2012/3/14更新
3月1日、大阪・阿倍野区民センターで、「『朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪』(以下、「無償化連絡会」)結成集会」が行われた。この集会は、@朝鮮高校への『高校無償化』法の即時適用、A大阪府の朝鮮学校への補助金の全面回復、を訴えるもので、定員644名の大ホールは、立ち見が出るほどの盛況となった。
現在、日本政府は「拉致問題」などを口実に、全国に10校ある朝鮮高校を「高校無償化」の対象から除外したままだ。また、 全国の自治体から朝鮮学校への補助金などもまた、留保や支出中止とする自治体が増えている。特に、東京都の石原知事や大阪府の橋下前知事(現・大阪市長)による、朝鮮学校への攻撃が強まり、排外主義が煽られている。
朝鮮学校の生徒たちは、日本政府による朝鮮敵視政策によって、またポピュリスト・橋下から、どんな仕打ちを受けているのだろうか?(編集部・一ノ瀬)
「私たちは、高校無償化や補助金が欲しいから声を上げているのではありません。政府や大阪府が、子どもたちをいわれのない差別で排除していることが我慢できないのです」(会場での保護者の発言から)。
橋下は、府知事時代に「北朝鮮は暴力団と同じ不法な団体」「北朝鮮は不法国家、ナ チスと同じ」と暴言を吐いた(2010年3月)。こうした劣情を焚きつけるような発言の後に、橋下は大阪朝鮮高級学校(東大阪市)などを視察、朝鮮高校への「高校無償化」の対象とするための4要件を突きつけた。
内容は、@日本の学習指導要領に準じた教育活動を行うこと、A学校の財務情報を一 般公開すること、B特定の政治団体と一線を画すこと、C特定の政治指導者の肖像画を教室から外すこと。
これらの要件は、「在日朝鮮人の民族的アイデンティティを守り、育んできた様々な経緯や苦労を踏みにじる、受け入れがたいもの」(丹羽雅雄弁護士)であった。
しかし、朝鮮学校側は、子どもたちのことを考え、「高校無償化」の実現と大阪府の助成金の継続を守るために、府と交渉を重ねた。その結果、翌11年3月、橋下前知事は、検証の結果、朝鮮初・中級学校への10年度の補助金交付を決定。11年度分に関しても、執行する予定であることを明言した。
ところが、翌4月の統一地方選挙で、橋下前知事が代表を務める「大阪維新の会」が 府議会で過半数の議席を獲得すると、状況は一変する。教育常任委員会での質疑で、自民・維新の会の委員が、朝鮮学校への補助金支給に強硬に反対したのである。曰く、「肖像画は職員室からも外すべき」「独島・東海と記された朝鮮語版の地図があるのは問題。日本の見解のみを教育すべき」「拉致被害者が全員帰るまでは、補助金を交付すべきではない」…。
これらは、もはや「朝鮮学校の教育内容への介入であり、政治・民族排外主義を教育の場に持ち込むもの」(丹羽弁護士)だ。橋下前知事は、これらの意見が出されたことを口実に、同年9月、府議会で、朝鮮学校への補助金交付を盛り込んだ補正予算案を継続審議としたまま、橋下は責任を投げ出し、自らは大阪市 長に「転身」したのである。
会場では、大阪朝鮮高校無償化排除を提訴する弁護団から、いろいろな話が紹介された。朝鮮高校を卒業しても、大学入学資格検定(現在は「高等学校卒業程度認定試験」)の受験資格すらなかったために、朝高に通いながら定時制高校にも通ったこと。「朝鮮学校という同胞社会で、守られてきた」ことへの感謝。朝高卒業後に「日本社会」に飛び出していくことへの不安。「これからも一人の朝鮮人として誇りを持ち、生きていきたい」との思い…。
朝鮮学校の子どもたちだけを「高校無償化」や補助金の対象から除外することは、「日 本国が批准する『子どもの権利条約』でも禁止されている 民族教育権に対する侵害 」(集会で採択された大阪府知事・府議会議長に対する要請書より)である。こうした行政による民族差別を許さないために、日本人も行動していくことが求められている。
「無償化連絡会」では、大阪府・府議会への申し入れや、集会・街頭宣伝などを行っていく予定だ。
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▼朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪(無償化連絡会・大阪)/大阪市北区西天満3─14─16(たんぽぽ総合法律事務所内)/電話・06─6360─0550 FAX・06─6360─0515/郵便口座・00970─3─272801
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