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2012/1/23(月)更新

ゴルフ場除染を求める仮処分却下の屁理屈

汚染の責任回避にひた走る東電

行政・司法も東電を免責

  事故原発から約45`離れた二本松市にある「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」など2社は、放射性物質の拡散で休業を余儀なくされたとして、東電に、@汚染の除去、Aゴルフ場の維持に必要な経費など約8700万円の支払い、を求める仮処分を東京地裁に申し立てた(昨年8月)。この裁判での答弁によって、東電側の汚染についての認識と賠償への姿勢が、明らかになった。同裁判での東電の主張と、東京地裁の判断を検証する。(編集部・山田)

「無主物」という暴論

放射能汚染について東電弁護団は、「放射線は原発から離れた無主物ともいうべき存在であり、もはや東電のものではない。仮に所有権をいうのであれば、現地の土に付合している以上ゴルフ場のものと言うべきである」と主張した。「無主物」とは、漂う霧のように、誰のものでもないという意味である。これを聞いたゴルフ場側は、「耳を疑いました。日本有数と言われる有名弁護士事務所なのに…」と呆れている。

京大原子炉実験所の小出裕章助教は、「東電は、実に恥ずかしい会社だ。もともと東電がウランを買ってきて所有し、それを核分裂させて生成されたのが、セシウムなどの放射性物質。れっきとした東電の所有物とみなすべきだ」。

これまで東電は、「原発は安全で、放射性物質をバラ撒いたりしない」と言い続けてきた。つまり、東電には原子炉内に放射性物質を閉じ込めておく責任と義務があることを認識していた。ところが、事故を起こして強烈な毒物をバラ撒いた途端に、「無主物」を主張するばかりか、「被害者の所有物」とまで言い始めた。

訴えを起こしたゴルフ場の支配人は、「東電の社員には、賞与が出ていると聞く。一方我々は、断腸の思いで従業員を解雇しなければならなかった。あまりに不公平で、バランスが悪すぎる」と怒る。

(以下一部全文は1435号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

 行政へ責任転嫁する東電

昨年10月31日、東京地裁は、ゴルフ場の訴えを退けた。福島政幸裁判長は、ゴルフ場の土壌や芝が原発事故で汚染された事実は認めたが、「除染の手段や時期は、国などの調整のもとで慎重に検討されるべき」「現状で除去を命じた場合、国の施策に抵触する恐れがある」と退けた。「除染は責任を持って行なう」という国の方針を盾に、東電は自らの除染責任を逃れようとしている。

「東電や裁判所が原発の賠償問題と向き合おうとしない背景には、『国』の存在がある」と、小出氏は指摘する。「原子力関係の裁判で、国が敗訴したことはない。裁判官の世界も、国を困らせないような判決を出すことで出世していくシステムができている。原子力の問題に関しては、三権分立など存在しない」。

東京地裁「営業可能だったはず」

「セシウムを恐れて逃げる必要などなかった」

東京地裁は、休業中の人件費などの仮払い請求についても却下した。福島裁判長は、ゴルフ場で検出された空間放射線量は「学校の校庭での活動を控える基準(3.8μSV/h)を下回っている」として、「ゴルフ場の営業に支障はない」と判断した。

6月に二本松市役所が、訴えを起こしたゴルフ場内の放射線濃度を測定したところ、2・2〜3・2μSV/hだったため、予定されていた公式戦が中止となり、「一般のお客さんも入れるわけにはいかないと、休業を決めた」。コース内のカート置き場の雨樋付近では、51μSV/hという高い放射線量を記録しており、芝生や草も、1sあたり20万bqという汚染箇所も見つかったという。それでも東電側は、「セシウムを怖がって休業する必要はなかった」と主張した。

地裁判決は、東電側の「無主物」の主張は退けたが、「ゴルフ場の運営が不可能とは認められない」と、東電の主張に沿った判決となった。しかし、現実には、そんなゴルフ場でプレーする客はいない。

東電は、両ゴルフ場に対し、屋内退避命令が出されていた4月22日以前の損害については賠償するが、4月23日以降については「営業は可能だったはず」の一点張りで、補償に応じる気配はない。原発事故で休業に追い込まれたゴルフ場は、12カ所ある。不動産価格の下落分も含めた賠償額は、1ゴルフ場当たり200億円近くになるとの試算もある。賠償額をできるだけ切り詰めたい東電は、加害責任を回避するために、今後も暴論を駆使することだろう。

 ※東電の加害責任回避を助ける弁護士事務所は、「長島・大野・常松法律事務所」。約340人の弁護士を抱える日本最大級の巨大弁護士事務所。

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