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2012/2/9(木)更新
1月13日付「パレスチナ・クロニクル電子版」イスマイル・サラミ
イラン人原子力科学者ムスタファ・アハマディ・ロシャンが、1月18日朝、テヘランで、暗殺された。イスラエル軍参謀長は、事件前の記者会見で、にやにや笑いながら「今年は、イランで異常なことが起きるよ」と予言めいた発言をしていた。米国務長官は、事件後に一切の関与を否定し、「米国は科学者暗殺に反対だ」と語った。
イスラエルのリベラル派新聞『ハアレツ』は、「安全保障を軸とするイスラエルにはイラン人科学者暗殺を問題視する文化はなく、反対に、それを問題視することを反逆的と見る文化がある。しかし、科学者を数人殺害しても、数百人の科学者が関与するイラン核プログラムを阻止できないし、反対にイラン科学者暗殺は、こちら側の科学者の身辺を危うくするのではないか」と書いている。
▲殺害されたロシャン氏 |
実際、もしもイスラエルや米国の核科学者がイラン人工作員に暗殺されたら、いったいどういうことが起こるだろう。
以下は、イラン人知識人イスマイル・サラミがパレスチナ・クロニクル電子版に寄稿した小論の抄訳である。 (訳者)
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イランの裁判所が、イラン系米国人CIA工作員のアミル・ミルザエイ・ヘクマティに死刑を宣告してから2日後、オートバイに乗り、スキーマスクで顔を隠した男2人が、ナタンツ・ウラン濃縮施設部長=ムスタファ・アハマディ・ロシャンの車に磁石爆弾を仕掛け、この若き科学者を運転手もろとも殺害した。両者の間に因果関係はない、とは言い切れない。
英国のアリステア・バート国務大臣(中東問題担当)が最近イスラエルを訪問し、「みんなで力を合わせて、テヘランに核計画を中止させる圧力をかけよう」と呼びかけた。彼は、「英政府は、国内のすべての金融機関に対して、イランの金融機関と取引することを違法とする、これまでで最も厳しい金融制裁を課した。他国もこれに従うように働きかけている」と、誇らしげに語った。
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それに応えるかのように、イスラエル国軍参謀長ベニー・ガンツ中将は、イランに対する核科学者暗殺やその他の破壊活動では、英国とイスラエルは使命を共有していることを示す発言をした。1月10日の国会外交防衛委員会で、2012年にイランでは「異常なこと」がいろいろ起きるであろう、と言った。
すでにワシントンのタカ派は、比喩的な意味での「対イラン核戦争」(つまり、イラン核科学者暗殺)の宣戦布告をしている。イラン科学者殺害は、18日の暗殺が初めてではなく、おそらくCIAかモサドの犯行で、何人かが殺されている。
キリスト教右派が支持する共和党大統領候補リック・サントラムは、それを「素晴らしいこと」と言った。「時々、イランの核計画に従事している科学者が死体で発見されることがある。率直に言って、私はそれを素晴らしいことだと思う」と、サウスカロライナ州グリーンヴィルでの選挙演説の中で言った。彼はさらに、「ロシア人だろうが、北朝鮮人だろうが、イラン人だろうが、イランの原爆作りに関わっている科学者に、お前らの身は安全じゃないというメッセージを送るべきだ」と付け加えた。
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数々の核科学者暗殺の有力容疑者集団の中に、IAEA(国際原子力機関)も含まれる。ムスタファ・アハマディ・ロシャンは、殺害される2週間ほど前に、IAEA検査官と会っている。IAEA検査官と会った後に殺されたのは、偶然とは思えない。このような疑惑が起きる根拠として、これまで暗殺されたイラン人核科学者の名前と役職などの身元が、IAEA発行の制裁リストの中に載っていたことが挙げられる。
ガンツは、「2012年、イランでは異常なことが起きる」と言った。イランは最悪を覚悟しているが、敵(イスラエル・米国)の方も、いつまでも犯罪行為を繰り返すのであれば、同じように「異常なこと」を覚悟しなければならないだろう。
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