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2012/4/18更新

大学非正規労動実態調査報告会

「補助的労働」という真っ赤なウソ

〜大学の貧困+女性の貧困を語り合う夜〜

編集部 栗田隆子

3月23日、大阪府高槻市のカフェ・コモンズにて、京都大学の非正規労働実態調査の中間報告会が開催された。主催は次世代研究ユニット「大学非常勤職員のワークライフバランスについての研究」(吉田正純・菊地夏野・小林千夏・村上潔・山根実紀)。

大学の非正規職員の問題は今に始まったわけではなく、1960年代から問題提起されてきたが、国公立が独立行政法人化された00年代以降、国公立大学は、国・地方自治体の新自由主義的政治のもとで、リストラ・コスト削減および研究の競争主義化が激しくなった。

非正規職員に対しては「5年条項」(1年契約で4回までのみ更新可)に代表される労働条件の悪化がすすめられてしまっている。京都大学も例外ではなく、大量の非常勤雇用を続け、非常勤である多くの労働者に5年条項を課している。また非常勤は圧倒的に女性が多く、労働条件の悪化は、とりわけ女性たちを圧迫することになる。

90年代前半、京都大学において矢野暢元教授による秘書等非常勤職員の女性に対する性暴力が明るみに出て、大学内のハラスメント問題が明らかになった。大学がセクハラ相談体制を整備するきっかけとなったものの、大学の性差別と権威主義構造を問う運動として継続化されることはなかった。

そして11年3月、京都大学非常勤職員として働いていたユニオンエクスタシーの男性2人の組合員による、5年条項への異議申し立ては、地方裁判所では棄却。棄却の理由として和久田裁判官は、「社会保険との関係では3号被保険者となることが可能な範囲の年収に収まるような程度の労働しかしないことを自ら希望」していると、むしろ雇止めの妥当性を主張した。

さらに「1週間あたりの労働時間が30時間を超えないことを想定した仕事」は「時給も補助的な職務内容であることを考慮した金額に限定」されている、と断定。「このような労働は、家計補助的労働と呼ばれるもので、労働契約が更新されなかった場合に、当該労働者の生活そのものが崩壊するというようなことを想定しなければならない類型の労働とは言い難い」と断じた。

はたして現在の非常勤職員は、雇止めされても生活が崩壊しないのだろうか。従事する仕事は補助的だろうか。また、非常勤職員は皆、社会保障は被扶養者の立場だろうか。

人を育てる場所で人を切り捨てるのか?

判決の出る1年前、京都大学の非常勤職員の実態を調査するため、10年度京都大学グローバルCOEプログラム「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」の プロジェクトに応募し採用され、2年かけてアンケートおよびインタビュー調査を行なった。アンケート1011通のうち有効回答数321通(有効回答率31・8パーセント)。インタビューは30人に実施中である。

「法的に結婚はされていますか」という質問に、「いいえ」で回答した人は153人、48%にのぼった。さらに本人名義で健康保険に入っている人は252人、3号被保険者ではなく、本人名義の厚生年金および国民年金加入者は242人と、過半数であった。さらに、非常勤雇用職員の仕事はどのように評価しますか?という質問に対し、「基幹的である」「やや基幹的」であると回答した人は、321人中122人。「恒常的な仕事」「やや恒常的」な仕事であると回答した人は、228人。地裁判決の内容とは全く違う結果が浮き彫りにされた。

 インタビューでは、5年条項に反対する意見は多く、正社員への希望を語る人が多かった。決して雇用として安定しているわけでもなく、また雇用が不安定な仕事にもかかわらず、京都大学は企業に比べればまだマシという声もある。しかし、大学という人を育てる場所で、人を切り捨てる労働条件をよしとするのは、あまりにも矛盾が大きい。

今年4月に報告書が作成され、京都大学で年内に公開報告書会を行う予定だ。

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