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2012/5/30更新

【連 載】 ガレキ広域処理は被災地支援か? B

「絆」と利権

 (以下一部略、全文は1448号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

5月19日、宮城県石巻市の震災ガレキが試験焼却のため、北九州市に向け搬出された。「絆」を大義名分に進むガレキ広域処理の裏側とは? 

災害ガレキ処理予算は、3年間で1兆700億円が見込まれている。これを有名公共事業と比較すると、その大きさがわかる。東京都庁=1569億円、明石海峡大橋 約5000億円、中部国際空港(セントレア)8437億円。不況にあえぐゼネコン・建設業界にとっては、またとないビジネスチャンス。復興事業と合わせて、猛烈な営業活動の対象となっている。

ガレキ処理は、被災自治体と受入自治体の間で契約して進めるが、費用は全額、政府予算でまかなわれる。受入自治体側は、ガレキの量に応じた補助金を国からもらえる仕組みだ。しかも今回の広域処理は、処理費用が、約70000円/dで、通常の3倍のプレミアムがついているとも言われている。過疎地に多い財政状況の悪い自治体がガレキを受け入れて、自治体財政を維持するという、繰り返されてきた構図が見える。

愛知県は、焼却施設も最終処分場もないのだが、「これから造る」と手を挙げる始末。処理施設を新設しても儲かるほど、政府は金を出すという証拠だ。そんな予算は、被災地にこそ投入すべきだ。

金になる「絆」

震災ガレキ広域処理では、「絆」が強調されるが、裏側では、醜い金が絡んだ利権のぶんどり合戦が展開されているようだ。いくつかの事例を紹介する。

島田市(静岡県)の桜井勝郎市長は、岩手県山田、大槌両町のガレキ受け入れを正式表明した。東北地方と東京都以外の自治体で初めてだ。ところが桜井市長は、産業廃棄物の収集・処分を主な業務としている桜井資源鰹o身で、2001年の市長初当選前まで代表取締役を務めていたことがかっている。市長当選後も、廃プラスチック処分をめぐって、市長が競争入札を随意契約に切り替え、市長自らが相見積価格を関係の深い会社に漏洩し、その会社が見積額を差し替えたことが、住民訴訟の中で明らかになった。市長権限を使って、産廃利権を獲得したのだ。今回の島田市のガレキ受け入れも、桜井市長の利権獲得が主な動機で、「被災地支援」の美名は、イチジクの葉っぱに過ぎないようだ。

東電のマッチポンプ

東京都石原知事は、「国がやらなきゃ東京がやる!」と真っ先に受け入れを表明したが、公募から契約の手続きだけで1億円強を手数料として中間搾取した。しかも受注したのは、東電が95・5%出資する子会社「東京臨海リサイクルパワー」で、同社々長は、東電出身の尾中郁夫氏。マッチポンプそのものだ。事業規模は、2013年度までに計140億円ほどだが、費用は、放射能をばらまいた東電も被災地支援を声高に叫ぶ東京都も負担しない。

災害廃棄物受入処理で重要な位置を占める(財)東京都環境整備公社へは、東京都から処理費等として3年間で約230億円が貸し付けられる。迅速な支払いのためだ。同公社は、運送業者と運搬契約を結び、リサイクル業者、産廃焼却業者、東京都の廃棄物埋立処分場などと処理契約を結ぶ。 評議員には、福島原発事故以降も東電執行役員を続ける影山嘉宏環境部長が名を連ねている。同公社の常勤役員の平均報酬支給額は1274万円。常勤職員の平均給与支給額も600万円超だというから、「絆」が聞いて呆れるばかりだ。

沖縄でも恩納村議会がガレキ受け入れを決議し、石垣島も受け入れを表明した。これには、沖縄選挙区の下地幹郎衆議(国民新党幹事長)が関与していると言われている。鞄西海運は、下地一族のグループ企業。ガレキ運搬に加え、焼却灰の返送にも運搬費用が発生する。沖縄まで放射能ガレキを運ぶ合理性と経済性は、利権以外にどこを見渡しても見あたらない。

埋め立て処理の危険と利権

西日本で最初にガレキ受け入れを表明した大阪府は、阪神大震災の際の主要なガレキ受け入れ先となった。今回も大阪府は、現地事務所まで設置して、ガレキ受け入れを決めたが、これには理由がある。

「フェニックス」という海面埋立場だ。住民が住んでいないので、不燃ガレキを埋め立て、焼却灰の埋め立て先確保も容易だ。今回はプレミアムのついた補助金が確保されているので、燃やし始めたら、汚染が確認されても燃やし続けるのでは? と心配されている。

東京都にも似た事情がある。東京23区では、りっぱな焼却炉はたくさんあるのだが、不景気・少子化・市民のエコ意識の高まりで、ごみが足りなくなっている。最近の高温焼却炉は24時間稼働なので、「ごみを集めよう」という、本末転倒な話になっているという。

黒岩祐治・神奈川県知事は、横須賀にある「かながわ環境整備センター」に焼却灰を埋立てようとしている。横須賀最終処分場は赤字で、埋立スペースがガラ空きだという実情なのだ。

ガレキを受け入れれば、県は何もせずに中間マージン以外の金も転がり込む。焼却を横浜市や川崎市が請け負うとすれば、運搬もおそらく同市となる。市内運送業者の仕事づくりだ。

業界団体も受け入れに熱心だ。JR貨物の小林正明社長は、細野豪志大臣との会談で「専用の貨物列車を仕立て、ダイヤを整備したい」と述べ、全力を挙げる考えを示した。横浜港運協会の藤木幸夫会長も、焼却灰の最終埋め立てについて、横浜港での受け入れに賛同する考えを示している。

セメント協会の徳植桂治会長(太平洋セメント社長)は、「ガレキに含まれるプラスチックや木などの有機物は、セメントの材料として利用できる」として、積極参加する意思を示した。しかし同氏は、同時に受け入れの条件として、「セメント需要の拡大が不可欠」と、本音も漏らしている。

地域事情に応じた多様な選択肢を

「現地で処理する場合、焼却しない場合など、それぞれの事情に応じて選択できる多様な代替案を早急に検討すべきだ」―環境総合研・池田こみち副所長はこう語る。汚染が少なく分別が徹底されていれば、木材などはチップにして燃料にすることもできる。@広域処理するにしても期間は1年のみとし、A輸送距離の短い範囲で、しっかりとした安全設備をもつところに限定する。Bその間にリサイクルを促進したり、専用の仮設焼却炉を増設したりすることが考えられる。「焼却ありき」もこの際考え直すべきだ。

放射能ガレキの処理は本来、東電と政府の責任で行うべきだ。現状では、被災自治体が主体にならざるを得ないとしても、発生者責任を明確にして、応分の費用を東電に請求すべきだ。

震災ガレキ処理は、進捗度も課題の優先度も日を追って多様化している。自治体の事情に応じた多様な選択肢を用意すべきだ。早急に行うべきは、災害ガレキの処理方針の再検討である。

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