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2012/2/9(木)更新

日本の占拠運動

経産省前脱原発テント強制排除

枝野経産相は、撤去を言う前にテントひろばに向き合うべきだ

テントひろば運営委員 八木健彦

原発再稼働への布石=退去通告

発端は1月24日の、枝野経産相の記者会見だった。

経産省で枝野経産相の定例記者会見があり、彼は自らテントを話題にして、「テントの自主撤去を強く求める」、それを「文書でもって通告する」と言明したそうである。理由はテントは不法占拠で、また火気に関して防火管理上の危険がある、ということだそうだ。

それを受けて、経産省大臣官房情報システム厚生課厚生企画室長は、「1月27日(金)17時までに当省敷地からの退去及びテント・持ち込み物等の撤去命令」を文書でもって通告してきた。その理由として、火気についての細々としたことが書き連ねられている。要するに、省内の管理規則に反するから撤去、ということのようだ。

この経産省の一連の行動は、とみに強まっている再稼働策動の重大な一歩である。とりわけ、ストレステスト意見聴取会(1月18日)での、@傍聴人排除、A利益相反委員による審査(三菱重工から多額の献金を貰っている委員が、三菱重工製の原子炉のストレステスト結果を審査する)という不法行為、B密室での少数委員によるお墨付き─という、なりふり構わぬ姿勢と共通のものである。

さらにはIAEA団が23日に来日しており、26日には大飯3・4号機を「視察」し、ストレステストにお墨付きを与えるという仕組みのようだ。この流れのただ中に、1月24日の撤去命令はあったのだ。

枝野経産相に会見を申し入れ

その日の夜開催されたテント運営会議では、1月27日には、記者会見・声明の発表、枝野経産相への会見申し入れ、そして午後4〜6時の抗議行動を決定した。

そして翌25日には、午前中に経産省に「撤去命令の撤回と経産相との会談要請」を申し入れた。経産省から、「経産相との会談はできないが、担当官が担当する」との提案があり、午後3時半より経産省内で1時間ほど会談。経産省側は企画管理室を中心に5名、テント側は6名出席。

企画室の言い分は要するに、防火規定による撤去の一点張り。

これに対し、テント側としては、「@テントには全国各地、世界各地から来訪者があり、脱原発の公共空間となっている。A経産省が原発推進政策を変えないので、やむにやまれずテントを立てて座り込んでいるのであり、『防火規定違反だから撤去せよ』との経産省の主張と、テントの原発停止・再稼働停止の主張は、レベルの違う話である」と話し、「大臣が会談できないのであれば、副大臣や政務官、大臣官房の担当者など、しかるべき人物との会談を実現してほしい」と求めた。

そもそもテントを立てたのは、経産省が原発大事故の責任に頬被りしたまま、露骨に再稼働に動き出したからであり、それゆえ、経産省の敷地内とはいえもともと市民に開放していた空間を、市民の脱原発の意志を表現する場としようということであった。それは上関の青年たちの10日間ハンストと連動し、とりわけ10月下旬からの福島の女たち〜全国の女たちの座り込み行動で命を注がれ、大きな民衆ひろばへと転化した。

そして全国津々浦々の、さらには全世界の人々の脱原発を求める意志と思いに支えられ、反原発の象徴として、それらを一つに結び合わせ、交流・表現する、人々の巨大な意志空間=公共空間として日々成長し続けている。

それを原発の維持推進のために省内の管理規則で押し潰そうとする経産省こそ、国有地を私物化しているのであり、この国の空間を私物化しているのである。

(以下一部全文は1437号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

 火事の危険より原発の危険

テントは24時間の泊まり込み、「東京都フクシマ村・とつきとおかの座り込み」に表されるように生活の場でもある。そして雪が降り積もるような厳冬下、暖房の確保は生存権・生活権に関わることである。

1月27日、午後1時から近くの弁護士会館で記者会見が行われた。テントから淵上・正清両氏、椎名さん、福島から急遽駆けつけた女性3人、そしてたんぽぽ舎、福島緊急会議が出席。会場はメディア13社及びフリーランスの記者や、傍聴人等、40名程度で熱気に満ちる。

福島の女性たちは「本当のことを書いて!本当のことを報道して!」と記者たちに訴える。問われているのは、メディアの、各記者の、姿勢それ自身なのだ。

経産省に殺到した「命の叫び」と抗議の声

淵上代表、「とつきとおか」の世話人・椎名さんのアピールの後、たくさんの方々が反=脱原発、再稼働阻止、東電と国の責任・賠償追及、放射能から子どもたちを守れ、テントの意義、テントを守れ、等々と訴える。原発いらない福島の女たち・全国の女たち、反原発弁護団全国連絡会、テント弁護団、双葉町から避難されている女性、浪江町の被災牧場主、六ヶ所村で活動されている女性、ジャーナリスト、たんぽぽ舎、福島緊急会議、東電前アクション、東京occupy運動、反原発民衆法廷、市民法廷、日本山妙法寺の上人、中学生、テントひろばの座り込みやハンストの常連である80代の男性と女性……。

とりわけ福島の人々のアピールは、原発被災の残酷さ、東電の非人間性、今も続く苦しみと放射能の恐怖を明るみにし、その中で生き証人として生き、闘っていく決意に魂を突き動かされる思いをさせられる。そして闘いへの意志を新たにかきたてられる。まさに「命よ叫べ」というものであった。

この時経産省に殺到した抗議メールは8000通に達し、抗議電話は鳴りやまず、3万筆もの国際署名が送り届けられた。フランスの元環境相も、福島の女たちに連帯を表明した。

その時経産省は、全く登場しなかった。早々と入り口を閉め切り、「乱入を恐れて」内張よろしく内部警備を普段の7倍にして閉じ籠もっていたのである。自分の蒔いた種とその反響の大きさに脅えて、立ちすくんでいたというのが真実である。

 テントは存在し続ける

原発がある限り、原発全廃が明確にされない限り、そして今なお放射能被災に苦しむ福島の人々への「避難の権利」を含む賠償と補償が完全実施されない限り、テントは存在し続ける。それは「一部の人々」の意志ではなく、原発に反対し、脱原発を求める広汎な人々の意志と思いが創り上げているものだからである。27日以降、厳寒の中、テントを訪れる人は急増し、とくに初めてという方が多い。泊まり込みへの志願者も多くなっている。

日本の原発54基のうち、51基が停止している。残る3基も3カ月中に停止する。枝野経産相も認めるように、それでも電気は足りている。福島第一原発の過酷事故と被災の苦しみを通じて、いま、脱原発を実現していく好機が到来しているのだ。そこにこそ教訓を生かすべきであり、福島の被災者たちの<命の叫び>を受けとめるべきである。テントにはこの<命の叫び>が込められている。

枝野経産相は「テント撤去」を言う前に、まず、テントひろばに向き合い、そこに体現されている幾万の人々の意志と声に耳を傾け、テントひろばとの話し合いに応じるべきである。…

それぐらいの政治家としての矜持を持たずして、今の現実に立ち向かうことはできないはずだ。

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