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2012/1/23(月)更新

OccupyWallStreet

ウォール・ストリートから「自宅を占拠する」運動へ

グローバルフォーラム「議論百出」('11年12月12日)
島・M・ゆうこ

グローバル・フォーラム・政策掲示板=「議論百出」(2011年12月12日号)に投稿された島 M. ゆうこさんの報告より

排除されても拡がる「占拠」運動

「ウォール・ストリートを占拠する」運動は、昨年12月中旬には、全国各地で相次ぐ警察の弾圧に遭遇し、この運動の発祥の地となったマンハッタンのズコッティ公園をはじめ、米国各地でテントや野宿用設備が暴力的に撤去されたため、かなり簡素化され、表面上弱体化したような印象もある。

しかし、野宿は禁止されたものの、デモ参加そのものは許可されているため、自然消滅するような気配は、ほとんど感じられない。米国各地で、冷え込んできた現在、陣地を奪われた抗議者・活動家らは、その視点と戦略を変えたようだ。

12月6日には、面談を避けている議員らに直接面談を求めるため、多くの活動家がワシントンDCの国会議事堂付近に移動して、座り込みを開始した。

さらに、「自宅を占拠する」と称し、特にサブプライムローンの破綻で銀行または金融会社に家を差し押さえられ、空き家になった住宅の多い区域で、自宅を失った人たちを再入居させる運動が起きている。

失った家の所有権の回復を求め、ローンの修正や変更に関して銀行と交渉を試みる人たちも多く存在する。しかし、銀行がこれに応じないため、家を失った人たちは、貸し手である銀行および金融機関の非合法な住宅売買契約の無効を訴えて、自宅を取り戻す戦略を開始した。

抵当倒れで空き家になっている住宅には立入禁止の板が張られているが、「ウォール・ストリートを占拠する」活動家らは、近年相次ぐ抵当倒れに対抗するため、また放置された空き家の廃墟化を防ぐとして、売買オークションを中止させて、不条理な住宅売買契約の犠牲となった人たちを援助している。

昨年12月9日の「CNN」によると、東ニューヨークにあるブルックリンのバーモント通りは、全米で最も抵当倒れの率が高く、空き家が多いという。

タシャ・グラスゴウさんは、長年ひどい自閉症を患っている8歳の女児と5歳の男児を抱え、仕事探しに走り回りながら、ニューヨーク市のホームレス収容所を出たり入ったりの生活を長年続けている。彼女は、2人の子どもを育てるための安定した収入も、家もなく、最近、ニューヨーク市から収容施設への入居を許可されたが、後日、マイケル・ブルームバーグNY市長の「厳格な政策」によって、入居が取り消しになった。

このため、「ウォール・ストリートを占拠する」活動家らは、バンク・オブ・アメリカ銀行が所有しているバーモント通の空家に、グラスゴウ一家を入居させることに成功した。

「略奪的ローン」は非合法

活動家らに支援されて再入居に成功した人たちの正確な数は明らかにされていない。しかし、彼(女)らは「ここが自分たちの家であり、生涯立ち退くことはしない」と、強い決意を語っている。

その理由は、当初ローンを組んだ際、貸し手の銀行や金融機関が、高金利の「リスク・ベース価格」などを含めた、不公平なローンの条件を課す「略奪的ローン」を意図的に設定したからだ。

こうした「略奪的ローン」は非合法である、との論争が起きている。ローンの債務率が所得の50%を超過した場合、そのローンは、かなりのリスクを伴う。ところが、楽観的な住宅価格上昇の予想、小額の頭金、当初の低利息などの魅力とは裏腹に、さまざまな角度からの調査と法的研究が欠如していた。このため、数年後には、法外な高金利を設定した金利変動相場制に追い込まれ、「余裕のない抵当権設定の住宅ローン・プログラム」に契約した人たちは、抵当物件差し押さえに至ったのである。借り手は、こうしたリスクを予測することができず、一方、貸す側は予期していたと言われている。

サブプライムローン危機は2007年以降、抵当倒れが相次ぎ、現在でも家を手放す人が後をたたない。12月7日の「ザ・ネーション」誌によると、2007年以降、全米で約600万戸の家が差し押さえられており、今後4年間でさらに800万戸が抵当倒れになると推定され

ている。また、「CNN」の報告では、銀行の集計によると、昨年だけでも380万戸が抵当倒れになり、今年度の数値はさらに上昇すると予想されている。

オキュパイ(占拠)から進化する運動

このような予測に反して、「自宅を占拠する」運動が発展し長期化すれば、抵当倒れによる自宅差し押さえを、かなり食い止めることができる。なぜなら、抗議デモの活動家らはIT技術に長けているため、メディアもかなり注目するようになってきた。

これに伴い、弁護士への協力要請も拡大してきており、現在では、住宅ローンの不正に関する専門家の教育および支持が目立つようになり、訴訟を闘い易い環境も整ってきている。

自宅を差し押さえられる前に訴訟に勝利するケースが増えれば、抵当倒れによる差し押さえは、減少するはずである。また小規模ながら、活動家に基金や活動の拠点を提供する人たちも存在する。

オキュパイ運動は、激しい警察の弾圧が続き、野営地を奪われてしまったが、マンハッタンのオフィス街の事務所を提供する個人も存在し、物資的協力をする組織・団体も増え始めている。こうして、崩壊した経済システムの変革を求める活動家が生き残る土壌が、水面下で構築されつつある。

米政府は、1960年代から連邦準備制度のもとに多数の金融規制法案を提案し、通過させてきた。ところが、こと投機的金融に関しては、未だにグレー部分が多く、これが原因で、金融システムは崩壊の危機に瀕している、と言える。

2008年、ブッシュ前政権は、緊急経済安定化法を通過させた。同法は、サブプライムローンでかなりの損失を出し、世界経済崩壊の原因を作った銀行や金融機関の救済を優先させた。しかし米政府は、家を失った庶民には、何らの救済措置も講じなかった。

このような被害者を救うため、「自宅を占拠する」運動を展開している活動家らは、オバマ政権に対し明白なメッセージを伝えようとしている。

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