2012/5/9更新
臼田敦伸 (37)
4月9日の夜、私たちは三張りのテントを大飯原発に続く一本道の沿道に設営し、大飯原発の喉元に「大飯原発3,4号機再稼動を許すな」の横断幕を突きつけた。
このままいけば、日本政府の思うつぼである。私たちは、3・11の震災、そして原発過酷事故以降、デモ、集会、抗議行動、申し入れ、署名とありとあらゆる抵抗を行った。しかし今、大飯原発の再稼働は、目前に迫っているのである。もはや現地攻防に打って出る以外の方法は残されていないというのが、私たちの判断である。
一機でも原発の再稼働を許せば、なし崩し的に次々と原発が再稼働していくのは明らかである。そして、新たな安全神話がつくられていくのである。
原発は、差別抑圧構造によってつくられる。地域間経済格差を背景に、地方に原発や基地、最終処分場などの迷惑施設が押しつけられる。
福井県議会副議長・吉田伊三郎氏突撃インタビュー 「再稼働の安全性を疑う必要ない!」 福井県議会副議長で原子力発電・防災対策特別委員会所属の吉田伊三郎議員に、枝野経産相との会見について電話取材した。同氏は、会談終了後、黒塗りの公用車で地下駐車場から出たところを、再稼働に反対する抗議者たちに取り囲まれ、立ち往生したからだ。 枝野はコッソリ県庁に入庁したため、抗議者たちは、「再稼働反対」の意思を示そうと、帰りを待ちかまえていた。そこへ地下駐車場から黒塗りの公用車が出てきたために、皆が殺到したというわけだ。この抗議行動への感想も含めて、枝野との会談の様子などを聞いた。(編集部・山田) ──枝野氏の説明を、どう受け止めたか? 吉田…我々県議会正副議長との会見は20分くらいだったが、枝野氏は、用意してきた書面を読んだだけだった。県議会としての要望は伝えたが、議論や質疑応答にはならなかった。 ここまでくると再稼働問題は、イエスかノーか、選択肢は2つになってきている。ただし、私たちは原子力施設については素人で、技術的なことは判断できない。専門家が審議して出した結論を、政府がさらに検討したのだから、再稼働の安全性について、私たちがこれを疑う根拠も必要性もない。 問題は、地元福井県民の意向だ。ただ、福井県民といっても、原子力施設等で働いているような関連した住民と、そうでない住民との大きなギャップがある。このギャップを埋めていく努力が必要だ。日本経済全体・地域経済のことを考えて、知事が最終的に判断するだろう。 ──今後の地元了解の進め方は? 吉田…16日に、福井県原子力安全専門委員会の第1回検討会議が行われた。合計2回検討した後に、知事に答申する。県議会としても意見を集約し、知事に伝えるし、おおい町の意向も聞いた上で、最終的に西川知事が判断することになる。 ──滋賀県や京都府などが、地元自治体として安全協定締結を求めているが… 吉田…福井県民は非常に不愉快な思いをもって受け止めている。これまで原発から8〜10`圏内が防災区域だったが、それ以外は準備地・周辺地域と扱われてきた。これを拡大すると、本当の近接自治体を同じ扱いでいいのかという問題が起きてくる。 さらに、京都や大阪で使っている電気は、半分が福井で作られてきた。地元のこれまでの負担について、配慮があるべきだ。福島事故が起こって、にわかに地元だと主張するのは納得できない。原発地元住民も、非常に不快に思っている。 ──抗議者によって車が取り囲まれて、立ち往生したが… 吉田…枝野さんや西川知事ならわかるが、一議員でしかない私が、なぜ取り囲まれなければならないのか?その理由がわからない。私を取り囲んでどうしようというのか?彼らの常識感覚を疑う。 |
そして、福島第一原発のような過酷事故が起きなくとも、日々原発労働者、そしてウラン鉱山労働者は被曝している。また、原発廃炉過程においても、多くの労働者が被曝するのである。誰がその労働を担うのか。原発立地地域の労働者であり、全国の貧しい労働者が駆り出されるのである。都市部の生活を支えるために地方や貧しい労働者に犠牲を強いる構造こそが、問題なのである。
ここにテントを張ってから、最初に声をかけてきてくれたのは、地域の住民である。「ここでは原発反対の声を上げることはできない。大阪、京都、滋賀で声をあげてくれている人たちが本当にありがたい」というものであった。もちろん、これが地域住民を代表した声でないことは十分に承知している。しかし、私たちはその声を代弁することはできなくとも、その声に寄り添い共に歩むことは可能であるし、私たちはそれを望んでいる。
翌10日には、警察や町当局が来て、お約束通りのやり取りを行ったが、それ以降はなんら音沙汰がない。まるで嵐が過ぎ去るのを待っているかのようである。
私自身は、3・11以前に原発に反対する意志は持っていながら、原発に反対する集会、デモなどに参加したことは一度もない。3・11の原発過酷事故をテレビやネットで目の当たりにして、激しい後悔の念に襲われた。あの事故を繰り返してはならない。直ちに、全ての原発を止めなければならない。そして、この差別抑圧構造こそを変革しなければならない。この思いが、私を大飯に突き動かした。
再稼働ありきの国の安全基準など断じて認められないし、そもそも安全な原発など存在するはずもない。ここ大飯で現地攻防を闘い抜き、全国、世界で上がっている脱、反原発の行動と連帯し、原発再稼働の謀略を粉砕していかなければならない。
私たちは、さらなる行動、そして連帯を呼びかける。今、行動しなくていつ行動するのかが、私たちに突きつけられているのである。力を出しおしみしてはならない。私たちの行動によって、全ての原発を永久に停止させよう。