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2012/4/7更新

福島高濃度汚染地区住民として

放射能に慣れてしまう日常/本音が言えない地域

2日間にわたって福島県郡山市で開催された「原発いらない地球(いのち)のつどい」(主催:原発いらない福島の女たち、他)に参加した。10の分科会のうち「高汚染区域住民として」の報告をする。同分科会では、福島市渡利地区の安部典之氏と、南相馬市の吉田邦博氏の両氏が、高濃度汚染地区の現状を語った。(編集部・遙矢当)

(以下一部全文と写真説明は1442号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

避難と保養の取り組み開始

「渡利の子どもたちを守る会」のメンバーである安部氏は、昨年4月以降の放射能の影響について報告された。安部氏には子どもはいないが、地域の子どもと保護者たちの様子を見て、情報交換を進めなければとの思いで「守る会」に参加した。

渡利地区は、昨年8月に実施した測定で「特定避難勧奨地点」の対象となる許容線量である、年間20_Svを超える地点があったにもかかわらず、10月8日の説明会で、避難を希望しない住民の声で、指定が見送られた。

安部氏は、「わたり土湯ぽかぽかプロジェクト」の活動を紹介した(注・線量が高い、渡利・大波・南向台・小倉寺の住民を、線量が低い、土湯温泉・土湯峠温泉郷で滞在してもらうというもの。「せめて除染がおわるまで、子ども・妊婦を避難させて!」という切実な声に、市民団体が温泉旅館とタッグを組んで始まった)。これまで約600名が参加し、週末にリフレッシュしてもらっている。

また、全国から一時避難の呼びかけがあるが、現地住民に届いているか、疑わしいという。実際、沖縄や石垣島などからも「交通費を負担するので来てほしい」との申し出があったが、住民には行き届いていないようだ(福島県が「止めて欲しい」と断ったようだ。「被災自治体は、住民の流出を懸念している節がある」と吉田氏も補足した)。

震災から1年経ち、テレビなどメディアは「これからどうなるのだろう」という不安の声を伝えている。今後、放射能とどう向き合っていくかを考えると、正確な情報を追求し住民に伝えていくことが、子どもたちの未来につながっていくことである、という思いを述べていた。

続いて発言した「安心安全プロジェクト」の代表である吉田氏は、原発関連産業で働いていた。氏は震災直後、避難疎開のための情報提供をしてきたが、南相馬市は除染を進め、避難を抑える方向に進んだ。ところが公共の建物の除染は、市の予算で実施するが、民間の保育園や幼稚園は自費になることに疑問を持った。吉田氏は仲間を募り、保育園などの除染を自主的に進めつつ、南相馬市に除染の予算を交渉していったという。

その過程で、桜井勝延市長が、震災後すぐマラソンに参加したことや、放射能に対する知識のなさや、「国が安全だと言っている」と根拠なく国を信じる姿勢に疑問を持った、という。子どもや妊婦の人に、健康被害が出てからでは遅いからだ。

南相馬市は、比較的放射線量が低い地域だが、10μSVという高い値の地域もある。それでも1年経つと、放射能に慣れてしまってきたために、改めて被曝の問題にどう向き合うべきか、考えているそうだ。「全国に協力を仰ぎながら、放射能汚染の除去を進めていきたい」と訴えた。

 除染よりも保障を

吉田氏によると、渡利地区では、除染を中止している。除染時に削り取った表土の仮置き場が無いためだ。また、除染アドバイザーとして南相馬市に入った、東大の児玉龍彦教授が「除染は緊急的なもの」としてきたのに、大手ゼネコンが現地に入り込んで恒常的なものになってきたため、不安や不信が生まれている。

除染した表土の仮置き場が決まらない以上、疎開が必要だろう、と述べていた。また、広島・長崎の原爆では1_SVの被曝で被爆者手帳が交付されていた。この基準を適用するなら、福島県全住民に被曝者手帳が支給されるべきだ、と問題提起した。「除染よりも保障を」と繰り返されていたのは印象深い。

県外避難させないための除染活動

住民作成の汚染地図配布を拒否する学校

安部氏、吉田氏の報告が一旦終わると、分科会のコーディネーターを務めた黒田節子氏は、「子どもたちの被曝は時間との戦いになっている」と、参加者に訴えた。その上で更に参加者からの質疑が続いたが、安部氏、吉田氏とも「何のための除染なのか?」という、現在高汚染地域で暮らす住民として、疑問を訴え続けていた。

具体的な例として、安部氏は、放射線量の高い地域の住民が、木に赤いハンカチを目印に付けたのに、行政が「道路交通法に抵触する」として撤去を求めた。あるいは、自主的に作成した汚染地図を小学校に配ろうとすると、「行政が作成したものでないから」と、学校側が拒否したという。また吉田氏から、除染に参加しない住民が「村八分」的な状況になること、また子どもを置いて出かけられない住民が、子どもを伴って除染に参加し、被曝していることなどが報告されると、会場からは深いため息が漏れた。

また、東京からの除染ボランティアについて、除染に対する知識もなく、単なる被曝労働に過ぎないうえ、問題が出た際に何の保障も無い状況では、「安易に行くべきではない」と警鐘を鳴らしていた。

今後の課題としては、安部氏、吉田氏とも、民間のレベルで除染に取り組むのは限界があり、「国および行政が責任を持って取り組むべきである」と結んだ。

 情報共有と継続的支援を

放射能の高汚染区域を支援するにあたって、二つの問題があると感じた。一つは、各地域からの支援表明や支援の物資、現金等が現地で有効に生かされているか、疑問が生じてしまっていること。もう一つは、現地の実情が、なかなかメディアでは伝わってこないことだ。安部氏が「正確な情報を得たい」と訴えていたが、私たちも同じ思いを共有している。

今後は、メディアを通じた高汚染地域との情報共有ではなく、今回のようなフォーラムを、規模の大小に関わらず定期的に開催し、直接共有することが求められる。それは、震災に対する風化とも闘わなければならないものでもあり、物資や一時避難の支援以上に、支援の継続性が問われている。

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