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2012/1/30(月)更新

【連載インタビュー】

労働問題としての「ひきこもり」

ひきこもりとアルバイトを繰り返す日々

河田健一さん(39才・仮名)

アルバイトと引きこもりをくり返してきた河田さんは、両親と妹との4人家族。現在は、精神障がい者の就労を支援するNPOの紹介で、職業訓練を兼ねた仕事に就いている。

中学・高校とイジメにあい不登校にもなったが、なんとか専門学校卒の学歴は獲得した。新卒者としてダンボールメーカーに就職したが、10カ月で退職。その後も短期アルバイトを繰り返していたが、23才からひきこもり気味となり、27才の時に鬱病と診断された。症状は軽いので、薬で抑えてアルバイトに行くが続かず、引きこもりを繰り返す。「長く働くことができない」と自嘲する。(文責・編集部)

正社員への 厳しい叱責

23才の時にひきこもりが始まり、27才からは3年間引きこもりが続きました。

原因はわかりませんが、引きこもりが始まる直前まで、食品メーカーで、週5日フルタイムで3年ほど働いていたので、疲れてしまったのかもしれません。仕事は、ウィンナー製造ラインで、ミンチ肉の配合・運搬のほか、パート職員の交代要員などです。

正社員の作業補助なので気は楽でしたが、人間関係が苦手で、職場の同僚との会話はほとんどありませんでした。ラインで働くおばちゃんや社員に飲み会やカラオケに誘われたことはあるのですが、断っていました。会話が止まって場を白けさせて気まずい思いをするんじゃないかとか、説教されるんじゃないかと、考えてしまうのです。職場でのコミュニケーションがとれず、社外で発散できる場所もなかったので、ストレスが溜まっていったようです。

アルバイト雇用が3年目に近づいた時に、正社員になるためのテストを受けないかという話がありましたが、これも断りました。アルバイトとしての仕事も結構きつく、正社員としての責任をとても果たせないと思いました。これまで係長が社員を激しく叱責する場面を何度も見ていたので、自分が怒られたら、すぐに辞めてしまうだろうなと思い、「アルバイトの方がいいんです」と断りました。

 イジメで対人関係が困難に

対人関係のしんどさは、学生の時からです。小学校時代には、イジメられて不登校になりました。友人もいないので、授業が終わったらすぐに家に帰って自室に閉じこもる生活でした。

高校の時にもパシリをやらされ、登校できなくなりました。この時は教師の支援もあって復帰できましたが、社会に出てからも、仕事が終われば真っ直ぐ家に帰るという生活が続き、楽しみや目標をもてませんでした。

専門学校卒業後、ダンボール製造会社に正社員として就職しましたが、10カ月で辞めました。対人関係の問題もありましたが、仕事がキツく、夜中の12時まで残業が続く時もありましたので、これは続かないと思いました。

2カ月ほどブランクがありましたが、前述の食品会社がアルバイトを募集していたので、応募して採用されました。

食品会社で3年ほど働きましたが、辞めた後からひきこもりが始まりました。といっても、全く外に出られないというわけではないので、求人誌を見ては、電機メーカーの製造ラインや倉庫管理の補助、警備の仕事などのアルバイトには行っていました。

 (以下一部全文は1436号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

貯金ができたらひきこもる

アルバイトで金が貯まると辞めてしまうという、パターンを繰り返しています。両親の家に住み、遊びにも行かないので、残業が多い月だと20万円近くの給料がほとんど貯金になります。

自室で好きな音楽を聞き、コンビニで買ってきたビールを数本飲む。これが一番心が安らぐ時間でした。

親から「稼ぎがないのに食べられているのは、親に甘えているだけだ」と言われれば、「そのとおりだ」と思います。家を出るようにも言われていますが、「こうしかできないのだから、しょうがない」と思いながらも、抗弁もできないのです。「もう、放っておいてくれ」という気分です。

 鬱と自立への不安

27才の時、警備会社を退職したのをきっかけに、3年にわたる長期引きこもりになりました。引きこもっていると、「いい年をした男がいつまでも親に頼って…」という近所の目が気になります。自殺願望がひどくなったので、親も心配して精神科を受診すると、鬱の診断でした。

いったん家を出てしまうと、仕事を辞めればホームレスになる可能性もあります。自立生活を送っていた精神障がい者の知人が、首つり自殺をしました。自分もそうなってしまう不安があります。


居場所のない 辛さ

「甘えているだけだと言われることについて、どう思うか?」と聞くと、「そう思う」と答える河田さんは、父親から叱責されると、自室に帰って壁を蹴り、障子を破っていたという。苦しい胸の内が垣間見える。筆者自身も30才半ばまで短期のアルバイトをくり返してきたが、河田さんほど絶望的な気分になったことはない。求めれば仕事はあったし、「社会運動」という居場所があったからだろう。

人を「労働力」としか見ない職場が増えてきたことで、「必要とされている」と思えるような居場所としての職場は、ほとんど存在しなくなった。職場外でも居場所がなければ、引きこもるほかない。居場所を失った人が引きこもり始めた。

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