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2012/3/3(土)更新

TPPの加害性

「日本への影響」だけでは見えてこないTPPの本質

ジャーナリスト 大野和興さん講演

野田首相が「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加に向けて協議に入る」と表明。政府は、2月19日から、名古屋を皮切りに全国9カ所で「TPPの理解を深めるためのシンポジウム」をスタートし、TPP参加に向けての準備を進めている。推進派は「自由な投資・貿易の推進・拡大こそ、日本の国益を最大化する」「世界の流れに乗り遅れるな」と主張し、慎重派・反対派は「農業や食品の安全、医療・保険が犠牲にされる」「結局は、アメリカ主導の貿易ルール」と批判するTPP。

ジャーナリスト・大野和興さんは、TPPを理解するためのポイントとして、@世界情勢の変化の中での「経済ブロック化」、A加害者としての日本資本と日本国家、B「1%」と「99%」の世界である生活者の視点、をあげる。大野さんが2月10日に大阪・茨木市でおこなった講演「TPPと『安心して生きる権利』」(共催=北摂反戦民主政治連盟/地域・アソシエーション研究所)をまとめた。(文責編集部・一ノ瀬)

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軍事問題でもあるTPP

TPPは、農業の問題や「都市と農村」の構図など、様々な問題を抱えていますが、その本質を見抜くには、日米同盟と安保条約という視点が重要だと考えています。

これまで日本政府は、TPP参加の理由を、日米関係修復→震災復興→世界恐慌対策、と変えてきました。鳩山元首相の「普天間基地の県外移設」等の発言が、日米の同盟関係を損なった、とバッシングを受けました。次の菅首相が、唐突に「TPP」を持ち出したのは、対米関係を修復する目的だといわれています。

第2次大戦の教訓である「戦前のブロック経済化が戦争へと導いた」という総括から、戦後経済の原則として自由貿易を決めました。GATTからWTO協定に至るまで、「自由貿易が平和への道」というわけです。

しかしTPPは、経済ブロック化を促進し、軍事とも密接に結びついています。昨年、オバマ大統領は、「アジア・太平洋地域に目を向け、米軍を再編する」と語り、米海兵隊2500名のオーストラリア常駐を発表しました。韓国・済州島では、米軍基地建設が進んでいますし、ハワイに5万人、グアムに5000人、沖縄に4万5000人という米軍配備は、TPPの範囲と重なります。アジア・太平洋地域で、アメリカが中国と覇権を争い、経済・軍事の両面で中国を封じ込める戦略です。

昨年12月、野田政権が「武器輸出三原則の緩和」を発表し、防衛装備品の国際共同開発や共同生産への道を開きました。これは、日米同盟の強化と同時に、日本が巨大な軍事市場に身を投ずることになるのです。

「1%」の側にいる日本資本―ISD条項の脅威

TPPは「非関税障壁」を槍玉に挙げています。資本の農業進出を制限する農地法、漁師の権利を守る漁業権、労働者の権利、国民健康保険制度、遺伝子組み換え食品の表示義務などです。これらが「非関税障壁」として取っ払われれば、私たちの生活は、資本の食い物にされるでしょう。しかし、その被害性だけに目を奪われてはなりません。

TPPの本質が最も出ているのが、《投資家対国家の紛争解決》を定めた「ISD条項」です。環境・人権などに関わる各国のさまざまな規制よりも、多国籍企業や投資家の利益を優先するという、とんでもない内容です。

日本も、対外投資を拡大させています。海外に進出している日本資本にとって、ISD条項はとてもおいしい話なのです。

例えば、フィリピントヨタは、労働組合を認めず、団交も拒否し、233名の組合員を解雇するなど、労働者の人権を踏みにじっています。もし「ISD条項」が適用できると、トヨタはフィリピン政府に圧力をかけて、労働組合つぶしを強要し、賠償を請求するでしょう。

TPPを考える時、こうした全体像を見ないと、「日本を守れ」という偏狭な主張に陥ってしまいます。「在特会」などの民族差別排外主義の勢力も、「TPPは日本国家の関税権を犯す」「国家主権を危うくする」として、TPP反対を唱えています。

TPPは、「99%の収奪される側の視点」「一方的な被害者意識」だけでは、その本質を見ることができません。TPPによって日本も「1%の収奪する側」に立つのだ、という面を忘れてはならないと思います。

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