大飯原発再稼働をめぐる渦中にある福井県おおい町は、小浜湾に面した小さな町だ。大飯原発は、大島半島北端の山間にあって、町の中心部でその存在を意識させるものはない。「原子力の町へようこそ」といった看板が掲げられているわけでもなく、再稼働反対/賛成を訴えるポスターがあちこちに貼られているわけでもない。いたって静かな、リアス式海岸にある、風光明媚な小さな港町といった印象である。

海上から見た大飯原発。大島半島の先端の隠れ谷に位置している。防波堤など津波に対する備えは何もなされていないままだ。

大飯原発から南に向かって走る巨大な電線路(原発への外部電力を供給するものと、関西へ送電するものの2種類がある)が、威圧感を感じさせる。また、町の中心部を歩くと、ピカピカの公共施設があちこちに建てられている。ナイター設備のある野球場、フィットネスセンター、温水プール、テニスコート、郷土資料館・図書館、展望浴場、マリンレジャー施設、ホテルなどなど…原発立地による補助金の存在を否応なく意識させられる。

6月14日、そのおおい町議会(議員数14)で、大飯再稼働の是非を問う全員協議会が開かれ、大飯原発3・4号機の再稼働を容認することを決定。時岡忍町長は、福井県・西川一誠知事に「再稼働容認」を報告した。

そのおおい町議会の中で、ただ一人「再稼働に反対」の立場を貫いている日本共産党・猿橋巧議員(58)に、6月18日にお話をうかがった。  (編集部一ノ瀬)

強引な「再稼働容認」決定

──大飯原発再稼働をめぐった、おおい町や町議会の動きを教えてください。

猿橋…町議会では、私以外のすべての議員が「再稼働容認」に賛成する結果となりました。しかし議論の過程では、「原発推進」の議員からも「再稼働はもっと慎重に」という意見が出ていました。新谷議長が採決を急いだため、「白か黒か」を明らかにしなければならず、残念ながら再稼働に反対した議員は私だけでした。

時岡町長も、再稼働にあたっては「安全第一」と明言していたのですが、いつの間にか、雇用問題・経済問題・町財政にすり替えられてしまいました。「再稼働容認」の住民も含め、原発の安全性について、ほとんどの人が不安を訴えています。それにも関わらず、町も議会もその声に向き合っていないのです。

──一番の当事者であるおおい町の住民は、再稼働をどう受け止めていますか?

猿橋…おおい町では原発関連で働く人も多いのですが、いまや「安全性」抜きで、無条件に再稼働を容認する声はありません。

先日、ある放送局が、おおい町全体で再稼働についての匿名電話アンケートを行いました。50%が「再稼働に反対」という結果が出たそうです。匿名で自分の意見を出しやすかったのでしょう。

大飯に原発ができてから、45年たちます。私は一貫して原発の危険性を訴えてきましたが(猿橋さんは町議7期目)、原発に関して、ものが言いにくくなっていたと感じます。「原発は危ない」という声を上げると、以前は関西電力から「忠告」といった形で抗議がありましたが、最近は、表だってはそうしたことはありません。おおい町民も、「しょうがない」という諦めの雰囲気になっていました。

しかし、昨年3・11の福島第1原発事故によって、原発の安全性に対する町民の意識は劇的に変わりました。再稼働を認める立場の人も、「『安全』と言われても、やはり事故が不安」「安全性が確実に保証されるまでは、再稼働すべきではない」という意見が圧倒的です。

──住民の方から、猿橋さんの元へどんな声が寄せられていますか?

猿橋…私が町議会で再稼働反対討論をしてから、「よく言ってくれた」「原発についてキッパリと意見を言える人が他にいないので、これからもがんばってほしい」という激励の電話が、大飯原発のある大島地区も含め、何件も寄せられました。ユーチューブ(インターネット上のビデオ映像投稿サイト)で、私の反対討論が2000件以上も視聴されました。

──原発関連の収入が大きいと思いますが、おおい町の財状態について教えてください。

猿橋…今年度予算でいうと、一般会計と特別会計を合わせて140億円の財政規模です。おおい町の人口は約8800人ですが、同じ人口規模の自治体予算が40〜50億円ですから、2倍ほどの財政規模になります。また、おおい町は地方交付税(普通交付税)の交付団体でもあります。これは、町村合併によって旧名田庄村の交付額に相当する額の交付を受けているからです。

電源3法交付金による補助金など、町財政に占める原発関連の収入は、収入全体の4〜5割=60〜70億円ぐらいになるでしょうか。これに加えて原発関連企業や、そこで働く住民からの住民税もあります。いずれにしても、原発に頼った財政構造になっていることは、大きな問題です。

──原発関連で、どれくらいの雇用・仕事を生んでいるのでしょうか?

猿橋…おおい町の就労可能人口(19〜59歳)は、約4300人(男性2300人、女性2000人)です。大飯原発では、約2000人の労働者が働いていますが、おおい町住民は3〜4割にあたる500〜600人です。その他、下請け業者、部品・備品などの納入業者、定期検査の作業員が宿泊する民宿・食堂もありますから、さらにそこで働く人の数が加わります。

「我々は決して諦めない」

──もし大飯原発の再稼働がなかった場合、町の財政は立ちゆかなくなりますか?

猿橋…そんなことはありません。4月26日に大飯再稼働に関する住民説明会でおおい町を訪れた柳澤経済産業副大臣は、町議会との意見交換において、「運転停止により町財政に影響が生じる2013年度以降の発電量に応じた電源3法交付金について、停止していても設備能力の8割分を交付する《みなし規定》を適用し、交付額を一定程度保証する」と約束しました。決して「お先真っ暗」というわけではありません。

雇用に関しても同様です。発電しなくても、施設の管理・運営に人は必要なのです。また、廃炉を決断しても、廃炉ビジネスは1基あたり800〜1000億円規模と言われており、雇用や財政効果が期待できます。

──おおい町の子どもたちは、学校卒業後、地元に残るのでしょうか、それとも町外に出るケースが多いのでしょうか?

猿橋…おおい町には中学までしかありませんから、高校・大学と、町外の学校に通うことになります。しかし、一度おおいを出て、大学を卒業した子どもたちがUターン・Jターンなどでおおい・若狭に戻ってくるケースはない、と言っていいでしょう。

もともとおおい町では、多くの人々が近隣の舞鶴・小浜まで働きに出ていました。しかし、長引く不況で企業・工場の閉鎖や移転が相次ぎ、就労先が激減しています。これは、おおい町だけではなく、 「原発銀座」と言われる若狭全体の傾向です。

おおい町でも少子高齢化は進んでいて、あと10年もすれば、おおい町内でも「限界集落」の問題が深刻化する恐れがあります。「原発立地でお金が増えても、人口は増えない」実態があるのです。

──「大飯再稼働」をめぐって、日本各地からだけではなく、世界中が注目しています。地元・おおい町からのメッセージをお願いします。

猿橋…西川知事が再稼働に同意し、野田首相が「大飯再稼働」を表明したことは、本当に残念でなりません。しかし、世論のうねりが大きくなれば、再稼働を中止させることはできる、と思っています。

また仮に、再稼働してしまったとしても、私たちは、危険な原発への反対運動の手綱を緩めることはありません。電力消費地の皆さんと連帯しながら、今まで以上の世論をもって、原発を止める運動を続けていきます。原発は子々孫々につながる問題なのですから、決して諦めたりすることはできません。

私たちの「原発反対」の声が、原子力村を崖っぷちに追いつめていることは、間違いない事実です。原発の安全に対する不安の声がいまや大多数です。今後、原発に何か問題が起これば、原発は即時停止せざるを得ないでしょう。

今は原子力村との力関係の差で、再稼働を許してしまうかもしれません。しかし、「安全神話」というウソの上に成り立っている原発は、砂上の楼閣です。私たちの力で必ずや止めることができます。それが歴史の教えるところではないでしょうか。

私たちは、それぞれ所属する団体や地域が違いますが、「原発をゼロに!」という思いは一致しています。それぞれの場所で、原発ゼロ実現に向けて、力を合わせていきましょう!

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