2012/6/14更新
野田政権が、大飯原発再稼働に向けた最終手続きに入った。福井県知事とおおい町長の判断を得て、今月上旬にも首相が再稼働を決めるというスケジュールだ。今回の再稼働決定は、誰も責任を取らなくていい決定を作ることが優先された。福井県は、「首相に明確な責任ある見解を求める」といい、政府は、「地元の了解を待つ」とした。
再稼働に反対だった関西広域連合は、再稼働容認の責任も、停電の責任も負いたくないのか、どちらにも受け取れる抽象的な声明を出して、再稼働を容認した。安全面は全く無視された。政府が示した「再稼働基準」は、安全確保のための重要項目であっても、電力会社が実施計画を立ててやる気さえ見せればいいという甘い基準。事故が起きた場合の放射能被害の予測、住民避難計画すら十分に立てられていない。
細野原発事故担当相のいう「特別な監視体制」とは、経産省の副大臣や政務官が大飯原発で運転状況を「常時監視」するというもの。原発推進機関の同省の、しかも原子炉の専門的知識もない政治家に「監視」の役目が果たせるはずもない。
国会では、事故調査委員会が事故当時の菅直人首相ら当事者からの聞き取り調査を進めている段階だ。中心人物の東電前社長の聴取もされず、事故原因の究明にはほど遠い状況だ。新たな原子力規制機関の国会審議も始まったばかり。しかも提出された政府法案も自公案も、規制機関を原発推進機関の環境省の外局として設けるなど問題だらけである。
野田首相による再稼働発表が近づくなか、福井現地、関電前、経産省前(東京)をはじめ、各地で抗議行動が連続して取り組まれている。各地の抗議行動の様子、活動家・参加者の意見を紹介する。(編集部)
報告=栗田隆子
6月2日、18時から開始された関西電力本社前抗議行動は、かつてない切迫感に包まれていた。関電本社前に近づくにつれ、うねるような叫び声が聞こえてくる。「再稼働反対! 」「原発やめろ」「地球を守れ! 」「廃炉、廃炉、廃炉!!!」とコールが繰り返されている。職員玄関前の狭い空間から溢れ出るほどの人々が集まっていた。
関電本社前抗議行動は、ツイッターやブログ等の呼びかけに応えて集まった人々によるアクションだ。その多くは20代〜30代。あくまで有志としての個人が参加している。通勤帰りに立ち寄ったサラリーマンや、親子連れ、友人連れのグループ等々、そのままここがライブハウスとなってもおかしくない雰囲気だ。
橋下徹大阪市長らで構成する関西広域連合が、大飯原子力発電所3・4号機(福井県おおい町)の再稼働について、事実上容認したと大手メディアが発表。「再稼働慎重派」であったはずの橋下市長は、あっさり原発を受け入れる側へと回った。細野豪志原発事故担当相が6月4日には福井入りし、西川一誠知事に対応を説明し、理解を求めた。いよいよ最終段階だ。
参加している人々のなかから、「再稼働なんてオカシイ」と話す声が聞こえてくる。「東電福島原発の事故がありながら、まだ再稼働をするなんて」と。
マスコミにはほとんど報道されないこの抗議行動。しかも、従来から原発の反対活動を続けてきた人たちが集まっているわけではない。おそらく、東電福島第一原発事故後に、原発問題を知った人がほとんどだろう。だが、この大事故が起きた後ですら、何事もなかったかのように原発を再稼働させる政府と関電に対し、強烈な違和感を持っているのは少数ではない。
私が、フェイスブックやツイッターで、関電本社前に行くと知らせたところ、「頑張って」「今日は行けないけど、連帯の意志を込めて」「また話を聞かせて欲しい」等々、応援や賛同を表明してくれた方がいた。首相官邸前も同じ時間に抗議行動を行ったとのことだが、ツイッターを見ると、首相官邸前の最寄駅である国会議事堂の出口から、既に人が並んでいる、という情報が掲載されていた。
関電本社前抗議行動は、一旦19時半で締めたものの、帰る人はほとんどいない。職員玄関前から正面玄関前に場所を移して、再度抗議行動を開始。その時のコールは、もはやひとつだけだった。
「再稼働反対! 」1時間半以上、これだけが叫ばれていた。正面玄関前の抗議は拡声器を使用できず、シュプレヒコールを先導する人はいなかった。それでも、目の前にそびえ立つ関電本社ビルに向かって、切れ目なく再稼働反対のコールが続いた。
そのコールの最中に、アナウンスがあった。
「先ほど、情報が入りました…。6月3日、細野大臣が福井を訪問する予定でしたが、中止になったとのことです。本日は、こちらの関電本社前は500人(後日、延べ人数は1000人以上との情報もあった)、首相官邸前は2700人が抗議行動に集まりました。このアクションの結果が、細野の福井訪問を差し止めたといってもいいと思います。今後も、粘り強くアクションを起こしていきましょう! 」「わーっ! 」というどよめきとともに、「再稼働反対! 」の声がいっそう響いた瞬間だった。
しかしながら、6月4日には、再度細野大臣が福井に訪問すると発表された。ちなみに、前日の6月3日に、オウム真理教の菊地直子容疑者逮捕の報道がなされた。単なる偶然なのか、何らかの意図があるのかはわからないが、実に不気味だ。今後も、粘り強いアクションを行っていくしかない。そして、アクションをなかったことにしようとする大手メディアにめげることなく、伝えていくしかない。
再稼働に思う無視されたフクシマの声原発いらない福島女たちの会 佐藤幸子 私たち「原発いらない福島・女たちの会」は、「福島の事態を見たら、再稼働なんてあり得ない」と言い続けてきました。そういうフクシマの声が無視され、悲しく思います。首相による再稼働決断は、7月2日に関西電力が予定している節電要請までに再稼働を決めるために組まれたスケジュールで、住民の安全への配慮は微塵も見られません。 関西広域連合の首長さんたちが、15%の電力不足や計画停電を避けるためとして再稼働を容認しましたが、電力不足は数字の誤魔化しです。現状でも電力は足りると思いますが、本当に電力が足りなくなるのなら、政府や電力会社に指示される前に住民が率先して節電するくらいの気持ちになって欲しいと思います。 再稼働の前に、まず節電の取り組みがあるべきです。家電メーカーにしても、ピーク時だけ電源が切れるようなタイマーを付けることなど、できることはいくらでもあります。冷蔵庫なら昼間の数時間電気が切れたところで、中の食品が腐ったりはしません。 医療関連など停電になったら本当に困るところはあります。なのに、やろうと思えばできることをやらないでおいて、そういう所にまで停電を押しつけて「計画停電」で脅すというやり方に、怒りを感じます。 福井県には、再稼働反対のために2度行っています(4月24日、5月24日)。おおい町役場と福井県庁を訪問して、再稼働に同意しないよう申し入れしてきました。 福井で緊急抗議集会が呼びかけられているので、福島からもおおい町に駆けつける予定です。 |
再稼働に思う事故が起これば、責任なんて誰もとれないe-みらい構想 長谷川羽衣子 大阪府と市の協議でもはっきり出ているのですが、電力需給は足りています。ピーク時に5%ほど足りなくなるだけなので、節電をちゃんとやれば、停電にはなりません。電力は逼迫しないという試算の方は報道されず、また、住民の安全よりも経済の視点が最優先されて、再稼働が決められようとしていることが問題です。 4閣僚会議では、再び「福井県知事とおおい町長の判断を得て」という結論に終わったようなので、今後は西川福井県知事とおおい町の時岡町長の判断が再稼働への決定打となります。 その際、判断基準となるのは、福井県で継続されている「福井県原子力安全専門委員会」の決定です。5月31日、おおい町長が「福井県原子力安全専門委員会の結論を受けて判断する」と発言しました。 前回、同委員会を傍聴したところ、安全専門委員会の何名かの委員は安易に「妥当」との判断を下すことに強い懸念を持ち、抵抗しているように見受けられました。委員に対する働きかけが、再稼働の決定を左右します。安全委員会委員への働きかけも重要です。緊急事態です。現地に集まって、情勢に機敏に対応したいと思います。 |