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2012/3/14更新

★ 【潜入取材】   留置場から見えてきた「暴力団排除条例」の実態

一般市民にも襲いかかる暴排条例

フリージャーナリスト 角田裕育 

留置所で会った「暴力団関係者」たち

私は、昨年11月17日、神戸市教育委員会事務局を取材中に不当逮捕され、12月7日まで、兵庫県警生田警察署の留置場にいた。

逮捕された理由はさておき、山口組本家のある、神戸という土地柄だけあって、ヤクザもたくさん留置場にいた。彼らと吉本興業の接点が指摘されるように、笑いに長けた人が多く、退屈がちな留置生活のムードメーカーのようなところがあって、毎日が彼らによる漫才大会のようで、それなりに楽しめた。

私がライターであることを知り、勾留満期で釈放される前になると、「(俺は)不当逮捕や。記事にしてくれ」とい うヤクザ関係者も多かった。彼らがそう言うのも、無理はなかった。何しろ、逮捕事実の容疑が「とにかくヤクザだから捕まえる」といった感じの、暴力団関係者が多かったからだ。明らかに暴排条例を先取りした逮捕だ。

「暴力団関係者」とはよくいったもので、どうにでも拡大解釈できる。私の隣接房になったH君は、「組員ではな いのに、組員扱いで逮捕された」という。彼は、裏DVD製作に関わった容疑で逮捕されたが、きちんとした正業に就いた後も、兵庫県警が令状を取っては、何度も逮捕するのだという。

裏DVDの資金ルートを解明したいらしいのだが、それにしても滅茶苦茶すぎる。しかも、H君の担当刑事は、兵庫県警本部のマル暴だそうだ。H君の記事を、過去の新聞で調べたら、確かに何度も類似容疑で逮捕されていた。

「一度裁かれた容疑で、何度も逮捕する」のは憲法違反なので、兵庫県警は、法の穴を狙ったスレスレの容疑で、 逮捕を繰り返している。事実、彼と風呂で一緒になったが、足にタトゥーがあるだけで、ヤクザ的な彫り物と違う。

他にも、「兵庫署で逮捕されて不起訴、長田署で逮捕されて不起訴、生田署でもまた不起訴」という年配の組員もいた。四六時中、刑事が尾行して、逮捕しているようだが、容疑が明確にできない再逮捕など、おかしくないか。

少し毛色は違うが、こんな組員もいた。「知り合いの女の子が、レイプグループの被害に遭うたんや。相談受けて、グループの1人を捕まえて事務所に連れて行ったら、逆に逮捕・監禁の罪で、こっちが 逮捕されてしもうた。レイプグループの連中は、まだ全員逮捕されてへんのや」という。ヤクザが、民間警察の役割を果たしていた名残りとも思えるが、一般人がレイプ犯を捕まえて、警察に引き渡したら「お手柄」扱いされるのではないか。

つきまとう公安警察の影

「暴排条例」の恐ろしさが垣間見えないだろうか。たとえ正義の行為であっても、ヤクザが絡めば、「暴力団関係者」として、犯罪者扱いされかねない。また、本人に更正 の意思があっても、「関係者」と認定すれば、警察はしつこく付きまとう。かつての「赤軍罪」にそっくりである。「赤軍派関係者」と見做されれば、知り合いの知り合いまでガサ入れしてくる、あれである。

また奇妙に思うのは、容疑が固まらないのに、何度も逮捕するやり方は、刑事警察のやり方ではないということだ。公安じみているのだ。実は、この暴排条例は、公安絡みという説がある。噂でしかないが、さもありなん、という気がする。公安警察は、ただでさえ仕事が減っているのに、民主党政権になってから「上に報告を上げても次の指示が来な い」と、公安関係者は嘆いているそうだ。

仕事がなく、追い込まれた公安警察が、矛先をヤクザに向けている可能性はある。「暴排条例はカタギには関係ない」と思うなかれ。世間は、広いようで狭い。赤軍罪と同様、「ヤクザの知り合いの知り合い」というコジツケで、一般市民の家に当然のようにガサが入る日は、そう遠くないかもしれない。

そして行く先には、留置場が待ち構えているかもしれないのだ。警察権力の牙が、ヤクザとも新左翼とも、無関係の一般市民にも、襲いかかる日が確実に来る。

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