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2012/1/30(月)更新

【往復書簡@】津田頼子さん×遙矢当さん

2012年 介護保険法 改正         介護職に解禁される医療行為について

 介護保険制度は、制度施行後10年が経過。サービス利用者数が施行当初の約3倍となって400万人を超えるなど、高齢者の暮らしを支える制度として定着している。しかし、急速な高齢化の進行に伴い、医療ニーズの高い高齢者や重度の要介護者の増加、単身・高齢者のみ世帯の増加への対応、介護人材の確保などが、喫緊の課題となっている。

こうした背景のなか、2012年4月から新しい介護保険制度がスタートする。利用者、介護職にとって何が、どう変わるのか?遥矢当(はやと)さんと津田頼子さんに、往復書簡という形で議論してもらった。テーマは、@介護職に解禁される医療行為、A認知症ケア、B新設される24時間定期巡回サービス、に絞ってもらった。遥矢当さんは、定期執筆者。津田頼子さんは、在宅のケアマネージャー。(編集部)

遙矢当から津田頼子さんへ

拙速な解禁で現場の混乱必至 まず、教育体制の充実を図れ

2012年の介護保険法改正では、介護職による医療行為が一部解禁される予定です。まず、介護職が取り組みうる医療行為について振り返ります。これまで介護現場では、厚生労働省通達として医師法17条(2005年通達)の規定によっていました。要するに、バイタルチェックと、軽度な外傷の処置(カットバンを張る程度のもの)に限られていたわけです。

しかし、@医療機関の収容人数が限界に来ていること、A医療職、特に看護師の絶対的な数の不足、B介護側から「予防」の概念の提起があったことなどから、在宅医療と訪問看護に関する議論が、前々回の改正(2006年)以降、クローズアップされるようになりました。特に自治体内の地域支援事業で医療的アプローチが多く実施されるようになったことなども、背景にあります。つまり、不足する看護師の補完的存在として介護職が位置づけられた、というのが現実かもしれません。

したがってこれは、「介護職の専門性」形成がまた遠のいたことになります。医療のパターナリズム(医師を頂点とする家父長主義)から、介護職が抜け出せなくなり、「チームケア」がますます形骸化していくように思えます。

それにしても、介護職に解禁される医療行為として、「たんの吸引」ばかり注目され、400ページに迫るテキストを使用し、研修させようとする厚生労働省を、僕は奇異な目で見ています。

津田さん、どうでしょう。今、どれだけ事業所内で吸引が必要な方のケアに従事していらっしゃいますか。活用の機会が少ない医療行為のための研修じゃないか?と思い始めています。

 不十分な介護職への教育体制

介護現場で介護スタッフ/ヘルパーが取り組める必要性の高い医療行為は、「たんの吸引」のほか、「胃ろう(PEG)」「服薬管理」「インシュリン接種(B/S)」「褥瘡処置」「手技によるリハビリ」などがあります。これらは、やむを得ず介護職が実践してしまっている介護現場が実在していながら、 黙過されています。さらに、胃ろうは、今回の改正議論からは遠のいてしまっています。

運営的な問題を考えると、将来的にはたんの吸引に限らず、すべての介護職に医療行為の取得を目指してもらうという方向になると思います。高齢者のニーズに応えるためには、事業所も備えておく必要があります。

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現在、急ピッチで講師研修が行われているのも奇異です。外部講師による外部研修が実施されているため、介護スタッフは、事業所の運営実情を度外視した、場当たり的な研修を受講することになりそうです。 医療行為研修を受講するのがベテランの介護スタッフであったとしても、とまどいや不安が隠せないはずですし、これまでの自信を失いかねません。

こうしたことから私は、現段階では、医療行為が必要な利用者の受け入れは、事業所内の体制と教育の問題を踏まえて、しばらくは見合わせるべきだと考えています。教育の整備を早急に進めたいのと、スタッフの勤務条件やプライドを守る必要もある、という思いです。

津田頼子から遙矢当さんへ

医療行為は、介護保険ではなく医療保険で負担すべき

在宅でのケアマネージャーをしていますので、介護サービスの利用者が、介護度に応じた利用限度額範囲でのサービスを受けられるかどうかを、いつも念頭においています。限度内だと1割負担で利用できるからです。

そのなかで思うのが、訪問看護サービスが1回(30分以上60分以内)で、550〜830点であることです。確かに、ご本人が病院へ行かなくても、自宅へ来てくれる看護師さんに注射や傷の手当をしてもらえるのですから、1回が550円〜830円というのは安いと感じられるかもしれません。

しかし、2時間ごとの吸引といわなくても、1日数回の吸引が医療行為であるなら、月単位の費用はかなり高額になり、限度枠を超える要素はいっぱいです。現実には、家族が日常の吸引をし、週に数回、訪問看護師により、利用者の体調管理、家族への指導助言をしてもらっています。

そもそも、介護保険サービスの中に医療サービスを入れるのが間違っている、と思います。訪問看護は、医療保険の1割負担か定額負担の中に入れるべきでしょう。

二つめは、医療病床の絶対的不足です。私のような団塊世代がシルバー世代に突入しますから、病院で高度医療が受けられる人と、在宅で亡くなる人とに分かれていくでしょう。お金がある人とない人の違いになるのでしょうか?自宅で身近な人に見守られながらの死を選択する人も、増えてくるかもしれません。

そんな時に、在宅医療と介護サービスとの連携は必至です。また、家族や介護職に「看取り」の医療知識が必要です。在宅医療の医師にもがんばってほしいと思います。

三つめは、医療行為に対する労働対価が正当に評価されるかどうかです。看護師さんでも、上手な人とヘタな人がいます。介護職が研修を受けたあと、医療の一部であると 自覚して、たんの吸引等の処置を注意を払って行うには、それなりの評価が必要だと思います。

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