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2012/3/3(土)更新

シリア

従軍記者が見た反乱軍の実態

西側メディア報道のウソ

米国は、カダフィと同じくアサド大統領を悪魔化することで、軍事介入を正当化する非難決議を安全保障理事会に提案した。が、中国・ロシアが拒否権を行使したために、挫折した途端、米国代表のスーザン・ライスが「胸が悪くなる」と連呼する映像が、マスメディアで繰り返し流された。イスラエルの残虐行為を非難する安保理決議に対して何十回も拒否権を行使したのは米国であり、1991年以降イラク制裁・戦争で100万人以上を殺害したのも米国であることを知っている我々にとって、米の二重基準こそ「胸が悪くなる」。シリアでは、西側が報道するように、アサド政権が一方的に「民主主義を求める人々」を殺害しているだけなのか?リビアの場合と同じように、西側のトリックに騙されているのではないか? という疑問がある。

以下、トルコのビルケント大学の中東史準教授ジェレミ・サルトの小論「眠れない時代―シリアの状況」(パレスチナ・クロニクル、2月15日)の一部とBBC戦場記者のレポートを訳する。(脇浜)

(以下一部全文は1439号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)


西側メディアによるプロパガンダの洪水である。シリア政権のイメージを悪化させるものならば、むちゃくちゃな嘘でもよい。例えば、シリア政府は、捕まえた反乱者を船積み用コンテナに詰め込んで海へ投棄している、とロンドン・ガーディアンが報道した。反乱側の犠牲報道についても、自由シリア軍やその他反乱武装団の犠牲者の数は報道されるが、死体の写真も葬式や親族が悲しんでいる映像も、一切報道されない。BBCのポール・ウッズ記者が、2月12日にホムズから報告した記事を抜粋する。

※  ※ ※

クサイル地域付近で、自由シリア軍指揮官マジ・アハメド・ヤーヤは、「自分たちはシリアのすべの宗教や宗派 ―キリスト教徒、ムスリム、アラウィト、スンニ、ドルーズ、シーア―のために闘っている。我々は、今シリアで初めて自由を経験しているのだ」と語った。

しかし次の言葉で、この反乱が世俗主義バース党に対する宗教戦争であることを暴露した。「我々は、初めてシリア全土に神の言葉を告げることができるのだ」。自由シリア軍の公式ドクトリンは、非武装デモ民衆の守護であるが、実際には、彼らはゲリラ戦争をエスカレートさせている。

 捕虜の殺害

私は、マジ・アハメド・ヤーヤたちの、クサイル地区の政府軍基地の襲撃に同行した。60人以上の民兵による大規模攻撃で、リビアで見た民兵と比較すると、はるかに高度な訓練を受け、規律正しく指令に従っていた。1時間ばかり基地に向かって射撃したが、政府軍が反撃し、大砲を撃ってきたため退却し、攻撃は失敗した。

その後、民兵の1人が、12月に撮ったというビデオを見せてくれた。政府治安軍車両を待ち伏せ、襲撃したときのビデオであった。…

「みんな殺してやったよ」と彼は言った。「捕虜を殺したのか?」と質問すると、「当たり前だ。シャビハは処刑するのが方針だ」と答えた。…上官は、携帯電話のビデオで撮影したシャビハ捕虜の映像を見せた。

それは、両手を背中で縛り地面にうつ伏せにして、1人1人順番に首を切り落としていく映像であった。ナイフを首に突き刺した男が、「自由のためだ」と言って切り裂いた。次に「われ等の殉教者のため」、次いで「イスラエルに協力したため」(アサド政権はイスラエルの敵対政権であるにもかかわらず)と言って、次々と殺していった。

 板挟みになる住民

これが、西側メディアが「ホムズで篭城し、政府軍に虐殺されている」と報道した反乱者たちである。ホムズは、ザバダーニの町と同じように反乱軍の手中にはないが、反乱軍は一部の地域に立てこもることに成功し、政府軍には彼らを追い出す命令が出た。住民が板挟みになって、犠牲者が多数出たのは確かである。

さらに、英国とカタールの特殊部隊が、反乱軍とともに行動している、という報告も聞いている。リビアと同じ状況になってきた。暴力をエスカレートしているのは、政府軍と反乱軍の争いに加え、ダマスカスとアレッポへの爆撃とともに、地元および外国人のイスラム狂信主義者による、民間人虐殺である。

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