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2012/2/20(月)更新
野田政権が、再稼働に向けた工作を活発化させている。1月27日、中国電力島根原発2号機が定期検査で停止。稼働中の3基も、@関西電力・高浜3号は2月20日、A東京電力・柏崎刈羽6号は3月末、B北海道電力・泊3号は4月末に、それぞれ定期検査入りするので、日本の全原発停止が実現するためだ。
ストレステスト聴聞会終了後の再稼働に向けたプロセスは、@保安院が大飯原発のストレステスト審査書を確定させ、A「チェック権限はない」(班目委員長)と責任回避に走る原子力安全委員会による「確認」手続きに移り、B「地元了解」プロセスへと進む。
野田政権が再稼働の突破口としているのが、大飯原発3・4号機(福井県)だ。ストレステスト意見聴聞会は、傍聴者を閉め出し、3人の委員が原発関連企業から献金をもらっていたことが判明した後も留任させるというデタラメなもので、政府サイドの手続きは、強引に進められている。
一方、地元への働きかけも活発化している。「原発銀座」と言われる若狭湾沿岸部を抱え、関電発電量の半分を生産する福井県がターゲットだ。ストレステストのデタラメぶりと、地元への攻勢をまとめた。(編集部・山田)
「(福井県)経済界としては、新幹線が認可されないなら原子力は今までみたいに国の言うとおりにしてはいかん、国との対立もやむを得ないと思っていた。(しかし)新幹線が認可されたことで、問題はなくなった」―福井県経団連・川田達男会長のコメントだ(1月29日、毎日新聞福井版)。
野田政権は、昨年12月、県が要求した経済振興策(@整備新幹線の敦賀までの延長、A中部縦貫自動車の早期開通および予算確保)と、B40年以上稼働している原発の停止に対し、要求どおりの満額回答をした。先の県経団連・川田会長は「前倒しで整備ということも過去にはあった」と、期待を述べている。
福井県は、「もんじゅ」運転再開と引き替えに、新幹線の延伸を求めてきた。それは「もんじゅの運転再開を認めたいきさつを頭に置いて(整備新幹線を)進めてもらわないと困る」(2010年11月3日、西川知事)との発言でも裏付けられる。
原発の安全性が厳しく問われているにもかかわらず、再稼働への露骨な利益誘導が性懲りもなく続いている。
野田政権は次の手も準備している。湖西線へのフリーゲージ・トレイン導入だ。フリーゲージ・トレインとは、在来線の線路でも走れるよう車輪の間隔を変えることができる新幹線で、敦賀駅以西は新線を建設せず、改軌してミニ新幹線もしくは敦賀駅に軌間変更設備を設けて、京都・大阪方面に直通する計画だ。
西川一誠福井県知事は、今のところ再稼働に同意できない、と表明している。「福島事故が現行の安全基準で防げなかったのだから、新たな厳しい基準で再評価されなければ、再稼働に合意できない」という立場だ。
しかし、県財界が再稼働に前向きになった今、新基準が示されて「合格」となれば、同意する可能性は高い。
新基準の内容こそ問題だ。進行しているストレステストも、津波に対しては安全基準を引き上げ、対策をしているが、耐震基準はほとんど変わっていないからだ。
福島原発事故では、津波前に地震の揺れでパイプが破損し、放射能が漏れていたことを示すデータが明らかになっている。耐震基準の見直しは必須だ。ただし、耐震基準の見直しは、過去の経緯をみれば、10年近くの時間を要することになる。再稼働を急ぐ野田政権が、耐震基準の見直しに踏み込むことはない。
「地震の危険性を真剣に検討し始めた途端に、原発は止めざるを得なくなるので、意図的に地震の危険性議論を避けている」と指摘するのは、松下照幸さんだ。同氏は、美浜原発、高速増殖炉もんじゅの危険性を告発。反原発を公言して町議会議員選挙に当選(2003年)。「森と暮らすどんぐり倶楽部」を主催している。
松下さんたちは、美浜原発やもんじゅの真下に活断層があることを指摘し続けてきた。元電力会社幹部も、「活断層が真下にある原発施設の安全設計は成り立たない」と認めているため、関電は、原発真下にある活断層の存在を否定し続けている。
大飯原発についても、「関電は、熊川断層を、連動対象断層から意図的にはずしている」と批判する。大飯原発のすぐ横を、FOaとFObとという断層が海域を直線上に走っており、その延長線上に熊川断層が走っている。
関電は、<FOaとFOb断層に熊川断層が連動する>と想定すると、大飯原発が地震動に耐えられないと判断しているため、連動を否定する。松下さんたちはこの危険性を指摘し続けているが、「関電は返答できないまま」だという。「関西電力と40年近く交渉を持ってきた私たちは、彼らの姑息な姿勢が、手に取るように透けて見える」と語る松下さんは、「大飯原発を再稼働したいなんて、危険きわまりない行為」「最低限、地震の問題で、私たちの疑問に答える義務がある」と語る。
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4年後に原発のない町になる美浜町(福井県)で森と暮らすどんぐり倶楽部代表 松下照幸さん 松下照幸さんは、昨年7月、美浜町長に対し脱原発に向けた政策提案をした。福島原発事故以降、老朽原発の運転延長は認められず、新規原発建設もあり得ないので、美浜町は4年後には原発のない街になる。今から、原発補助金に頼らないまちづくりを模索しなければならない。松下さんの脱原発提言を簡潔に紹介する。 (文責・編集部) 脱原発に向けた政策提言野田政権が、40年以上の原発について、運転延長を認めないと表明したので、美浜町ではまもなく2基が運転停止します。4年後には最後の1基が停止し、美浜町は原発のない町になります。 原発立地地域であっても、安全神話は完全に崩れました。しかし、脱原発を選択するには、雇用・自治体財政の問題を解決しなければなりません。こうしたことから、若狭地域の人たちを中心に、自然エネルギー推進の政策提案を行うネットワークを作っています。 昨年7月に、美浜町長に脱原発に向けた政策提案をしました。3つの柱を掲げています。まず、@雇用確保と自治体財政の破綻を防ぐ政策が必要です。特に美浜町の下請けの零細企業を救済するために、自然エネルギーの開発は、廃炉ビジネスと共に重要です。 次に、A観光による村おこしのために電線の地中化を提案しています。美浜町は、原発交付金をあてにした土建業が主要産業のひとつとなっているため、観光立地に必要な土木事業を行いながら、他産業への転換を促します。 最後に、B使用済み燃料がプールに保管されているのですが、とても危険です。管理・処分地を他所に見つけるのは極めて困難なので、廃炉プログラムの中に、使用済み燃料の乾式貯蔵を期限付きで受け入れ、その間に現状より安全性の高い保管方法の技術開発をする、という提言です。 美浜町長も、再度の提案を聞くと約束しています。さらに具体化した第2次提案を作るために、今はそのことに集中して活動しています。 |
ストレステストは、電力会社からのシミュレーション結果の報告であり、再稼働のための形式的なもので、住民の不安を解消するには、ほど遠い内容だ。
意見聴聞会でも委員の井野博満さんは、「ストレステストは、方法論をはじめ、まだ発展途上。(昨年)12月末までに2次評価を出すということになっているのに、事業者がやっていない。再稼働を急ぐあまり、1次テストのみで評価を得ようとしている」。
同委員の後藤政志さんも、「事故が起きる条件は無限にある。まだまだ検証しなければならない問題がたくさんある。役所は質問に対してまともに答えていない。そのことが福島原発の事故の原因でもある。それがすごく気になる。努力しているから認めてください、と言い換えている。いかに安全性の議論になっていないかだ」と批判している(第6回意見聴聞会)。…
「過酷事故の際の住民避難計画も立てられていない」と指摘するのは、前述の松下さんだ。住民の避難について政府は、30q圏内の避難計画を立てるよう自治体に求めているが、実際の避難計画は、とても複雑で問題山積だ。
@政府が決めた30qという線引きは妥当なのか? A避難先を何処にどう確保するのか?という問題から、B搬送のための人員の確保、C寝たきり高齢者や入院患者の搬送の危険性など、簡単に結論が出ない問題が多く、現実的な避難計画を策定するには時間もかかり、困難だ。……
福島事故を見た地元住民の世論を反映して、立地市町村の首長や議会が、再稼働に合意できる状態ではない。……
原発の安全議論は、福島原発の教訓の上にしかあり得ない。福島事故の調査報告が出ていない現段階で、立地自治体が再稼働に同意すれば、逆に住民の不安を増幅することは必至だ。