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2012/2/9(木)更新

福島原発事故の94倍のセシウム(六カ所村は57倍)

超危険!東海茨城・六ヶ所村青森

使用済核燃料再処理工場の高レベル廃液

原発再稼働に向けた準備が着々と進められている。原発を推進してきた原子力村のメンバーによって、ストレステスト、IAEA検査など、結論ありきのセレモニーが続く。

再稼働阻止は当面の重要課題だが、東海村と六ヶ所村再処理工場に貯蔵されている高レベル廃液の危険性は、まだ広く認知されていない。両施設は、いったん過酷事故に見舞われると福島事故をはるかに上回る放射性セシウムが放出される可能性がある。高レベル廃液は、全電源喪失等の事故により冷却できなくなると、自己崩壊熱で約40時間で沸騰し始め、水素爆発の可能性も指摘されている。

放射性廃液の環境放出事故防止に関わる質問状を提出した「三陸の海を放射能から守る岩手の会」世話人・永田文夫さんに電話インタビューした。(文責・編集部)

「想定外」では済まされない危険原発関連施設

「三陸の海を放射能から守る岩手の会」世話人 永田文夫さん

──昨年11月、「東海再処理工場の高レベル廃液の安全管理についての質問状」を提出しましたが、質問状の趣旨は?

東海再処理工場の高レベル廃液

総量 393m3
濃度 1010Bq/cm3  

◇うちセシウム137(六ヶ所資料から推定):
1.4×1018 Bq (140 京Bq)
*六ヶ所セシウム137  3.6×109 Bq/cm3
◇広島原爆 8.9×1013 Bq ( 89 兆Bq)
◇福島事故 1.5×1016 Bq (1.5 京Bq)
*出典 昨年6月IAEA への政府報告書

広島原爆の1万5800発分
福島事故放出の 94倍の量

大変な量の高レベル放射性の廃液だ

高レベル廃液とは?
使用済み核燃料を高温の硝酸で溶かして
プルトニウムとウランを取り出した残りの廃液。
セシウムなどの放射性物質が高濃度で存在している。

永田…高レベル廃液は、極めて高密度の放射能を有し、かつ長い半減期の放射性物質も含むので、ガラス固化した上で人間生活環境から完全に隔離処分する必要があるとされています。東海村の廃液には、福島事故大気放出の約94倍の放射性物質が含まれており、全電源喪失・パイプ破断などで冷却できなくなると、自己崩壊熱で24〜50時間後に沸騰し始め、放射線分解水素による爆発の可能性もあります。そんな危険なものが、廃液状態で大量に東海村と六ヶ所村に保管されているのです。

福島原発並みの津波が東海村を襲えば、首都圏は言うに及ばず、日本の半分位が人の住めない場所になってしまうでしょう。

福島事故を経験した今、これほど危険な放射性物質が、不安定な液状のまま国内2カ所(東海村・六ヶ所村)に貯蔵されている事実は看過できません。原子力研究開発機構は、国民の不安に具体的に答える責務があるはずです。

──「回答書」が届いたそうですが、内容は?

永田…保安院は、事故後2回ほど指示を出して、対策を講じてはいます。しかしそれは、@電源車を配備する、A窒素ボンベを用意して水素を排出する、B瓦礫撤去用の重機の配備、C防水扉の設置、といった小手先の対策でした。

残念ながら原子力研究開発機構(JAEA)の姿勢は、原発事故があってなお重大過酷事故を想定せず、事実に学ぼうとしない、「無責任な楽観論」に終始しています。到底受け入れられる内容ではありませんので、3月頃に再質問を予定しています。技術責任者の出席をともなった交渉を要求しています。

『環境に漏れ出すことはない』の一点張り

──無責任な楽観論とは?

永田…「回答書」の基本姿勢は、何を聞いても「高レベル放射性廃液は環境に漏れ出すことはありません」と書かれているところにあります。

福島原発事故について国や東電は「想定外」と言い逃れをしていますが、とにかく「漏れ出す」事故があり得ることを実証したのです。福島原発事故の事実を踏まえず、「環境に漏れ出すことはありません」の一点張りでは、回答になりません。これでは思考停止です。

(以下一部全文は1437号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

珍説・津波の水没で、貯槽は海水冷却される?

──再処理工場の地震・津波対策は?

永田…再処理工場は、原発以上に複雑で危険な化学工場です。「高レベル放射性廃液貯槽」「プルトニウム溶液施設」「使用済み核燃料プール」の3つが、高密度放射能が集中しており、まず守るべき箇所です。

岩手において今回の大津波を経験している私たちは、「福島原発事故のように15bもの大津波に襲われた場合、廃液貯槽を守る最後の手段はあるのか」と強く質しました。

それについて回答書では、 貯槽及び配管はステンレス鋼製で、セルは頑丈な鉄筋コンクリートでできているので、津波に耐えうるとし、可搬窒素ボンベからのガス供給などから沸騰や爆発はなく、周辺環境に影響はない、と書かれています。

なかでも特筆すべきは、「福島原発並みの津波襲来により水没状態の高放射性廃液貯槽は、海水により冷却される」などと回答していることです。これが原子力技術に関する日本最高の専門機関の答弁でしょうか。

津波による巨大な破壊力から工場の安全機能を維持しなければならないときに、「海水に水没し冷やされるから大丈夫」とは、信じられない回答です。

東海再処理工場と六ヶ所再処理工場の廃液の濃度から放射線量を計算すると、セシウム137は約140京(「京」は「兆」の1万倍)ベクレルとなり、福島原発事故の大気放出量の約94倍にもなります。少しでも漏れたなら、首都圏にある工場の位置からして破滅的な大災害になることは間違いありません。その最悪の場合を想定しない安全管理は、あり得ません。

 即時再処理撤退を宣言し廃液の安全化を急げ

永田…液体状の「高レベル廃液」は危険―これは誰が考えてもわかることです。にもかかわらず、2008年12月以来休止していた六ヶ所再処理工場が、正月明けから突然に、アクティブ試験の準備に入りました。

「福島老朽原発を考える会」など首都圏の市民は、1月26日に抗議と即時停止の要請文を提出しました。このような危険な工場は、今すぐ撤退を宣言し、廃液の完全な安全策を国民に見える形で実行するべきです。

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