2012/1/30(月)更新
生活保護増加に歯止めをかけるために就労支援を集中実施する、という厚生労働省の改善策をニュースで知りました。ひきこもりやニートでお馴染みの就労支援が、生活保護受給者にまで広がって来たのです。就労支援というものが、いかに期待はずれのシロモノか、世間には知られていないようで、はなはだ残念です。
私の友人がつい最近、就労支援の相談窓口に行ったところ、「面接を200社受けるくらいの覚悟でがんばってください」と言われました。不採用にもへこたれずに頑張れよ、というエールなのでしょうが、冷静に考えると、ひどい言いざまです。週に1回、月4回面接を受けたとしても、1年に48社。200社面接するのには、4年以上も就活を続けなければいけません。大学新卒じゃあないんだから、応募できる就職先だってそんなにたくさんはない。
科学が進歩して機械化が進むと、熟練の技師の代わりに、ロボットが工場で働くようになる。その結果、人間がやる仕事は、誰でもできる単純労働ばかりになる。このような状況で、働くのに必要な「能力」とは何なのでしょうか。思いつくのは、低賃金と無味乾燥な仕事に対する忍耐力ですが、そんなのは人間である以上、訓練して身につけられるものではありません。
就労訓練では手に入らないものが、3つある。学歴、職歴、経験。何カ月、何年就労訓練を受けても、この3つだけは手に入りません。でも、職につくうえで採用する側が一番重視するのが、この3つなのです。就労支援ではなく、大学の授業料を無料にするとか、失業者を公務員として採用するとかしたほうが、民間企業が欲しがる人材に近づく。お金をかけて、採用する側が敬遠するような人間を創り上げている場合ではないのです。
すべての就労支援を打ち切り、そのあまったお金を広く失業者に直接手渡すのが一番いい。ひきこもりやニートに対する就労支援も、結局のところ、働かない人間に対する懲罰以外のなにものでもありませんでした。毎月とられる訓練費は罰金、就労訓練は懲役と言い換えることができる。しかも、就職に結びつかないのだからあんまりです。根本的に、仕事に直結するような技術を数カ月から1年で身につけようというのが、間違っている。熟練した技術というのは、1つの仕事を10年くらい続けることで、身につくもの。働く練習をすると、働く練習だけがうまくなります。
仕事の絶対数が少ないのですから、皆で分かち合ったほうがいい。8時間以上労働は法律で禁止するくらいの、ごりっとした労働環境の改善、時短が必要です。週休は3日。そのうち1日は、仕事だけでなく、遊びも休みとする、「のんびりする日」に制定しよう。家にごろごろ、テレビも見ない、パソコンもやらない、完全休養の日を週に1回もうける。そのことで、ワークシェアリングと同時に、低エネルギー社会が実現する。今の日本が抱える大きな社会問題がどーんと解決するではないですか。
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